試乗記
テインの新製品「4×4 スポーツプラス」、ゴビ砂漠で開かれたクロカン4WDの祭典「アラサン英雄会」で試す
2026年10月8日 10:10
2026年で21回目を迎える「アラサン英雄会」
中国・内モンゴル自治区からモンゴルにかけて、広大な砂漠が広がる。全長1500km、幅800kmにも及ぶゴビ砂漠である。ちなみに「外モンゴル」とは現在のモンゴル国を指す。
北京から飛行機で西へ約2時間。銀川河東国際空港に到着し、さらにクルマで西へ約2時間40分移動するとクロカン4WDの天国、アラサンにたどり着く。発音は「アラシャン」に近いらしい。
規模と集まる台数からして、クロカン4WDの大会としては世界最大ではないかと思われる「アラサン英雄会」は、2026年で21回目を迎えるクロカン4WDの祭典だ。砂漠の中に一大展示場が設けられ、数え切れないほどのクロカン車が集まってくる。舞台は冒頭で触れたゴビ砂漠。試乗コースもサラサラの砂だった。
ショックアブソーバーメーカーのテインが、この大会に合わせて新製品を装着したクロカン車11台を用意し、そこに参加させてもらった。
新しいショックアブソーバーは、2025年に発表した単筒ソレノイドバルブによる減衰力調整式クロカン4WD用「4×4 Z2」に次いで発表された普及型の製品。複筒式「4×4 SPORT」に別体タンクを付けた減衰力調整式「4×4 SPORT PLUS」である。メリットはガスとオイルを分離したことで耐久力が向上し、長距離の悪路走行でも性能のタレ(劣化)が少ないことにある。実際、高速道路網が発達した中国でも、悪路を長時間走る機会も多く、標準ショックアブソーバーではもの足りないユーザーが多いという。
近年、注目を集めているクロカン車。日本でも新型パジェロの発表があり、盛り上がりを見せているが、中国メーカーも急速に力をつけており、中国でも多くのファンを持つ。現在の中国経済は好調とは言えないが、クルマ業界ではクロカン車の人気は高く、テインもこのカテゴリーのラインアップを強化している。
また、テインが得意としている減衰力調整機構は4×4 SPORT PLUSでも健在。オプションで室内から調整できる「EDFC5」も装着可能。走行シーンによって、前後のショックアブソーバーの減衰力を車内にいながら変えられる。
11台のクロカン車に乗る
試乗コースはサラサラの砂漠の中。一応、大きな枠で走行区域は限定されているようだが、特に設定されたコースというものはなく、オーナーが各自の責任で自在に走りまわるという、中国らしく大らかなものだ。
5日間でトータル30万台、100万人の来場を見込んでいることから、広い砂漠とはいえ出入りゲート付近の混雑ぶりは凄まじい。ここを突破して砂漠の中に入っても初めて走る砂漠ではどこを走っていいか分からない。それに加えて参加車が勝手気ままに走るので中国流の間合いがつかめず戸惑う。
広大な砂漠の中で行方不明にならないのか心配になったが、そういうことはないらしい。通信網は国益に直結しているため、どんなに大勢が集まっても通信はでき、いざという時には有料のレスキューが駆けつける。クロカン好き、アドベンチャー好きが砂漠の中を自由に走り回る図を想像してほしい。まあ、カオスである。しかしそれも「アラサン英雄会」の醍醐味だ。
テインが用意してくれたクロカン車は、前述のとおり11台。それぞれ江蘇省から自走でやってきた。
長城汽車のTANK 400(PHEV)、TANK 300(ガソリン)、TANK 300L(PHEV)、北京汽車の212 T01(ジープから派生したモデル)、ジープ ラングラー、フォード ブロンコ、トヨタ LC300(ランクル300)、LC250(ランクル250)、LC76(ランクル70)、三菱 パジェロ(V6ガソリン)、スズキ ジムニー(ノマド)である。知らないクルマもたくさんあるが、中国にはさらに多くのクロカン車があり、今回の車両はその一部にすぎない。新しい中国車の実力を垣間見ることができるのも、楽しみの1つだ。
試乗車のタイヤはBFGoodrichや横浜ゴム・ジオランダーなどのMUDタイヤで、空気圧は0.8kgほどまで極端に下げ、接地面を広げる。そのため、スライドさせて駆動力をかけたりするとリム落ちすることもあるが、あくまで砂漠での特殊な事情だからこそ許される。
さて、試乗車はすべてオプションのEDFC5を装備しており、中間値がセットされていた。慣れた人の走りを見ていると、擂鉢状の窪みに入って上れなくなると、そのままバックして勢いをつけ、擂鉢の斜面をグルグルまわりながら勾配の緩くなったところから脱出している。なるほど! しかし、見るは易しで、自分でやってみると思わぬところで横滑りしたりして、コツをつかむのは難しい。何より、瞬時に判断してアクセルを踏み込む勢いが必要らしい。
それでもアクセルを踏むところと、諦めてバックしてやり直すポイントが何となくつかめてきた。やっぱり、パワーを食われる砂地では出力が大きく軽いクルマが優位。もちろん4WDと駆動輪LSDはマストだった。
ジープから派生した北京汽車の212 T01はガソリン車だが、そこそこのパワーがあり、比較的軽量なのが幸いしている。砂地は速度が落ちるとなかなか回復できないが、速くはないもののは走りぬくことができるのがおもしろい。
ジープ ラングラーは、クロカン車の基本を押さえていることがよく分かった。こちらももっとパワーが欲しいところだが、ジワジワとトラクションがかかるところには底力を感じる。
ランクルはLC300とLC250が同じ系統に揃えられており、250はモダンになった足まわりやボディ剛性の高さがよく分かった。76(日本での70ランクル)は唯一のMT。オリジナルランクルの素朴な味を今も楽しめるのは貴重だ。すべてが頑丈で操作力も大きいが、それがかえって野趣にあふれ、人が操作する楽しさを味わわせてくれた。
興味深かったのは長城汽車のTANK 400とTANK 300L。いずれもPHEVで、オフロードにおけるEVならではのトルク特性は魅力だ。ブレーキの協調制御が難しいなど、改善してほしいところはあるが、新しいものにチャレンジする精神は逞しい。
フォード ブロンコは動きが滑らか。乗用車のフォードと同じフィーリングで、砂地でも穏やかなのが好ましい。
スズキ ジムニーは1.5リッターの小排気量。出力も小さいので無理はできないが、Lowレンジも駆使してどこでもトコトコ走る姿はスズキの真骨頂だ。
肝心のEDFC5による減衰力調整は、砂漠の中では特殊なものになってしまう。トラクション重視でありながら、ハンドルの応答性も必要になる。車種によってフロントの減衰力を強くして方向性を確保したり、リアを弱くして接地力を上げてみたが、明確に変化が表れて興味深かった。いろいろ試せるのがEDFC5の醍醐味だ。
コースを砂から硬められたグラベルに変えて、TANK 300Lと北京汽車の212で再挑戦する。そこそこしっかりしたグラベルでは減衰力は砂地よりもソフトにした方が路面に馴染みやすい。前後ともサスペンションをスムーズに動かし、荷重移動による挙動変化を作りやすくなった。
EDFCのメリットは、タイヤの変更や空気圧によって微妙に調整でき、好みに合わせられることだ。今回の試乗では汎用性が高く価格も抑えられる複筒式の良さを引き出していることがよく分かった。
さらに本格的なショックアブソーバーとして、2025年の試乗会で乗せてもらった単筒式倒立型+別タンク+調整式の「4×4 Z2」がある。こちらはオフロードクロカン用のトップモデルだ。
4×4 SPORT PLUSの別タンクは脱落を防ぐため、ショックアブソーバー本体に上下2か所で固定されて、ハネ石対策のカバーも被せられている。モータースポーツから生まれたテインらしいこだわりだ。ノーマルのショックアブソーバーでは走行時の温度は80℃、条件がわるいと130℃になることもあり、オイルシールへのダメージも想定され別タンクによる容量アップの効果は大きい。
中国では8000元から9000元で販売され、日本での販売はもうすこし高くなるという。ちなみに別タンクなしのSPORTは7000元、トップモデルのZは1万5000元となる。
さて、このイベントは砂漠を走るだけではない。広大な会場には多くのサプライヤーが集まる。パーツの展示だけでなくモビリティのスタートアップも多数参加し、商談も行なわれている。一方では子どもの遊び場やカラオケ大会もあって一大レジャーランドと化す。
広大な展示会場にはステージごとに巨大なステージが設置され、随所でロックからコーラスまで多種多様な音楽が繰り広げられる。時おり花火が上がり、屋台では孫悟空が焼き鳥を焼いている。こちらもカオスである。ゴビ砂漠は満天の星空どころではなく、色とりどりのサーチライトと多数のドローンが飛び交う。中国のエネルギーを身体で感じた。すごい!
























