試乗記

スバル「クロストレック S:HEV」で大阪往復ドライブ ストロングハイブリッドの走りの真価を確かめた

スバル「クロストレック S:HEV」で大阪へGO!

大阪往復のドライブ旅。高速&一般道を何km走れるか?

 スバル「クロストレック S:HEV」で、一路大阪へ。スバルが往復約1000kmのロングドライブ試乗会を開催し、筆者と編集部北村氏、高橋学カメラマンの3人でこれに臨んだ。

 目的地は、「大阪スバル 城東店」。これは大阪スバルが関西地区の情報発信基地として2025年4月にオープンさせた大型店舗だ。東京・恵比寿の「SUBARU STAR SQUARE」を手本として、気軽にスバル車を見て、試乗できるショールームとなっている。

 そしてこの大阪スバル 城東店で、今回クロストレックとインプレッサの限定車がメディアに初披露された。

 ちなみにCar Watchは、クロストレック S:HEVが登場して早々に「1000kmチャレンジ」を敢行している。その理由は、スバル初となるストロングハイブリッドのカタログ燃費18.9km/L(WLTC値)と、63Lタンク容量を掛け合わせれば、理論上ワンタンクで1000kmの走行が可能だからだ。果たしてそのチャレンジは見事に九州の門司港まで、無給油でたどり着くことができたのだった。

 というわけで2度目の1000kmチャレンジは、燃費を強く意識しない走りをしてみた。必要以上に燃費を意識したアクセルワークはしない。高速道路ではアイサイトXも、もちろん遠慮なく使う。

 そしてせっかく大人が3人もいるのだから、交代しながら走らせる。運転の仕方がそれぞれ違うから、燃費も変わってくるはずである。高速道路だけじゃなく、大阪の街中もいろいろ探検してみよう。

ストロングハイブリッドモデルの「クロストレック Premium S:HEV EX」。今回の試乗車はメーカーオプションとしてアクセサリーコンセント(AC100V/1500W)を装着し、価格は409万7500円。ボディサイズは4480×1800×1575mm(全長×全幅×全高)で、ホイールベースは2670mm。車両重量は1660kg
最高出力88kW(119.6PS)、最大トルク270Nm(27.5kgfm)を発生する「MC2」モーターを搭載するストロングハイブリッドモデルは、専用チューニングが施された最高出力118kW(160PS)/5600rpm、最大トルク209Nm(21.3kgfm)/4000-4400rpmを発生する水平対向4気筒2.5リッター「FB25」エンジンとの組み合わせ。トランスミッションはリニアトロニック(CVT)。WLTCモード燃費は18.9km/L
今回は、3人で運転を交代しながら大阪を往復。アイサイトの運転支援機能もガンガン使っていく
シートは長時間のドライブでも疲れづらい。後席の足下スペースは大人でも十分な広さがあり、たっぷりとした厚みのあるクッションのおかげもあってか居心地はわるくない
ラゲッジには荷物がたっぷり積める
職業柄ラゲッジに荷物を積むことが多い高橋カメラマン。愛車はクロストレックよりひとまわり大きいレヴォーグだ。いわく、「われわれのお借りしたクルマにはディーラーオプションのロール式トノカバー(1万8700円)が付いていたので、多くのステーションワゴンと同じような使い勝手が得られたのはマル。開口部が大きな荷室にはバンパーに少しだけ段差がありますが、積み下ろしには大きな影響はないうえに、段差がどこまで荷物を積んでいいかの目安となるのでむしろ使い勝手はいいと思います」とのこと

大阪往復をして感じたクロストレック S:HEVのよさ

 東京・恵比寿のスバル本社を朝7時30分に出発して、目指せ大阪。Car Watchに用意されたのは北九州まで行ったときと同じ、マグネタイトグレーのクロストレック S:HEVだった。

 トリップメーターは、恐らくガソリンスタンドからの距離が加算されたのだろう、0.2kmを指していた。ほぼ満タンの状態で走行可能距離は800km台だったけど、それは織り込み済み。試乗車は都内のディーラー車だったので、恐らく街中主体の計算になっているのだろう。これがどこまで伸びるのかも、楽しみのひとつだ。

スバルの本社がある東京・恵比寿からスタート

 ところで筆者は現在Car Watchの長期レポート車両として、これまたマグネタイトグレー(!)のクロストレック S:HEVを常用し、連載に備えている。

 それだけに少しの差でもわかるほどのクロストレック・マニアになったわけだが、今回は走り出しからちょっとだけいつもと乗り味が違うことに気がついた。大人3人と荷物を満載された状態だと、はるかにその乗り味が、どっしり落ち着いているのだ。

 物理的にもそれは至極当たり前のことだけれど、クロストレック S:HEVのスイートスポットは、荷物をたくさん積み込んだときにあると感じた。逆を言えば普段1人で走らせているときは、コンパクトSUVの車高が重心を高め、しなやかな足まわりが若干曲がり始めでふらつきを誘発している。荷重がかかりきってしまえば、姿勢はビタッと落ち着く。しかしそこから再び折り返せば、またちょっとだけ“グラッ”と来る。首都高都心環状線のような曲がりくねった道だと、その違いがとてもわかりやすい。

 また高速巡航でも、今回は圧倒的に“スワリ”がいい。路面のうねりやジョイントを通り過ぎた際、“トトンッ!”と入力を減衰するダンパーの収まりは最高だ。かたや1人で走らせていると乗り心地はふんわり快適なのだが、そこからバウンスしてボディがあおられることもある。

1人で乗るときと、複数人+荷物満載で乗るときでは走りが違う

 このたっぷりとしたストロークがあるからこそ、クロストレックは4WD制御とともに荒れた雪道や悪路をものともせず走りきってくれるわけだが、オフローダーと呼ぶにはハンドリングが優れているから、気持ちよくカーブを走りたくなる。筆者のような非降雪地域ユーザーだと雪道やオフロードはあまり走らないから、もう少しだけダンパーで初期ロールを規制してほしいと感じるのだ。

 そういう意味ではより車高が低いインプレッサの方が、身のこなしはいい。しかし残念なことにスバルは、インプレッサにストロングハイブリッドをラインアップしていない。

 市場のニーズを考えても、同じ買うなら背の高いSUVの方がいいという気持ちはわかる。かといってドイツ系のように足まわりを固めれば、速度域が低い日本のユーザーには突き上げがキツく感じられるだろうし、ここはとても判断が難しいところだ。

車高が高くても優れたハンドリングで気持ちよく走りたくなる

 個人的にはレヴォーグやWRX S4に搭載される可変ダンパーを、クロストレック S:HEVにもラインアップしてほしい。オンロードとオフロード、低荷重と高荷重、状況に応じてダンパーが姿勢と乗り心地を制御できれば言うことはない。

「それだと価格が高くなる!」と言われそうだが、そもそもCセグメントのボディに2.5リッターストロングハイブリッドを搭載するクロストレック S:HEVは、小さな高級車だ。そしてオプション設定ならば、選ばなければいいのである。

 2.5リッターの排気量を持つ、自然吸気の水平対向4気筒エンジン(160PS/209Nm)と、走行用モーター(119.6PS/270Nm)が緻密に絡み合う、シリーズパラレルハイブリッドの協調性は本当に素晴らしい。街中はもちろん、100km/h近い高速巡航においても「EV」モードを使うし、たとえエンジンがかかっても、ボクサーエンジンのサウンドやバイブレーションは滑らかで静かだ。

 そしてアクセルを踏み込めば、とてもスムーズにスピードをのせていく。本音を言えばプロペラシャフトを介した後輪の蹴り出しには、もう少しメリハリ感があってもいい。Cセグならではのエモーショナルさも欲しいところだが、実によくまとまっている。

高速道路を走っているときにも、EVモードに入ることが多々あった

 気になる燃費は往路の大阪に着いた時点で、メーター読み17.9km/Lをマーク。490kmを走って走行可能距離は430kmだったから、単純に考えれば1タンク1000kmには80kmほど足りなかった。

 翌日は大阪万博の会場となる夢洲を回り、浪速区へと戻って通天閣ウォッチ。そこから阪神高速に乗り、再び東京を目指した。

大阪のシンボルでもある通天閣。すぐ近くまでクルマで行くことができた

 東京までの道のり約300kmに対し、走行可能距離が200kmとなったことから、岡崎サービスエリアで給油。経済性の高さを評価するのにサービスエリアで給油するのはどうかと思うが、時間と道のりの都合上ご勘弁を。しかしレギュラーガソリンで、リッター200円を超える単価には驚かされた。

 ちなみに燃費は大阪市内でのモーター走行が効いたのか、メーター読みで18.4km/Lまで回復していた。さらに満タンになると、なんと走行可能距離が1200kmまで伸びた。

 ただ満タン法で計算すると、その燃費は15.6km/Lになる(走行距離731kmに対して給油量は46.79L)。約18%の乖離は、ちょっと大きいというのが実感だ。

道中では渋滞にも遭遇。そんなときは高速道路上で50km/h以下になると作動するアイサイトXの渋滞時ハンズオフ機能が運転を楽にしてくれる

 とはいえ評価したいのは、その往復1055.8kmの道のりが、お世辞抜きに疲れ知らずだったことだ。2度の1000kmチャレンジで同じことを感じたのだから、これはクロストレック S:HEVのストロングポイントと言えるだろう。

突然強い雨が降り出したときにも、4WDで安定して走れるのが心強い

 特に筆者が評価したいのは、後席の乗り心地だ。最初座ったときはCセグハッチ然とした室内空間に狭さを感じるのだが、走るほどシートに体がなじんで、居心地がよくなっていく。その理由は、4WDの走りを支えるダブルウィッシュボーン式リアサスペンションや、サブフレームマウントの剛性感だと思う。助手席と比べてもシッカリ感が高く、まったく違った乗り味だが快適なのだ。

 つまりクロストレック S:HEVには、燃費や効率だけでは推し量れないよさがある。むしろ効率を突き詰めると失われてしまう、何かがあるのだ。

クロストレック S:HEVは運転しても楽しいし、後席に乗っても快適
クロストレック S:HEVを運転した高橋カメラマンも「高速走行時のゆったり感はホイールベースの長いレヴォーグとはちょっと違うけれど、今回訪ねた大阪のような都市部では短さゆえの取りまわしのよさはむしろありがたかったくらい。本当にいろんなところがちょうどいいサイズですね」とご満悦だった
山田弘樹

1971年6月30日 東京都出身。A.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。日本カーオブザイヤー選考委員。自動車雑誌「Tipo」の副編集長を経てフリーランスに。編集部在籍時代に参戦した「VW GTi CUP」からレース活動も始め、各種ワンメイクレースを経てスーパーFJ、スーパー耐久にも参戦。この経験を活かし、モータージャーナリストとして執筆活動中。またジャーナリスト活動と並行してレースレポートやイベント活動も行なう。

Photo:高橋 学