試乗レポート

GT-Rの頂点に君臨する「GT-R NISMO」(2022モデル)、デビューから14年経っても色あせない性能に触れた

インパクト満点の見た目

 少し前に記事が掲載された「GT-R Premium Edition T-spec」(以下、T-spec)の取材の際に、実は「GT-R NISMO Special Edition」(以下、NISMO)も借りて乗り比べることができた。

 2022年モデルのNISMOは2021年4月に先行公開され、6月にオーダーの受け付けが始まり、なんと正式に価格が発表される8月を迎える前の7月末時点で、予定販売台数の300台を超えるオーダーがあった。そのうちの大半の人が、NACAダクトが付きクリア塗装を施した専用カーボン製エンジンフードとレッドリム加飾を施した専用の20インチのレイズ製アルミ鍛造ホイールが付く特別仕様車「Special edition」を選んだというのは、わずか44万円高なら当然だろう。

 受注の半分に達したという今回の新しい専用色「NISMOステルスグレー」(撮影車)は、最近こうしたグレー系が多く見受けられるようになった中でも、とりわけ凄みを感じさせる。ただでさえド迫力のデザインをより引き立てていて、赤のアクセントとの相性もバツグン。ビジュアルのインパクトは満点だ。

 T-specと見比べると細かいところがいろいろ差別化されていて、その1つひとつに“理由”がある。デザイン性も考えているのは言うまでもないだろうが、NISMOはより機能や性能を優先している感じがする。また、ボンネット、ルーフ、ウイング、ボトムのエアロパーツなど見るからにカーボン地の見える箇所だけではなく、一見そう見えないフェンダーなどもカーボンを採用している。

今回試乗したのは2021年4月に先行公開した「GT-R NISMO」2022年モデルのうち、特別仕様車の「GT-R NISMO Special edition」(2464万円)。2021年8月に価格のアナウンスが行なわれたが、先行公開から約3か月間で予約注文台数が予定の販売数を超えたため価格発表の段階ですでにオーダー受付を終了していたという異例のモデル。ボディカラーはNISMO専用新色の「NISMOステルスグレー」で、ボディサイズは4690×1895×1370mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2780mm。車両重量は1720kg
Special editionの外観では、クリア塗装を施したNISMO専用カーボン製エンジンフード(NACAダクト付)を採用するとともに、20インチの専用レイズ製アルミ鍛造ホイール(フロント20×10J、リア20×10.5J)にはレッドリム加飾が施された。タイヤはダンロップのランフラット「SP SPORT MAXX GT 600 DSST」で、サイズはフロントが255/40ZRF20、リアが285/35ZRF20。そのほかフロントバンパー、フロントフェンダー、トランクリッド、リアバンパー、リアスポイラーなどもNISMO専用カーボン製となる

 赤のアクセントが目を引くのはコクピットも同じ。電動でリクライニング調整できるレカロシートは身体全体を面で包み込んでくれるかのようなホールド感がありながらも、見た目から想像するよりも乗り降りもしやすいことにもあらためて感心する。

GT-R NISMOに与えられる専用のレカロ製カーボンバックバケットシートは、2019年モデル以前の肩をサポートする構造から上半身全体を安定して支持する構造に変更し、ホールド性を向上。そのほかにもNISMO専用カーボン調コンビメーターやアルカンターラ巻ステアリング、ディンプル付本革巻シフトノブ(ブラック/レッド)なども装備される

この上なくエキサイティング

 ドライブフィールはエキサンティングであることこの上ない。とてつもなく速く、安定していながらも刺激的でスリリングな雰囲気もある。もちろんT-specだって相当なものだが、NISMOはより軽くてソリッドで、走りに特化した感じがする。それなりに重量のあるクルマには違いないが、慣性の影響をあまり意識させられることもない。

 ステアリングを切ったときの応答遅れも小さく、ダイレクト感もある。車検証によると、車両重量は1720kg。前軸重が940kg、後軸重が780kgで、T-specが同1760kg、970kg、790kgと大差はないわけだが、感覚としてはずっと違う。NISMOはピュアスポーツの超発展形のような雰囲気を持っている。

 エンジンも、さすがは高い精度でバランス取りしたパーツを使うなどして標準モデルから30PS増の600PSを引き出したというだけのことはある。より回転感が緻密で、大容量のターボながら過給の立ち上がりが比較的素早く、ブーストされたときの伸びやかな吹け上がりは標準系とは一線を画する。それもまたNISMOに乗る醍醐味に違いない。エンジンサウンドもより派手な印象で、より走りの高揚感を高めるための“聴かせる”演出を感じる。

GT-R NISMOが搭載するV型6気筒DOHC 3.8リッターツインターボ「VR38DETT」型エンジンは最高出力441kW(600PS)/6800rpm、最大トルク652Nm(66.5kgfm)/3600-5600rpmを発生。エンジンの最高出力は2020年モデルから変わらないものの、ピストンリング、コンロッド、クランクシャフト、フライホイール、クランクプーリー、バルブスプリング(吸気)、バルブスプリング(排気)に高精度重量バランスエンジン部品を採用。さらに手組みの証として完成したエンジンに貼り付けられる「匠」のネームプレートも専用カラーが与えられる

 ダンパーをRモードにすると足まわりの硬さが分かりやすく変わって、路面のきれいなところであれば超フラットライドとなる。世に出た当初のGT-Rが、それほど荒れていなくても路面からタイヤが離れることが多く、強めの入力では地響きのような衝撃を感じたのに比べると、GT-Rはそのあたりも本当に進化したのだなとつくづく思う。かなり引き締まっていながらも、段差を通過してもかつてのような跳ねが抑えられていて、いわばタイヤを押し当てながらいなすような路面の捉え方をする。

 4WDのRモードを選択するとアクセルワークに対してよりタイムラグがなく駆動力が伝達されるようになり、発進加速やコーナリングで右足の動きと走りの一体感が高まる。加えて、次の加速に備えてシフトダウンも積極的にやってくれる。そしてNISMOにはRモードの走り味がよく似合う。

 ブレーキもカーボンセラミックが付いているのだから、もの足りなさなど感じるわけがない。サーキットでポテンシャルをフルに引き出して走っても、しっかり止めてくれそうな懐の深さを感じる。

NISMOこそGT-R!?

左がNISMO、右がT-spec

 GT-Rが世に出てこれまで何度も改良を実施し、そのたびにベストパフォーマンスを追求してきたわけだが、とくに速さの象徴であるNISMOというのは、自動車の性能というものの1つの究極の姿を見せてくれてきたように思える。2022MYもまさにそれだ。

 そしてT-specとNISMOを乗り比べて、ふと思った。はたしてどちらが本来のGT-Rなんだろうと。もちろんどちらも主役であることには違いないが、もともとはニュルブルクリンクを驚くようなタイムで走れるクルマがそのまま手に入るのがGT-Rの醍醐味だったことを考えると、むしろ特殊な位置づけに思えるNISMOこそガチなGT-Rといえるのではないかという気がしてきた。この世界観に共感する人にとっては、やはりNISMOこそGT-Rであり、だからこそ簡単に手の届かない価格になっても販売比率が異様に高いのだろう。

 それにしてもGT-Rというのは、登場から約14年が経ってもその存在感はまったく色あせないところにも恐れ入る。その頂点にいるNISMOはなおのことだ。日本人として日産がGT-R NISMOのようなクルマを世に送り出してくれたことを誇りに思う。

岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者の方々にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:安田 剛