トピック

航続距離の延びた「日産リーフ e+」で東京~新名神の鈴鹿PAを無充電走行してみた

400km以上を無充電走行

東名高速道路 東京IC(インターチェンジ)から、3月17日に開通したばかりの新名神高速道路 新四日市JCT(ジャンクション)~亀山西JCT間にある上下集約型の鈴鹿PA(パーキングエリア)まで、日産自動車「リーフ e+」で無充電走行してみた

高速道路主体でどれだけ走れる?

 日産自動車のEV(電気自動車)「リーフ」に加わった「e+」は、WLTCモードでなんと458kmもの航続距離を実現したというからビックリだ。思えば初代リーフが出た当時、航続距離の短さが指摘されることが多かった。

 それから10年あまり。ついにリーフで400kmを超える数字を見ることができるとは。しかも厳しいWLTCモードであることもお忘れなく。JC08モードなら570kmだ。そこで、実際に走ってみようということになったわけだ。目的地としては、都心から3月に開通したばかりの新名神高速道路 新四日市JCT(ジャンクション)~亀山JCTの途中にある鈴鹿PA(パーキングエリア)までが約380kmなので、ちょうどよいのではと考えた。

今回の無充電走行に使用した車両は、1月に発売された「リーフ e+」の上級グレード「G」(472万9320円)。ボディサイズは4480×1790×1545mm(全長×全幅×全高)、最低地上高は135mm。通常のリーフより5mm高く、最低地上高は15mm低いサイズ
標準のリーフと内外装に大きな違いはなく、フロントバンパー下部にブルーのリップスポイラー状のパーツを追加したことと、充電ポートに「e+」ロゴを配した程度。しかし中身は大きく異なっており、リーフ e+では新型モジュールを採用してバッテリーパックの密度を約25%向上させ、搭載セル数を192セルから288セルに増加。バッテリー容量は40kWhから62kWhとなり、JC08モードの航続距離をこれまでの400kmから570kmに拡大(WLTCモードは458km)。そのほかGグレードのホイールは17インチ(タイヤサイズは215/50R17)が標準装備になる
動力性能ではインバーターの制御やハードを変更してより多くの電流を供給することが可能になったほか、ギヤボックスを強化。これにより、標準のリーフと同じEM57型モーターを採用しつつ、最高出力160kW(218PS)/4600-5800rpm、最大トルク340Nm(34.7kgfm)/500-4000rpmに進化。80km/h~100km/hの加速時間は約15%短縮することに成功。なお、充電については急速充電ではバッテリー残量警告灯点灯から80%充電までの時間を50kW充電で約60分、高出力タイプの70kW充電で約50分としている
Gグレードの内装では本革シートをはじめ、プラズマクラスター搭載フルオートエアコン、前後シートヒーターなどが標準装備になる

 早朝に起きて近所のディーラーであらかじめ充電してバッテリーを100%にしておき、いざ出発! 同乗するのは約90kgの編集部員、約50kgのカメラマン、63kgの筆者という3人。

鈴鹿PAに向けて元気にスタート(朝6時なのでポーズが硬いのはご愛敬)
バッテリーの充電を100%にしたときの走行可能距離は387kmと表示
桜並木を通りながら東京ICを目指す

 ご存じのとおり、EVというのは高速巡行では不利なわけだが、走り方は基本エコドライブで、ECOモードを選択。運転支援技術「ProPILOT(プロパイロット)」は使わず、パワーメーターのエコの範囲をできるだけ超えないようにしながら走った。

 カーナビの目的地を鈴鹿PAに設定したいところだが、取材日の時点ではまだ入っていなかったので四日市JCTに設定。出発時点でドライブコンピュータをリセットしたが、トリップメーターをリセットするのを忘れていて、東名高速道路の乗り口でリセットしたので、1.4kmの差があることをご理解いただきたい。

カーナビがまだ新名神の新開通区間に対応していなかったので、ひとまず四日市JCTをゴール地点とした。現在のバッテリー残量で目的地に着けない可能性がある場合は、あらかじめ充電スポットを経由地に追加することも可能。これは便利な機能

 まずはひたすら西へ。厚木IC(インターチェンジ)を過ぎると、このあたりをよく走る人ならご存じだろうが、大井松田あたりは上り坂が続き、電費的には不利。御殿場ICの手前、足柄SA(サービスエリア)の少し先となる83キロポストのあたりに東名高速の最高標高地点があり、そこから先は全体としては下り勾配になるわけで、早くも最大の難関は越えたと言えそう。

 リーフの航続距離計に表示される数値は、直前の平均電費と現在のリチウムイオンバッテリーの残量から約100m走行ごとに算出された、今の状態で走行を続けた場合の航続可能距離が表示される。

 というわけで、われわれが今回のリーフ e+を借りる前に、誰がどういう走り方をしていたかによるが、走るほどに自分の色に染まっていって、100kmほど走行した裾野ICのあたりでは走るほどに航続可能距離が増えていくようになった。

 そして目的地まで211kmを残した海沿いの由比PAで、バッテリー残量は67%、航続可能距離は308kmとの表示。これなら余裕を持っていけそうな感触だ。

足柄SA付近を走行中。目的地まで263km、航続可能距離は281km(バッテリー残量77%)と表示
83キロポストあたりの最高標高地点(454m)を通過。あとは下るだけ!?
海沿いの由比PAでひと休み
由比PA付近から目的地まで211km、対して航続可能距離は308km(バッテリー残量67%)に伸びた

300km走ってきて、あと100km走れる?

 バッテリー残量が50%になったのは、203kmほど走行した静岡県の磐田市。このあたりは吹き流しが真横になるくらい風が強くて、ステアリングをとられるほど。電費にも影響があるはずだが、めげずに走る。ちなみにこういうときは、本当はプロパイロットの車線逸脱防止支援システムを駆使すると驚くほどラクに車線を維持してくれる。今回、往路では電費最優先のためONにしなかった(ECOモードにならなくなるため)が、同じように強風に見舞われた帰路で試したところ、やはりその恩恵は小さくないことをあらためて実感した。

 しばらく走行しつつ、昼食を取るため浜名湖SAへ。走行約245kmで、バッテリー残量は38%。目的地まで残り107km、航続可能距離は158kmとの表示。「浜名湖といえばうなぎ!」ということで、うなぎ弁当を食す。弁当とはいえけっこう高価であることに驚いたが、国産うなぎを食べられる機会は限られる。ありがたく頂戴した。

浜名湖SA付近からゴールまで107km、航続可能距離は158km(バッテリー残量38%)
浜名湖と言えばうなぎ! 浜名湖SA内のテイクアウト専門店「うなぎの店 浜鰻」でうなぎ弁当(松:3500円)、うなぎ弁当(竹:1800円)、カップ鰻めし(1080円)を注文。どれも美味でございました
浜名湖SA内の看板の新名神区間は点線になっていた

 そして一路、鈴鹿PAを目指す。ゆるやかな下り坂が長いこと続いて、岡崎の先の豊田JCTで走行距離は約300km。バッテリー残量は22%、あとちょうど100kmほど走行可能との表示。目的地として設定した四日市JCTまでは50kmあまりなので問題なく行けそうだが、大台の400km超えとなるかはまだ予断を許さない。

 東海JCTで走行距離は320kmあまり。バッテリー残量は18%、航続可能距離は82km。四日市JCTをまっすぐ進み、東名阪自動車道ではなく新名神を目指す。ここまで350kmあまり。バッテリー残量13%、航続可能距離は60km。

東海JCT付近から目的地まで28km、航続可能距離は82km(バッテリー残量13%)

 四日市JCTから約4km、新四日市JCTからできたてほやほやの新名神へ入る。鈴鹿PAまであとわずかというところで、ついにバッテリー残量が10%を切って、ちょっとハラハラ。このあたりはずっと緩やかな上り勾配だが、鈴鹿PAの手前のトンネル、ここまで368kmを走ってきたところでバッテリー残量は8%、航続可能距離33kmだ。

できたてほやほやの新名神を走るリーフ e+
仮のゴール地点、四日市JCTに到着。引き続き新四日市JCTを目指す
新四日市JCTを通過
新名神の地図データがないため道なき道を行く
鈴鹿PAまであと1km!

 そして、バッテリー残量が8%のまま鈴鹿PAに到達! やったー! ここまでの総走行距離は372.2km。無充電で走りきったのは立派だろう。

 そして完成して間もない鈴鹿PAはクルマ、クルマ、クルマ、人、人、人でかなり賑わっていた。「鈴鹿」らしくモータースポーツにまつわる展示物もある。そして名物の「黒味噌らーめん」を食す。見た目のとおり、かなり濃厚な味わい。さらに、同じく名物の「ぼつ焼丼」を食べようと思ったのだが、ウワサで聞いて恐れていたとおり、すでに完売だった……。

目的地である鈴鹿PAに無事到着しました~!
鈴鹿PAまでのトリップメーター上での総走行距離は372.2kmで、この時点でのバッテリー残量は8%、航続可能距離は33km
鈴鹿PAはスマートICが併設された上下線共用型のPA。「ピットインのようにクイックなサービスをスムーズに行なうという思いを込めた」とのことで、「PIT SUZUKA(ピットスズカ)」という愛称が付けられている。ショッピングコーナーではKUSHITANIのレーシングスーツなどが展示されるほか、鈴鹿の特産品に加えて名古屋や伊勢の土産物も販売
鈴鹿らしくモータースポーツにまつわるお菓子や、クルマのデザインが施された子供用の靴下なども販売
鈴鹿PAでのお昼ご飯は焼肉のみさき屋「ぼつ焼丼」(780円)と決めていたが、完売のアナウンス。1日につき200食限定で、だいたい午後の早い時間で完売するとのことなので食べたい方は早めの到着がオススメ
気を取り直して鈴鹿らーめん「啜乱会(すすらんかい)」の「鈴鹿 黒味噌ラーメン」(980円)や、チェッカーフラッグのお皿にホイールを模したご飯が盛り付けられる見た目が楽しい「PIT鈴カレー」(780円)を注文。どれも大満足な味とボリュームでした

残りヒトケタ%で400kmを目指す

 さて、ひとまず目的地に到達したので、鈴鹿PAに併設のスマートICから一般道へ。

 すると、これまでとは様子が変わって、高速道路では走れば走るほどバッテリーが減っていたところ、とたんになかなか減らなくなった。まあ当たり前と言えば当たり前のことが起きていたわけだが、途中、8%から7%に減ったものの、7%のまま延々と走り続けることができた。わずかに下り勾配が続く地形というのもあるが、50km/h出さない程度の車速で、たまに信号があるような市街地がEVは大得意なのだろう。

 残り6%になった途中、航続可能距離が28kmのときにコーションマークが出て、航続可能距離の表示が点滅になった。この時点で走ってきた距離は391km。ところが、そのあとバッテリーが5%に減ったのに航続可能距離は29kmに増えたりと、まだまだ粘る粘る。そして、バッテリーが残り4%のところでついに走行距離400kmを達成! しかも航続可能距離を見ると、まだ21kmも走れると表示されている。

航続可能距離が28kmのときにコーションマークが出た
バッテリー残量が4%のところでついに走行距離400kmを達成!
400km達成時(厳密に言うと401.7km)の平均電費や車速など

 リーフなら何通りもの検索方法があって、そのときどきに充電可能な場所を探すのもラクラク。今回も市街地の方に行けば、いざとなったときにいくらでも充電ポイントがあることが判明したので、どこまで行けるか試してみることに。そして、津の市街地のディーラーまでたどりついた。ここでバッテリーは残り2%、走ってきた距離は412.8kmだ。がんばればまだ走れそうだったが、あまり無理するのはよろしくないということで、ここを最後の目的地としたい。

東京IC近くから津のディーラーである「日産プリンス三重販売 津南店」までの総走行距離は412.8km。これだけの距離を無充電で走行できたのは驚きだった
日産プリンス三重販売 津南店で急速充電させていただいた。充電リッドにコネクターを挿した瞬間にバッテリー残量が1%になった

 その晩、日中に食せなかったぼつ焼きを食べようと鈴鹿市平田にある焼肉のみさき屋へ。さすが地元でも有名な人気店とあって、平日夜にもかかわらず長蛇の列ができていた。鈴鹿PAで販売しているものは「ぼつ焼き丼」だが、こちらにあるのはお肉のみのぼつ焼き。聞いたところでは、素材は同じでもカットの仕方や味付けなどを微妙に変えて丼向けに最適化しているとのこと。さっそく食べてみたところ、これは美味! 深い味わいがありながらとても食べやすいので、どんどんイケてしまう。しかもお値段はひと皿360円(税別)とリーズナブル。これなら人気が出るのも納得だ。

昼間のリベンジということで、夜ご飯をいただきに焼肉のみさき屋(三重県鈴鹿市平田)へ行ってきた!
名物はたれ味の「ぼつ焼」(360円)だが、塩味の「ぼつ塩」(360円)、干すことでうま味が倍増するという「ぼつの一夜干し」(380円)などもある。もちろんタンやボルモン、ミノなどもあるので色々ご賞味あれ(ちなみに筆者はぼつ系すべていたただきました)

 翌日は、ちょうど桜が見ごろを迎えていた鈴鹿界隈をドライブ。鈴鹿スカイラインはなかなか走り応えのあるワインディングロードで、リーフ e+もしっかりスポーティな走りにも応えてくれる。航続距離が伸びただけでなく、加速フィールも力強く伸びやかになって、ワインディングを走っても楽しい。足まわりや電動パワステの味付けも最適化されていて、より意のままに走れるようになったハンドリングも実に気持ちがよい。

 さらには海岸方面にも行ってみた。鈴鹿というとこれまでサーキットしか来たことがなかったが、近くにこんなに景色のよい砂浜があったなんて初めて知った。

 ということで、航続可能距離が伸びて、走りもさらによくなったリーフ e+。高速道路メインでもしっかり400km超を走ることができたのは立派だと思う。もうリーフはロングドライブが苦手だなんて言わせないぞ。

撮影協力:中日本エクシス株式会社、焼肉のみさき屋