アウディ新型「S4」と「A4 2.0 TFSI クワトロ」発表会リポート
「S4はダウンサイジングコンセプトの集大成」

S4とドミニク・ベッシュ社長

2009年3月25日発表




 アウディ ジャパンは3月25日、新型「S4」と、A4シリーズの追加モデル「2.0 TFSI クワトロ」の発表会を、東京 表参道の同社ショールーム「Audi Forum Tokyo」で開催した。

 2008年は9つにもおよぶニューモデルを発売し、不景気でも好調を維持する同社だが、今年もすでに「A6」「S6」「RS6」「S3」を投入。S4と2.0 TFSI クアトロで早くも6モデルとなり、さらに「R8 V10」「A5 カブリオレ」「Q5」が予定されているなど、年初からハイペースで新車攻勢をかける。

S4S4 アバントA4 2.0 TFSI クワトロ

 発表会ではドミニク・ベッシュ社長が、独Audi AGの2008年業績が好調だったことを報告。さらに、S3の発表会でのプレゼンテーションに引き続き、日本の輸入車市場は2009年も厳しい状況にあるが、アウディは落ち込みを最小限にとどめ、輸入車市場でのシェアを拡大していることをアピール。過去最高の販売台数とシェアを目指す姿勢に変わりがないことを強調した。

 製品の概要は商品企画部の青木徹部長が説明したが、アウディがダウンサイジングコンセプトの先駆者であり、S4はダウンサイジングコンセプトの集大成であるとアピールした。

 ダウンサイジングコンセプトとは、エンジンの排気量を縮小しながら、過給器や効率のよいトランスミッションの採用、各部の最適化によって、動力性能を落とさずに環境性能を向上させること。今や世界中の自動車メーカーが追従しているコンセプトと言っても過言ではないだろう。

 アウディは2007年の「A3 スポーツバック」に、2リッターエンジンに代えて1.8リッターターボエンジンを採用することでダウンサイジングの口火を切り、以後、「A4 1.8 TFSI」「A3 スポーツバック 1.4 TFSI」「TTS」「A6 3.0 TFSI」「S3 スポーツバック」と流れを作ってきた。

 今回発表されたS4ではV型8気筒 4.2リッターエンジンをV型6気筒 3リッター+スーパーチャージャーに変更。7速デュアルクラッチAT「Sトロニック」の採用と相まって、410Nmから440Nmへの最大トルクの向上と、7.3km/Lから8.6km/Lへの燃費の改善を両立した。2900~5300rpmという幅広いバンドで最大トルクを発生し、扱いやすくなっていることも強調した。

 A4 2.0 TFSI クワトロについては、旧モデルと同スペックのエンジンながら、最高出力を200PSから211PSへ、最大トルクを280Nmから350Nmに向上させつつ、燃費を10.6km/Lから12km/Lに改善した。さらに、最高出力、最大トルクとも、発生回転数が下がり、さらに扱いやすさを増している。

 ここでは写真を中心に、発表会でのプレゼンテーションと、展示車両をリポートする。両モデルの詳細は関連記事を参照されたい。

S4
グリルは縦の格子を強調したS4専用デザインとなるアルミホイールも専用。ブレーキキャリパーにもS4のロゴが入る
フロントウイングライトとリアライトはLED4本出しのテールパイプとディフューザー
アルミ調のドアミラーはターンシグナルランプ内蔵スーパーチャージャーをVバンク間に備えるV6直噴エンジンは、S4専用チューンが施されるトランクルームの使い勝手は通常のA4と同じ
専用スポーツシートはリアにも装備
インテリアの本革にはトリムカラーのステッチが施されるアウディではおなじみのダイヤルインターフェイス「MMI」を備える
S4 アバント
アバントにはアルミルーフレールが付くため、全高が25mm高くなる
アバントの室内もセダン同様サイドシルプレート
Audi AGは業績、ファイナンス、ブランドイメージともに好調
日本の輸入車市場の落ち込みは厳しいが、アウディは落ち込みを最小限にとどめてシェアを拡大。A4は新型投入で、プレミアムミッドサイズセグメントでのシェアを拡大した
S4とA4は動力性能と環境性能を両立S4はA4のフラッグシップスポーツモデルS4のルーツは1980年代のアウディ クワトロに求められる
S4のポイントS4専用チューンのエンジンの性能曲線。幅広いトルクバンドが目を引くスーパーチャージャーと水冷インタークーラーをVバンク間に置くことで、小型軽量化を図った
アウディはダウンサイジングの先駆者S4はその集大成
縦置き初のデュアルクラッチATを搭載リアの左右輪に最適なトルク配分をするスポーツデファレンシャル
A4 2.0 TFSI。会場に展示されたのは、S-lineパッケージを装着したセダン
直列4気筒 2リッター ターボエンジンを7速デュアルクラッチATと組み合わせる2.0 TFSI クワトロのインテリア
パドルシフト付きのステアリングを備えるDVDカーナビを搭載
車両の設定をMMIで行える

12セグ地デジTVを備える

グローブボックスにETCカードスロットやCDチェンジャーを備える
センターコンソール内のコネクタは携帯電話用2.0 TFSI クワトロの概要2.0 TFSI クワトロは1.8 TFSIと3.2 FSI クワトロの価格差を埋めるモデル
旧型A4 2.0 TFSI クワトロはもとより、競合他社よりも動力性能、環境性能ともに高い
発表会は表参道のAudi Forum Tokyoで開催された1階にはアウディのスポーツモデルが勢揃いしていた
Audi Forum Tokyoのお楽しみの1つはヒストリックカーの展示。12月末まではアウディ フロント 225カブリオレ 1936年式が展示されている。225はホルヒ、アウディ、DKW、ヴァンダラーの4社が合併してアウト・ウニオンとなって初めて作られた車で、アウディのエンブレムとなるフォー・リングスを最初に付けた車両でもある
ヴァンダラー製2.2リッター6気筒エンジンにDKW製4速MTを組み合わせ、前輪を駆動する。エンジンにはヴァンダラーの「W」マークとフォー・リングスが付くコーチワーク(ボディーのデザインと製作)はLECOQによる

東京モーターショー不参加は「グループの意向」
 同社は2月の発表会で東京モーターショーへの参加を表明していたが、3月24日に自工会(日本自動車工業会)が発表した不参加社リストには、ほかの欧米メーカーとともに名を連ねた。

 ベッシュ社長によれば不参加は、アウディが属するフォルクスワーゲン・グループの意向に沿ったもので、代わりにショールームでのイベントなどを企画し、ブランドを広くアピールする機会を作るとしている。

 やはり年初に参加を表明していたフォルクスワーゲングループジャパンは不参加の理由を「経済の急激な悪化による引き締め策」としており、「今回のような激変では、締めるところは締めざるをえない。日本市場に失望したわけではない。今年もたくさんのニューモデルを投入するし、日本市場には変わらず期待している」と述べている。

 フォルクスワーゲングループジャパンによれば、不参加はここ数日のうちにドイツ本社で決定されたことで、「日本法人としてはたいへん残念。代替イベントなどはまだ具体的には決まっていない」としている。

(編集部:田中真一郎)
2009年 3月 26日