飯田裕子のCar Life Diary

91th パイクス・ピーク ヒルクライムレース

 パイクス・ピーク・インターナショナル・ヒルクライムレース2013(以後パイクス)が今年も始まりました。このレースは富士山よりも高い標高4300mのパイクス・ピーク(コロラド)という山を舞台に行われるタイムアタックレース。1916年から始まり、アメリカではインディ500に次いで歴史のあるレースとしても有名です。コースはゴールとなる標高4300m地点の山頂までの約20㎞。

 「パイクスピーク・フリーウェイ」という観光道路をこのレースのために封鎖するのは決勝日の日曜日だけ。4日間に渡って行われる練習&予選は、すべてこの道路のゲートが一般観光客向けにオープンになる前の早朝3時半~9時。空気の薄い高地での朝練はかなり過酷。そんなレースに、今年も157台ものバイクやクルマが国内外からエントリーしています。

 日本人が9名も参加しているというのも今年の注目ポイント。日本からEVクラスに3台と、北米のD1などで活躍する日本男子が乗るFR-S(86)やBRZ、さらにバイクが1台、サイドカーがパイクスに挑みます。

 中でもEVクラスは昨年から熱い。パイクス優勝常連のモンスター田嶋が昨年からEVに転向し、EVでも総合優勝を目指すなか、三菱自動車工業も昨年から参戦。今年も強力なパワーを持つEVを新たに開発し、増岡浩選手、グレッグ・トレーシー選手の2台体制でモンスター田嶋とライバル争いを繰り広げています。さらに2009年から参戦を開始しているチームヨコハマEVチャレンジの塙郁夫選手は、EVマシンにエコタイヤ「ブルー・アース・エース」を装着して自己ベストを更新中。今年は間もなく発売を開始するマイナーチェンジ版を一足先に装着し、記録更新に挑みます。

 さらにさらに、アンリミテッドクラスではWRCの天才ドライバーとしても世界で知られるセバスチャン・ローブ選手がプジョー208 T16でいきなりパイクスの総合優勝記録を塗り替えようとしています。それを阻むドライバーはいるのか?

朝3時半くらいに「パイクスピーク・フリーウェイ」のゲートオープン。各セクションのPA(パーキングエリア)では走行準備は始まります
セバスチャン・ローブ選手と先週末に開催されたル・マン24時間レースでクラス優勝したロメイン・デュマ選手。練習の合間に路面チェックなども行い、身振り手振りでは走りについて話している様子だったけれど、フランス語だからまったく分からず……(苦笑)
今年ホンダは4輪を5台、2輪を4台、ATVを1台で参戦。ただし、ワークス体制というわけではなく、クルマ好きバイク好きが会社のサポートを受けて参戦しているという感じです。アメリカ版オデッセイはミニバンで、おそらく初のパイクスの記録を作りことになるのか!?

 そして6月24日、91回目を迎えたパイクスがスタートしました。初日はドライバーのエントリー確認や車検、翌25日はレースコースとなる山頂までの20㎞を半分に分け、2輪/4輪がそれぞれ練習走行を行いました。この練習は今回が初めて。

 26日(水)からは例年通り3日間の練習&予選が行われます。この3日間は参加車(バイク)を3グループに分け、「ボトム」「ミドル」「トップ」に3分割した1部分ずつを走り、予選は毎日「ボトム」を走るグループが行うという仕組みです。決勝までフルコースを走れるチャンスはありません。

 この原稿を書いているのは27日(木)。つまり練習走行が2日間終了しました。今回はどんなクラスにどんなクルマや人が参加しているのか、今年の注目ドライバーやマシンと個人的に目に留まったマシンなどを紹介します。決勝は今週末、30日(日)です!

 ちなみにもっとパイクス・ピークについて知りたい方は、昨年のパイクス・ピークについて紹介した「パイクスピーク2012 飯田裕子のパーフェクトガイド」(https://www.youtube.com/watch?v=pT81nrQ3iNA)がYouTubeにアップされていますので、お時間のある方はぜひ見ていただけると幸いです。

先日、ダレンバックのドライブでパイクス・ピークのレースコースでタイムアタックを行い、市販車SUVコースレコードを出したレンジローバー・スポーツが今年のオフィシャルカー。三菱自動車アウトランダーとランサーエボリューションはセーフティカーとしてイベントをサポート
右から相澤タケシ選手(タイムアタッククラス:2011 Scion tc)、ケン・グシ選手(具志健士郎、エキシビションクラス:レクサスIS-F CCS-R)、吉岡稔記選手(タイムアタッククラス:2013スバルBRZ)、塙郁夫選手(EVクラス:2011 Summit Her-02)、モンスター田嶋氏(EVクラス:2013 E-Runner Pikes Peak Special、増岡浩選手(EVクラス:2013 Mitsubishi Motors MiEV Evolution II)、伊丹孝裕選手(パイクスピーク1205:2012 Triumph Speed Triple R)、渡辺正人/安田武司選手(サイドカー:2007 LCR F2-KUMANO CBR600RR)とチーム監督さん
EVにはサイレンが鳴らなければいけないというレギュレーションがあり、今年からこんな装置を使って計測していました(チーム ヨコハマ HER-02)

Practice/Qualifying

一度全部のクルマが走行を終えたら皆で下山。そして再度走行、というのを時間が許す限り行われます。初日はトップセクションの山頂でクルマを待ち、翌日はミドルセクションのコーナーで取材をしました

Electic Class

2013 E-Runner Pikes Peak Specialとドライバーのモンスター田嶋選手(パイクスでは地元の人々からも大人気!)
Team Yokohama EV Challenge 2011 Summit HER-012チームの詳細は別の回で紹介します
32号車ドライバーのグレッグ・トレーシー選手はパイクスで6度の優勝経験を持ち、3つのレコードは現在も破られていない。昨年はドカティの750㏄クラスでレコードを更新し勝者となる。4輪でのパイクス参戦は今回は“初”
TOYOTA TMG EV P002ドライバーのロッド・ミレン選手。息子はアンリミテッドに出場しているライズ・ミレン選手
ラトビアから参戦。マシンは2013 e0 PP01 ドライバーはジャニス・ホーリック選手(ラトビア)
ホンダ Fit-EV
昨年からEVで出場している三菱自動車は、32号車を増岡選手が、34号車をグレッグ・トレーシー選手がドライバーを務めます

Electic Class予選結果

順位カーナンバードライバー予選タイム
134Greg Tracy3分56秒287
232Hiroshi Masuoka3分57秒777
31Nobuhiro Tajima3分58秒189
476Rod Millen4分4秒331
5100Janis Horeliks4分19秒488
68Ikuo Hanawa4分46秒789
724Roy Richards5分28秒018

Unlimited Class

 ボトムセクションで行われた予選ではセバスチャン・ローブ選手が3分26秒153で2位のロメイン・デュマ選手の3分43秒556とタイムをかなり引き離し、セバスチャン・ローブ選手がクラス1位でした

2013 Peugeot 208 T16 Pikes Peakとセバスチャン・ローブ選手
2013 Hyundai PM580Tのドライバーはパイクスのレコードホルダー、リズ・ミレン選手
ロメイン・デュマ選手がドライブする 2013 Norma M20
ジャン・フィリップ・デイロー選手がドライブする2011 MINI カントリーマン

Pikes Peak Open

ポルシェ 914-8
2008 Freightliner Cascadia Pikes Peak Special
James Robinson 1991 アキュラ NSX。ジェイムス選手は2011年にフィットで初参戦。「山頂までの道のりは退屈だぁ」と言っていたら、翌年(2012年)からNSXでパイクスに挑んでいます
フランスからやってきたインプレッサはディーゼルエンジン搭載車でした
シェルビー Cobra
フォード Mustang GT

Time Attack Class

2011Scion tCドライバーの相澤選手はカリフォルニア在住。ケン・グシ選手のフォーミュラDのスポッターもしているのだとか
カリフォルニアに住み、フォーミュラDに参戦中の吉岡稔記選手(2013 スバルBRZ)はパイクス参戦3年目。今年は昨年までのシルビアからマシンをBRZに変更して上位を目指す
サイオン FR-S
地元コロラドスプリングスからポルシェで参戦の2台
アキュラ TL
2003 Subaru WRX
2013 Hyundai Genesis Coupe
2013 Hyundai Genesis Coupeに乗るポール・ダレンバック選手(左)は先日、レンジローバー スポーツでパイクスピークのタイムアタックを行い、市販車SUVでの最速記録を樹立。ちなみにダレンバックはパイクスの常連、今回は昨年、総合優勝した写真のモデルで昨年に記録に挑戦します。ちなみに右のリズ・ミレン選手が昨年ジェネシスで総合優勝をし、モンスター田嶋選手は最速記録を破られてしまったのでした

Exhibitionクラス

ドライバーのケン・グシ選手と朝陽を浴びてより一層ボディーカラーが鮮やかになるIS-F CCS-R

Vintageクラス

スウェーデンからやってきた、フォード Fast Back GT 350(1967)
ビンテージカーは今年は7台と少なめなのが個人的には寂しい

Open Wheelクラス

Ford Open(2013、写真右)

Side Car&Pikes Peak 1205(Bike)

日本人初参戦のとなるこのクラス。ドライバー渡辺選手/パッセンジャー安田選手は国内外でも数々のレースで成績を残している実力十分のチーム。狙うはクラス優勝!
バイクの整備中の伊丹選手
練習走行初日
大きな滑落でなくてよかった……

飯田裕子