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写真で見る トヨタ「ランドクルーザー“250”」
2023年8月3日 14:28
トヨタ自動車「ランドクルーザー」は日本国内はもとより、世界的にも評価の高いヘビーデューティ4WD。今回、ワールドプレミアされた「ランドクルーザー“250”」シリーズは、シリーズ中「ライトデューティモデル」として分類されており、「“人々の生活と実用を支える”ランクルの本質に原点回帰する」ことを目標に開発された。日本国内でのデビューは2024年前半が予定されている。
ランドクルーザーの歴史は1951年に登場した「トヨタBJ型」に遡る。その後、1953年に「BJ25型」がデビューし、翌年ランドクルーザーの名を冠した最初のモデルとなる「FJ25型」、そして1955年に「FJ21型」「BJ21型」と矢継ぎ早にバリエーションモデルを展開していく。このあたりの歴史は当時のプレスリリースなどを元にしているが、市販車と輸出車など若干立ち位置が曖昧なモデルもあり、若干トヨタ公式資料と異なっている部分もあるが、マニア目線のヒストリーということでご了承いただきたい。そして1960年に登場する「40」シリーズにより、その名前を確固たるものとしていく。この40シリーズの登場に前後してボディバリエーションが増えていくことになるが、詳細に触れていると記事が数本書ける分量になってしまうため、ざっくりとした流れだけ紹介する。
まずは2ドアのショートホイールベースモデル。このトヨタBJ型直系とも言える流れは「70」シリーズをもって消滅。4ドア化してミドルホイールベースとしたモデルは、1984年に70シリーズへとバトンタッチ。一時、国内販売が終了したが「ヘビーデューティ」モデルとして復活し、継続販売されることが今回同時に発表されている。1985年、SUVブームを背景に70シリーズのバリエーションモデルとしてワゴン登録モデルが誕生。乗用車系のエンジンやコイルリジッドサスペンションの採用など、快適性と乗り心地を高めることでユーザー層の拡大に大きく貢献した。1990年からは「ランドクルーザー プラド」を名乗ることになり、1996年に「90」シリーズ、2002年に「120」シリーズ、2009年に「150」シリーズへとモデルチェンジを行ない、のちに今回発表された250シリーズへとつながっていく。最後がロングホイールベースの大型ボディにステーションワゴン的なキャラクターを持たせたシリーズで、「60」「80」「100」「200」シリーズから現在のフラグシップ「ランドクルーザー“300”」につながっていくものになる。
この新型はランドクルーザーの中核モデルとして「質実剛健を追求し、お客様の生活と実用を支える」がコンセプト。そのために、
・「GA-F」プラットフォームの採用によるオフローダーとしての基本的性能の向上
・ランドクルーザーにふさわしい力強い走りや、環境性能を実現する多彩なパワートレーン
・機能性を追求したパッケージと、伝統とモダンを融合させた内外装デザイン
・クラストップレベルの安全性能
の4つを進化させたという。
細かな解説などは既報の記事を参照していただくとして、ここでは実車の見た目や開発陣のコメントから見えてきた部分を紹介していきたい。なお、今回展示された車両はステアリング位置からも分かるように海外仕様モデルで、国内向けとは異なる点が多々ある可能性があることに注意していただきたい。また、詳しいスペックもほとんど公表されておらず、グレードや主要装備についても同様。そのあたりに留意してご覧いただきたい。
まずは基本性能から。まず、ベースとなるラダーフレームについてはランドクルーザー“300”やレクサス「GX」などにも採用されているTNGAのGA-Fプラットフォームを採用。フレーム部分については板厚の異なる部材をレーザー結合してプレス成型する「非線形テーラードウェルドブランク」、超ハイテンションスチール材を適材適所で採用するなどにより、従来型比150%の高強度を実現するとともに高剛性、軽量化を達成している。なお、ボディに関しても超ハイテンションスチール材を採用するとともに、スポット溶接点を160点増やしたほか、構造用接着剤の塗布延長を15.3m増やすことで高強度と軽量化を、さらにフードにアルミ材を使用することで軽量化を図っている。
パワートレーンは国内および海外向けで2.4リッターガソリンターボハイブリッド、2.4リッターガソリンターボ、2.8リッターディーゼルターボ(48Vマイルドハイブリッド)、2.8リッターディーゼルターボ、2.7リッターガソリンの全5タイプを用意。このうち、国内に導入されるのは後ろ2つになる。
まず2.8リッターディーゼルターボは、従来型にも搭載されている直列4気筒クリーンディーゼルの「1GD-FTV」型。今回、ターボチャージャーのインペラ(羽)を改良することで立ち上がりと過給時のバランスを最適化するとともに、インタークーラーを水冷化することでパワーとクリーン化を両立。トランスミッションも新開発の8速ATと組み合わせることでオンロード、オフロードでの扱いやすさを向上させている。スペックは最高出力150kW(204PS)、最大トルク500Nm。2.7リッターガソリンエンジンは直列4気筒の「2TR-FE」型。ランドクルーザーでは長らく使われているおなじみのユニットで、今回は日常域での制御を中心にブラッシュアップ。6速ATと組み合わされ、スペックは最高出力120kW(163PS)、最大トルク246Nmとなる。
なお、今回のラインナップはあくまでも発表時のもので、現時点では海外向けとされているパワートレーンが国内市場に投入される可能性も「ゼロではない」とのこと。
従来型では上位モデルより短いホイールベースで差別化が図られていたが、新型は同じ2850mmに。これはランドクルーザー80シリーズからずっと採用されている数値となる。ボディサイズについても4925×1980×1870mm(全長×全幅×全高)と、ランドクルーザー“300”とほぼ同じ堂々たるボリュームに。対地障害角はアプローチアングル31度、デパーチャーアングル23度、ランプブレークオーバーアングル23度となる。サスペンションは新開発でフロントがハイマウント・ダブルウイッシュボーン式、リアがトレーリングリンク車軸式を採用する。オフロード関連の装備として面白いのが「SDM(Stabilizer with Disconnectio Mechanism)」。これはスイッチ操作でフロントスタビライザーの状態を切り替えることが可能なメカニズムで、ランドクルーザー“300”に搭載されている「E-KDSS(Electronic Kinetic Dynamic Suspension System)」が電子制御で効きを変化させるのに対し、こちらは手動でON/OFFを切り替えるイメージになる。駆動方式は従来型と同じくフルタイム4WDとなるが、センターデフロックおよびリアデフロック(オプション)を見直すことで作動開始時間の短縮が図られているという。また、パワーステアリングが電動化されているのも、目立たない部分ながら大きなトピックだ。
外観は2つの「顔」が用意されているのがポイント。1つはランドクルーザー80のような雰囲気を感じさせるスクエアなライトを持つタイプ、もう1つはランクル40シリーズから続く丸目2灯を彷彿とさせるタイプ。過去、90シリーズのランドクルーザー プラドでショートボディとロングボディで顔付きを変えたことがあったが、これはその復活といったところ。見た目にはまったく違うつくりに見えるが、実はパーツが異なるのはライト部分だけで、ユーザーレベルでの交換が可能な構造になっているという。実際に販売店レベルでどのような方法を採るかは未定とのことだが、なかなか面白い試みといえる。また、オフロードなどでキズが付きやすいフォグランプ部分のパネルも、そこだけを交換できる構造になっているという。
安全性能に関しては、現状「対応する事故形態を一層拡大する『トヨタセーフティセンス』が全車標準」とのアナウンスのみ。ただ、フロントウィンドウ上部のカメラだけでなく、リアウィンドウ上部にもカメラ(バックカメラは別に存在)が装着されていることから、何らかの機能が追加されているハズだ。また、ステアリングコラム上にドライバーモニタリングシステムの存在も確認できることから、ACC(アダプティブクルーズコントロール)だけでなく、「アドバンスト ドライブ」のような渋滞時支援の採用も期待できるところ。電動パワーステアリングの採用からも、この可能性は低くないだろう。
最後に車両価格について。今回の発表ではスペックを含めあまり詳細なトコロまでは語られていないが、車両価格に関しては各所の担当者が相当に気にしている様子だった。コンセプトにある“質実剛健”には価格も含まれているとのことで、「できるだけ多くのユーザーに乗ってほしい」との想いから、できるだけスタート価格を抑えたいとの印象を受けた。ただ、安全装備や環境対応、部材の価格上昇などもあることから、従来モデルを下まわることは考えづらく、少し上あたりというのが現実的か。まだ、正式発表には間があることから、ぜひとも「ビッグサプライズ」を期待したいところだ。