試乗インプレッション
航続距離4割増! 570kmの航続距離を手に入れた日産「リーフ e+」
バッテリー容量アップで低重心に
2019年3月1日 05:00
航続距離4割増! 出力とトルクも向上
初代の登場からこれまでに世界で35万台以上を販売してきた実績のある日産自動車「リーフ」だが、当初の目標よりも販売にだいぶ時間がかかってしまった最大の要因が航続距離の短かさにあったのは想像に難くない。いくら充電インフラが整っても、そこはいかんともしがたかった。
40kWhのバッテリーを搭載し、JC08モードで400kmの航続距離を達成した現行リーフの登場もそれなりにインパクトはあった。ところが、それから1年半足らずが経過して追加された「リーフ e+」はそんなものじゃない。62kWhの高性能バッテリーにより、航続距離は既存車に対して実に約4割も増えて、JC08モードなら570km、より厳しいWLTCモードでも458kmと、エンジン駆動のクルマと遜色ないレベルに達した。しかも最高出力は45%向上の160kW、最大トルクは6%向上の340Nmとなる。価格は既存の40kWh版に比べて50~70万円あまり高くなっているが、これまでリーフに興味はあっても航続距離への不安から二の足を踏んでいた人にとっては、まさに首を長くして待っていた1台となろう。
既存車との見た目の違いはほんのわずかで、外観ではフロントに追加されたブルーのリップスポイラーにとどまり、充電口リッドを開けると急速充電ポートに「e+」のロゴが見える。それ以外はまったく同じだが、ディメンションについて厳密に言うとサイズアップしたバッテリーの搭載により地上高を確保するため車高が5mm高くなっており、最低地上高は15mm低くなった。一方、車内の居住スペースはまったく影響を受けておらず、既存車と変わらない。
激変した加速フィール
インテリアもとくに変更はないが、人間の感覚とは意外と敏感なもので、乗り込んでシートに収まると、たった5mmとはいえ車高が上がって既存車よりも微妙に高い位置に座っていることを感じ取れてしまった。
イグニッションをONにすると、航続距離を示すディスプレイに400km台の数字が表示されるのはなかなかインパクトある。そしてバッテリーの容量が増えて母数が大きくなったので、当たり前ながらしばらく走っても残量がなかなか減らない。
走ってみてまず印象的だったのが加速フィールのよさだ。リーフ e+の最大のポイントが大幅な航続距離の向上にあることは言うまでもなく、いずれぜひロングランを試みてみたいところだが、予想したよりもずっと加速フィールも変わっていた。パワーやトルクも大幅に向上しているものの、モーターは既存車と同じものと高をくくっていたら、そうとは思えないほど違って、今までもよかったのがさらによくなっていた。
全体的にトルクフルでスムーズさも増していて、とくに中間加速でのアクセルワークに対するツキのよさにもより磨きがかかり、加速Gが長く維持されて、高速域でももうひと伸びする感じになっていた。吹け上がりのよい高性能エンジンにも通じる爽快なパワーフィールだ。これなら高速道路での合流や追い越しでも、より快適に乗れることに違いない。
エコモードを選択するとその印象はだいぶ控えめになるが、それでも40kWhモデルよりも力強い。普段はエコモードで十分だ。また、心なしか音も静かになったように感じられたのだが、それは車体もリーフ e+専用にいろいろ手当てされていて、その副産物で静粛性も高まっているようだ。
ちなみに、出力をここまで高めなければ、もっとモード燃費の公表値を伸ばすこともできたそうな。しかし、あえて後出ししたリーフ e+にはより高い付加価値を与えたいとの思いから、動力性能のほうもできるだけ高めたと開発関係者も述べているとおりで、大いに納得した次第である。
好印象のステアリングフィール
バッテリーの容量アップにより車両重量は160kgばかり増加したものの、搭載位置がキャビン下部であることから、重心高は既存車よりも低くなっているのは幸い。前後重量配分はわずかにフロントがより重くなったそうだが、それらディメンションに合わせて、足まわりの特性は既存車と同じ方向性となるようにチューニングし直されている。
そのかいもあって、車両重量は増えてもあまりその影響は感じられず、むしろ低重心化により安定性が増したように感じられた。また、コーナリングを試みると、わずかながらロールが小さくなっていることも分かった。ただし、スプリングレートやダンパー減衰力が高められていることには違いなく、その影響か、けっして不快ではないものの、微妙にピッチングは増えたような気もした。
加えて、なかなか好印象だったのがステアリングフィールだ。これまでも十分よかったが、よりしっかり感が増している。また、現行型から導入した電動パワーステアリングの戻り制御の味付けがとてもうまく、よりスムーズな操舵感となり、舵角もピタッと決まって、修正舵が少なくて済むようになっている。
このように、現時点でできることはすべてやったという印象のリーフ e+は、実際にはパフォーマンスが向上し、走り味も上質になったことはよく分かった。あとは肝心の大幅に増加した航続距離が実際にどんなものなのか、いずれぜひロングランを試みて確認してみたいと思う。