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スバル、“スバルのフルモデルチェンジ”第1弾製品となる新型「インプレッサ」発表会

「インプレッサはスバルというメーカーの普遍的な価値を象徴する存在」と吉永社長

2016年10月13日 開催

 スバル(富士重工業)は10月13日、新型「インプレッサ」の価格を発表し、10月25日から発売すると発表した。5代目となるインプレッサも従来と同様に5ドアハッチバックの「インプレッサ スポーツ」と4ドアセダンの「インプレッサ G4」の2種類をボディラインアップとして用意。10月25日から2.0リッターエンジン搭載車をリリースし、1.6リッターエンジン搭載車は2016年末の発売予定となっている。2.0リッターエンジン搭載車のグレード体系や価格はスポーツとG4で変わらず、それぞれ価格は192万2400円~259万2000円。そのほか、バリエーションや価格表、装備内容などは関連記事を参照していただきたい。

インプレッサ スポーツ
フロントウィンドー内側に「アイサイト(ver.3)」用のカラーステレオカメラを装着
2.0i-S EyeSightは18インチの切削光輝アルミホイールに225/40 R18タイヤを装着
インプレッサ G4

「新型インプレッサは“スバルのフルモデルチェンジ”とも言えるクルマ」と吉永社長

東京 恵比寿のエビススバルビル 3階にあるイベントホール「EBiS 303」で発表会を実施
富士重工業株式会社 代表取締役社長 吉永泰之氏

 同日に東京 恵比寿のエビススバルビル 3階にあるイベントホール「EBiS 303」で行なわれた発表会では、まず富士重工業 代表取締役社長の吉永泰之氏が登壇。

 吉永氏は画面に表示されたスライドの中央にある「安心と愉しさ」ということばを取り上げ、このキーワードが2011年5月に発表した新中期経営ビジョン「際立とう 2020」で打ち出したブランド戦略であり、富士重工業という会社が飛行機会社から始まっていることを含め、安心や安全、愉しさをユーザーに提供することをDNAに持っていると解説。この「安心と愉しさ」を提供するべくさまざまな活動に取り組んでおり、これらを総括して「スバルブランドを磨く」と表現していると語り、今年度は会社として初めて世界全体での年間販売台数で100万台を超えることを計画。この計画は順調に推移しているとした。

 この100万台販売に向けた大きな布石となる新型インプレッサについて吉永氏は、「『安心と愉しさ』を改革的に進化させ、単に1つのクルマのフルモデルチェンジに止まらない、敢えて言うなら“スバルのフルモデルチェンジ”とも言えるクルマ」と表現。ユーザーの心のなかで際立つブランドになるための計画を商品の面で具現化した第1弾製品であり、新型インプレッサが持つ魅力について「世界トップクラスの総合安全性能」「クラスを超えた感動質感」の2点から紹介した。

 吉永氏は総合安全性能は「安心と愉しさ」を提供するためのベースと語り、構成要素となる「0次安全」「予防安全」「走行安全」「衝突安全」の4点のなかで、「予防安全」の技術となる先進安全技術「アイサイト(ver.3)」と、日本車として初めて「衝突安全」用の「歩行者保護エアバッグ」を全車に標準装備したことをアピール。アイサイトについては8年前となる2008年からすでに市場投入しており、アイサイト(ver.2)のデータとして車両同士の追突事故が発生する確率を84%減少させたというデータを紹介し、「事故の低減に対して大いに貢献しております」とコメントした。

 一方で、歩行者が急に飛び出してくるようなアイサイトでは対応しきれない交通事故の対策となる歩行者保護エアバッグについては、日本では諸外国と比較して歩行者や自転車の死亡件数が圧倒的に多いことに鑑み、新型インプレッサでは全車標準装備とすることを決断したと語った。吉永氏は「スバルは今後も、事故をなくすこと、命を守ることに全力で取り組んでまいります」とした。

「際立とう 2020」のブランド戦略として打ち出されたキーワードが「安心と愉しさ」
新型インプレッサでは「世界トップクラスの総合安全性能」を目指した
アイサイト(ver.2)は搭載車の追突事故を84%低減する大きな効果を発揮している
日本では歩行者と自転車の死亡者数が多いことを受け、全車での歩行者保護エアバッグ搭載が決定されたとのこと

 クラスを超えた感動質感では、「ドライバーだけでなく、同乗者も触れた瞬間に“これだ!”と直感的に感じる質感の高さを徹底的に追求してまいりました」と語り、この技術的根拠として新型インプレッサから導入がスタートする次世代プラットフォーム「SUBARU GLOBAL PLATFORM(スバルグローバルプラットフォーム:SGP)」と、デザインフィロソフィの「DYNAMIC×SOLID(ダイナミック ソリッド)」の2つであると述べた。

 このほかに吉永氏は「インプレッサはスバルのエントリーモデルです。エントリーモデルというのはスバルのスタンダードであり、つまりスバルというメーカーの普遍的な価値を象徴する存在であると捉えています。だからこそ、このクラスのクルマからより多くの人に『安心と愉しさ』をご提供したい。そんな思いで作りました。クラスとか、国産車だとか輸入車だとか、そんな概念を超越してより多くの人に愛していただける『愛でつくるクルマ』インプレッサを自信を持って世に送り出します」とアピール。

 また、9月1日から開始した先行予約が10月12日までの1カ月強で約6000台(5883台)に上り、この数字が予定の2倍以上であると明かして「私どもスバルに対する高い期待の表われと受け止めています。まだ展示車両も限られていて試乗もできないタイミングであるにも関わらず、これだけ多くの先行予約をいただき本当に嬉しく感じております。今後ますます多く、我々作り手の愛と選び手であるお客さまの愛の共鳴を生んでいけると強い手応えを感じております」とコメントした。

「見て」「触れて」「走り出して」それぞれの瞬間に質感の高さを感じられるよう追求したという
インプレッサは多彩なモデルを持つスバルのスタンダードとなるクルマ
開発のキーワードは「愛でつくるクルマ」
正式な価格発表の前にも関わらず、約6000台分の先行予約が申し込まれた

「プロトタイプ車を運転したときの感動は今でも忘れられない」と阿部主査

富士重工業株式会社 スバル商品企画本部 プロジェクト ジェネラルマネージャー 阿部一博氏

 商品解説は新型インプレッサの開発主査を務めた阿部一博氏が担当。阿部氏は今回で5代目となるインプレッサの歴史をふり返り、1992年に登場した初代モデルは「スポーツワゴン」という新しいカテゴリーを創出。軽量・コンパクトなボディにハイパワーなエンジンを搭載して高性能なサスペンションと組み合わせたほか、WRC(世界ラリー選手権)での3連覇といった活躍からモータースポーツを連想させる“走りのモデル”としてのイメージを確立した。

 そこから2007年にデビューした3代目モデルではスポーツワゴンから5ドアハッチバックに生まれ変わり、「新快適スタイル」をキーワードにしたグローバルコンパクトモデルに進化。4代目でも走行性能や安全性能を向上させ、日常生活からアクティブな趣味の世界まで多彩なシーンでの使い勝手を新しい価値として提案。より幅広いユーザーから支持を集めて販売台数を大きく伸ばす結果となった。

インプレッサはWRCでの活躍で一挙に知名度を高め、5ドアハッチバックが主力になった3代目からはグローバルコンパクトとして販売台数を伸ばしていった

 阿部氏は開発の担当者として人気高まりに喜びつつも、多くのユーザーと接するなかで満足してもらっている部分だけでなく、もう少しよくしてほしいと期待されている点があることを体感していたという。そこで阿部氏は新型インプレッサの開発にあたり「そんなユーザーの期待にもっと応えたい、もっと多くの人にインプレッサと過ごす、安心で楽しい毎日を感じてもらいたい」という強い思いを持つようになったと語る。

SGPの名前には「世界のユーザーに最高の安心と愉しさをお届けしたい」という意味合いも込められていると阿部氏は解説

 一方で新たな新中期経営ビジョンでは「お客さまの心のなかで『安心と愉しさ』で際立つこと」が掲げられており、これを実現するためにはスバル車が持つ「安心と愉しさ」を、地道にではなく改革的に進化させることが必要。誰もがはっきりと大きな魅力として感じるレベルにたどり着くことが求められ、これにはプラットフォームを一新する決断につながったという。新たに開発するプラットフォームには「日本だけでなく世界のユーザーに最高の安心と愉しさをお届けしたい」という思いが込められ、これが「グローバルプラットフォーム」という言葉になってSGPに至っていると明かされた。

 具体的な技術では、吉永氏からも語られた総合安全性能の「0次安全」の面で、前身である中島飛行機の時代から受け継いだDNAである「人を中心としたこだわり」で視界性能を追求しているほか、ステアリング操作と連動するヘッドライト、アイサイトのカメラを活用したハイビームアシストなどを採用して良好な視界を実現。さらにロングドライブでも疲れにくいシート、見やすく操作しやすいヒューマンマシンインターフェイスなどで「確かな安全の第一歩」をユーザーに提供するという。

 また阿部氏は、「誰でも、どんなシーンでも、いざというときに危険を回避できる、安全に走ることができるというのがスバルが目指す『走行安全』です」と語り、1972年のレオーネから始まり、サファリラリーやWRCなどのレースシーンでも磨き上げられてきたスバルの水平対向エンジン+シンメトリカルAWDが生み出す走行安定性は、スバル車の象徴的な要素であると紹介。新型インプレッサではSGPの導入に加え、VDC(横滑り防止装置)のブレーキ制御を応用してコーナーリング中の旋回性能を高める「アクティブ・トルク・ベクタリング」を採用したことで、世界でもトップクラスとなる危険回避性能を実現して、誰でも、どんなシーンでも安全に走行できるようにしていると解説した。

総合安全性能を構成する4つの安全要素
運転席からの見晴らしのよさに加え、見やすく操作しやすいヒューマンマシンインターフェイスも「0次安全」の大切な性能となる
走行シーンを問わず、ドライバーが狙いどおりに操れることがスバル車が目指す「走行安全」となる
イン側のタイヤにブレーキを効かせ、コーナーリング中の旋回性能を高める「アクティブ・トルク・ベクタリング」を2.0i-S EyeSightに標準装備
アイサイト(ver.3)は全車に標準装備、アイサイトをアシストする「アドバンスドセイフティパッケージ」は全車にオプション設定となる
「スバル 360」から続けられてきたクラッシュテストでスバル車の衝突安全性能は磨き上げられてきており、新型インプレッサでは全車に歩行者保護エアバッグを搭載

 クラスを超えた感動質感では内外装のデザインにこだわって見て、触って感じる質感を高め、人の感性を1000分の1秒単位で数値化する測定装置を開発して動的質感を磨き上げており、加速の気持ちよさと環境対応力を両立させた新開発2.0リッター水平対向自然吸気直噴エンジンとリニアトロニックCVTを搭載。新世代プラットフォームのSGPにこれまで培ってきたすべての技術やノウハウと合わせて投入していると阿部氏は解説。2015年秋に「狙いどおりの性能を達成した」と言われたプロトタイプ車を運転したとき、思わず阿部氏は「うわ! なにこれ、すごいね! ありがとう」と助手席で同乗した開発担当者に声をかけたと明かし、そのときに体験した感動は今でも忘れられないと語った。

新型インプレッサはスバルの新デザインフィロソフィー「DYNAMIC×SOLID」を量産モデルで初めて全面採用したモデル、阿部氏は「とくに内装デザインに自信がある」と語る
静かなキャビンによる快適性と思いどおりに操れる愉しさで走りの質感を追求
新開発の「FB20」型 水平対向4気筒DOHC 2.0リッター自然吸気エンジンをリニアトロニックと組み合わせて搭載
スペック上の全幅は35mm拡大しているが、ドアミラーまで含めた最大幅、最小回転半径は従来どおりとしており、使い勝手はこれまでどおりであると阿部氏はアピール
新型インプレッサが築き上げた総合安全性能と質感が、次世代スバルのスタンダードとして位置付けられた
エビススバルビル 1階のショールーム「スバルスタースクエア」では新型インプレッサの車両展示に加え、SGPのカットモデルやパワートレーンなどの展示が行なわれた