ニュース

2014 SUPER GT 第4戦「SUGO GT 300km RACE」GT500クラス決勝リポート

霧雨をスリックタイヤで走りきった1号車 ZENT CERUMO RC Fが今季初優勝

2014年7月20日決勝開催

 7月20日、スポーツランドSUGO(宮城県柴田郡村田町)で2014 AUTOBACS SUPER GT 第4戦「SUGO GT 300km RACE」の決勝レースが開催された。GT500クラスは昨年のシリーズチャンピオンである1号車 ZENT CERUMO RC F(立川祐路/平手晃平)が不安定な天候に惑わされることなく、終始安定した走りで独走して今期初優勝を飾った。

優勝した1号車 ZENT CERUMO RC F

 土曜日のフリー走行は雨。予選は霧で中止となり、日曜日の朝に予選が行われた。ウェット路面で行われた予選でポールポジションを獲得したのは、36号車 PETRONAS TOM'S RC F(中嶋一貴)、2位は100号車 RAYBRIG NSX CONCEPT-GT(小暮卓史)、3位は23号車 MOTUL AUTECH GT-R(ロニー・クインタレッリ)となった。第3戦まで不調だったホンダ勢が予選で2位、4位、6位、7位、10位と躍進し、復活の兆しを見せた。

降りだした霧雨にスリックタイヤで我慢したチームが上位を独占

 決勝が始まる直前には晴れ間も見え、コースコンディションはほぼドライ。各車スリックタイヤでフォーメーションラップに入った。ところがフォーメーションラップが始まると霧雨が降り出し、路面も徐々に濡れ始めた。3周のフォーメーションラップ終了と同時にピットインしてウェットタイヤに交換したのは、ポールスタートの36号車 PETRONAS TOM'S RC F(ジェームス・ロシター)や17号車 KEIHIN NSX CONCEPT-GT(金石年弘)、8号車 ARTA NSX CONCEPT-GT(松浦孝亮)、2号車 Epson NSX CONCEPT-GT(ベルトラン・バゲット)など7台。スリックタイヤのままステイした8台が1コーナーに向けて加速し、レースは始まった。

 予選2位の100号車 RAYBRIG NSX CONCEPT-GT(武藤英紀)を先頭に、各車濡れた路面に苦戦しつつ1コーナーを抜けるが、予選3位の23号車 MOTUL AUTECH GT-R(ロニー・クインタレッリ)は2コーナーで37号車 KeePer TOM'S RC F(アンドレア・カルダレッリ)に抜かれると、後続にも次々にパスされて順位を落とした。

スタート1周目は予選2位の100号車に23号車、37号車が続く
2コーナーで37号車が23号車をパス。23号車はズルズルと後退した
ピットイン勢は17号車が先頭でコースイン。8号車、36号車、39号車、32号車、18号車が続く

 100号車 RAYBRIG NSX CONCEPT-GTもペースを上げることができず、順位を落として1周目を終えてピットイン。これでホンダ勢は全車タイヤ交換を行った。代わってトップに立った37号車 KeePer TOM'S RC Fに、6号車 ENEOS SUSTINA RC F(大嶋和也)、1号車 ZENT CERUMO RC F(平手晃平)が続く展開でレクサス勢がトップ3。少し離れて日産勢が追う展開となった。

100号車がピットインして37号車、6号車、1号車のレクサス勢がトップ3

 タイヤ交換をしたチームの先頭は17号車 KEIHIN NSX CONCEPT-GT。17号車 KEIHIN NSX CONCEPT-GTは2周目に8位、3周目に7位、4周目に6位、6周目に5位までポジションを戻した。しかし、雨は徐々に弱まり、スタート直後に1分30秒代だったスリックタイヤ勢のラップタイムは9周目には1分20秒を切り、ウェットタイヤ勢の1分20秒代を上まわった。結局、10周前後でウェットタイヤに交換したチームは再びピットインを行い、スリックタイヤに交換することとなった。

ウェットタイヤに交換した17号車は、6周目にスリックタイヤを履く46号車を抜いて5位まで浮上した

レクサス勢が1-2-3体制

 1-2-3体制を築いたレクサス勢は、2周目に6号車 ENEOS SUSTINA RC Fを抜き2位に浮上した1号車 ZENT CERUMO RC Fが12周目に37号車 KeePer TOM'S RC Fも抜きトップに立った。1号車 ZENT CERUMO RC Fは後続との差を徐々に広げ、20周目には6秒、37号車 KeePer TOM'S RC Fがルーティーンのピットインを行った37周目には20秒もの差を付け独走態勢を築いた。

1号車が2位に浮上
1号車がトップに立ち、2位の37号車を引き離した

 トップ3のレクサス勢の後方は、4位から7位まで日産勢が占めることとなった。全車がスリックタイヤでステイを選択した日産勢だったがタイムは伸びず、3位の6号車 ENEOS SUSTINA RC Fと日産勢のトップを走る4位 12号車 カルソニックIMPUL GT-R(ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ)のタイム差は、10周目に6秒、20周目に18秒、30周目に24秒と大きく水を空けられる展開となった。

 79周の決勝レース。折り返しが近づく40周前後からルーティーンのピットインとなり、ドライバー交代が始まった。チョイ濡れ路面にスリックという組み合せでタイヤ摩耗が少なく、天候が急変する可能性もあるため50周過ぎまで引っ張るチームもあり、全車ドライバー交代が済んだのは53周目だった。

 55周目の順位はトップが1号車 ZENT CERUMO RC F(立川祐路)。24秒差の2位に37号車 KeePer TOM'S RC F(伊藤大輔)。トップから41秒差の3位に6号車 ENEOS SUSTINA RC F(国本雄資)。1分16秒差の4位に23号車 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生)。5位以下はすべてラップダウン(周回遅れ)となった。上位6台がスリックタイヤでステイしたチームだ。

 コースコンディションはときおり降る霧雨でチョイ濡れ状態が続いていた。レース終盤の60周を過ぎたころからスタート時と同様のやや強めの霧雨が降り、ラップタイムが20秒ほど遅くなった。一発逆転を狙ってウェットタイヤに交換したチームもあったが、すぐに雨足は弱まりギャンブルは不発に終わった。

17号車 KEIHIN NSX CONCEPT-GTが終盤に猛進

 この雨で、トップの1号車 ZENT CERUMO RC Fと2位の37号車 KeePer TOM'S RC Fのタイム差は数周で24秒から50秒に広がり、完全な1人旅。この雨で躍進したもう1台が17号車 KEIHIN NSX CONCEPT-GT(塚越広大)だった。53周目から62周目まで10位だった17号車 KEIHIN NSX CONCEPT-GTは、63周目に8位、65周目に5位、72周目に4位、74周目に3位まで浮上した。

7位の12号車に迫る17号車。終盤の猛進で結果的に17号車は3位となる

 この時点で17号車と2位の37号車 KeePer TOM'S RC Fとの差は37秒。75周目には27秒、76周目には19秒、77周目には15秒と詰め、残り2周で逆転の可能性が見えてきたが、17号車 KEIHIN NSX CONCEPT-GTはトップの1号車 ZENT CERUMO RC Fからラップダウン。1号車 ZENT CERUMO RC Fを抜かないと最終ラップに入れない。

 37号車 KeePer TOM'S RC Fがトップの1号車 ZENT CERUMO RC Fからほぼ1周遅れで最終ラップに突入。9秒後に1号車 ZENT CERUMO RC Fがトップでチェッカーを受け、17号車 KEIHIN NSX CONCEPT-GTはその0.3秒後にコントロールラインを通過。2位に9秒差まで迫っていたが、最終ラップに入る前に3位でチェッカーとなった。

1号車がぶっちぎりでチェッカー。17号車は0.3秒差でラップダウンのままチェッカーとなった

 1号車 ZENT CERUMO RC Fは3位以下を周回遅れにするぶっちぎり状態で今季初優勝。2位は37号車 KeePer TOM'S RC F。結局、レース序盤と終盤の雨に対してスリックタイヤでステイし、通常の1ピット作戦で走りきったのはこの2台だけ。序盤にタイヤ交換をして遅れた17号車 KEIHIN NSX CONCEPT-GTが終盤の猛進で3位に滑り込み、ホンダ勢として今期初表彰台を獲得。優勝した立川祐路選手はGT500通算16勝となり、単独で最多勝となった。

GT500クラスの結果
1位 1号車 ZENT CERUMO RC F(立川祐路/平手晃平)
2位 37号車 KeePer TOM'S RC F(伊藤大輔/アンドレア・カルダレッリ)
3位 17号車 KEIHIN NSX CONCEPT-GT(塚越広大/金石年弘)
4位 36号車 PETRONAS TOM'S RC F(中嶋一貴/ジェームス・ロシター)
5位 6号車 ENEOS SUSTINA RC F(大嶋和也/国本雄資)
6位 39号車 DENSO KOBELCO SARD RC F(石浦宏明/オリバー・ジャービス)
7位 46号車 S Road MOLA GT-R(本山哲/柳田真孝)
8位 18号車 ウイダー モデューロ NSX CONCEPT-GT(山本尚貴/フレデリック・マコヴィッキィ)
9位 12号車 カルソニックIMPUL GT-R(安田裕信/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ)
10位 24号車 D'station ADVAN GT-R(ミハエル・クルム/佐々木大樹)

優勝した1号車 ZENT CERUMO RC F(立川祐路/平手晃平)。今回はブリヂストンのスリックタイヤがチョイ濡れ路面で性能を発揮し、表彰台を独占した
2位の37号車 KeePer TOM'S RC F(伊藤大輔/アンドレア・カルダレッリ)
3位は17号車 KEIHIN NSX CONCEPT-GT(塚越広大/金石年弘)

 全8戦で行われるSUPER GTシリーズも4戦が終了して折り返しとなった。ドライバーズラインキングはこのレースで2位となった37号車 KeePer TOM'S RC F(伊藤大輔/アンドレア・カルダレッリ)がトップに立っている。

GT500クラス 年間ランキング
1位 37号車 KeePer TOM'S RC F(伊藤大輔/アンドレア・カルダレッリ) 49
2位 12号車 カルソニックIMPUL GT-R(安田裕信/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ) 44
3位 1号車 ZENT CERUMO RC F(立川祐路/平手晃平) 35
4位 6号車 ENEOS SUSTINA RC F(大嶋和也/国本雄資) 34
5位 23号車 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ) 27
6位 46号車 S Road MOLA GT-R(本山哲/柳田真孝) 20
7位 39号車 DENSO KOBELCO SARD RC F(石浦宏明/オリバー・ジャービス) 18
8位 17号車 KEIHIN NSX CONCEPT-GT(塚越広大/金石年弘) 16
9位 36号車 PETRONAS TOM'S RC F(ジェームス・ロシター)
10位 18号車 ウイダー モデューロ NSX CONCEPT-GT(山本尚貴)

 SUPER GT 第5戦は8月9日~10日に富士スピードウェイ、第6戦は8月30日~31日に鈴鹿サーキットで開催される。

(奥川浩彦)