インタビュー
【インタビュー】「CX-3 プロトタイプ」を公開したマツダの冨山主査に聞く
デミオ比20Nmアップの最大トルクでしっかり車体を引っ張る加速感を実現
(2015/1/26 00:00)
2014年のロサンゼルス オートショーでワールドプレミアを行ったマツダの新型コンパクトSUVの「CX-3」。現地では国内仕様はディーゼルのみとなり、トランスミッションは6速MTと6速AT、駆動方式は2WDと4WDが用意されることが発表された。そのほかのグレード展開や装備などについてアナウンスはなかったが、先日行われたプロトタイプ車両の撮影会(http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/photo/20150117_684154.html)の場で2月下旬に正式発表と予約受注を開始することに加え、エンジンスペックなどの詳細や“隠し球”の新機能があることなどが明らかになった。
新たに発表されたCX-3国内仕様の情報とワールドプレミア後の反応、そして国内では初披露となった先日の東京オートサロンでのようすなどについて開発主査の冨山道雄氏にインタビューした。
──ロサンゼルス オートショーで初公開してから2カ月が経ち、先日の東京オートサロンでは来場者が実車を見る機会がありました。どのような反響でしたか?
冨山主査: まず、ロサンゼルス オートショーでは“もっとも注目のクロスオーバー”として評価してもらい、CX-3のセグメントにとらわれないコンセプトをしっかりと伝えられたと思っています。東京オートサロンでは私も車両の説明係まで担当して、3日間とも直接的に来場者の反応を聞くことができました。ヤングファミリーやダウンサイジングを望む人から好意的な声が聞けたので、狙っていた購入層にしっかりとアピールできているのだと思いホッとしています。
──ロサンゼルス オートショーでは明らかになっていなかったパワートレーンの出力や追加機能も公開されましたね。
冨山主査: 国内ではディーゼルエンジンモデルのみとなるCX-3は、デミオにも搭載されているSKYACTIVE-D 1.5を搭載しますが、スペックが異なります。最高出力の105PSは変わりませんが最大トルクが270Nmとなっていて、デミオより20Nmアップしています。車格が大きくなるので、デミオと同等の仕様だと高速域の加速に物足りなさがありました。シチュエーションで言えば、高速道路で追い越すときにアクセルを踏む込んだ一瞬の加速感。そこでしっかりと車体を引っ張っていくトルクを出しました。制御を変更することでトルクアップしているので、パーツを変更しているわけではありません。
それと、静粛性を高める「ナチュラル・サウンド・スムーザー」をオプションで選べるようにしました。これはディーゼルエンジン特有の音を消す機能で、CX-3は元からデミオよりも静粛性を高めていますが、それでもディーゼルエンジンのみのモデルなので、必要であれば選べるようにしています。これはCX-3だけのアイテムと言うよりSKYACTIVE-Dの技術で、現場サイドに無理を言って間に合わせてもらいました。
──少し開発していたころを振り返ってもらいたいのですが、CX-3はセグメントの固定概念を取り払うことをテーマにしていたと思いますが、難しかったことはありましたか?
冨山主査: 新しいクラスレスなクルマを作るということで、まずは開発に携わる人の既成概念を破ってもらうことをやりました。例えば、クロスオーバーなら最低地上高は何cm必要だとか、ルーフレールがないといけないなど、どうしても市場にあるクルマを見ながら開発を行うことがあります。その考え方を取り払ってゼロから開発しました。
それと、コンパクトなサイズでセグメントとしては“Bカー”になりますが、質感は上位カテゴリーにも見劣りしないようにしたいと考えました。具体的には、室内の屋根に貼る布地はかなり上級な素材を使いました。ワイパーも通常ならば使わないデザインブレードを装備するなど、お金を掛けるところには徹底的に投資しています。
──あとは、CX-3の特徴はやはり内外装のデザインだと思いますが、デザイナーから挙がってきた試作車を量産化する難しさもあったのではないでしょうか?
冨山主査: CX-3の最終的なデザインモデルが完成したときに、まず見せたのがコスト管理を行うファイナンス部門でした。これだけ高い質感と内外装のデザインにこだわっているので、ぜひそのまま実現したいという熱意を訴えるためです。量産する際にコストを考えることはもちろん必要なので、質感とデザインを両立するために、どこにコストを掛けてどこを削るのか検討しました。
あとは生産部門ですね。こちらもデザインモデルの絶妙なラインや完成度を実現してもらいたかったのが理由です。アウターパネルのデザインやグリルと一体化したフロントバンパーなどは、実際に生産するラインの人たちに説明して、通常ではやらない工程で実現してもらいました。常識的には、デザインモデルが完成したらまず役員に見せるのですが、CX-3ではファイナンス、生産部門という順番でデザイナーの考えを伝えました。
──すでに量産に入っているとのことで開発は終了しましたが、今後の展開について考えていることはありますか?
冨山主査: 他モデルも同様ですが、現在のマツダでは商品改良を順次行っているので、CX-3も適切なときに刺激策を入れたいとは思っています。マツダのラインアップは「一括企画」を採用しているので、他モデルの技術を簡単に取り入れることができます。なので、常によい素材があればアップグレードは行っていくつもりです。
国内仕様のさまざまな装備や詳細なグレードなどが発表されたCX-3。オプションで選択装着できるSKYACTIVE-Dの新機能「ナチュラル・サウンド・スムーザー」や足まわりのセッティング、操安性などの取り組みについては、別の記事で追って紹介するので参照してもらいたい。