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レクサス、2017年秋以降に発売予定の新型「LS」日本初公開

「Lexus Safety System+Aは“自動運転に繋がる高度運転支援”」と伊勢氏

2017年6月26日 公開

2017年秋以降に発売されるレクサスの新型フラグシップセダン「LS」。車両の前に立つのは、新型LSのチーフエンジニアを務めた旭利夫氏(左)と、4月1日からレクサスインターナショナル Presidentに就任した澤良宏氏(右)

 レクサス(トヨタ自動車)は6月26日、1月に米デトロイトで開催された「デトロイトショー」で世界初公開されたフラグシップセダン「LS」を日本で初披露し、販売の開始を「2017年秋以降」と発表。また、この発表に合わせ、「LS500」「LS500h」の主要諸元(参考値)も明らかにしている。

グレードLS500LS500h
ボディサイズ(全長×全幅×全高)5,235×1,900×1,450mm
ホイールベース3,125mm
エンジン未発表2GR-FXS
排気量3,445cc3,456cc
最高出力310kW/5,200-6,000rpm220kW
最大トルク600Nm/1,600-4,800rpm350kW
システム最高出力――264kW
トランスミッション10速ATマルチステージハイブリッドシステム
タイヤサイズ20インチ、または19インチ
新型「LS500h」
新型「LS500h」
新型「LS500h」
「LS500h“F SPORT”」
“F SPORT”モデル(左)ではブラックアウトされたフロントグリルでスポーティさを強調
シャープなL型のクリアランスランプはウインカーとしても機能。イエローのラインが流れるように発光する
“F SPORT”モデルのタイヤ&ホイール
「LS500h」
LS500hのマルチステージハイブリッドシステムは220kW/350Nmを発生
Lexus Safety System+Aではステレオカメラを採用した
リアコンビネーションランプは「LC」と共通性のあるデザイン
LS500hのタイヤ&ホイール
奥行きのあるトランク。フロア下には補機類用のバッテリーとちょっとした収納スペースを設置

「Lexus Safety System+A」開発は首都高でも走り込みを実施

レクサスインターナショナル チーフエンジニア 旭利夫氏

 発表会では、新型LSの開発を担当したレクサスインターナショナル チーフエンジニアの旭利夫氏が登壇。

 旭氏はプレゼンテーションの冒頭で「入社したきっかけは、初代LSへの憧れからでした」と切り出し、そんな旭氏は3代目LSで「スマートキー」の開発を手がけ、4代目LSでは車両企画の立場から先進技術分野の開発を担当してきたと説明。そこから「ES」のチーフエンジニアを経て新型LSのチーフエンジニアに抜擢されたという。また、旭氏は「レクサスのフラグシップを造る。そこには1台の高級車を生み出すという以上の意味が込められていると思っています」と語り、数多くの仲間と妥協なきクルマ造りでLS開発に向き合ってきたという。

 また、新型LSの開発にあたっては、トヨタ自動車の代表取締役社長であり、“マスタードライバー”も務めている豊田章男氏から「初代LSの衝撃を超えるクルマを」とのメッセージが投げかけられたとのことで、旭氏は「お客さまに初代LSを超える感動を提供するクルマとはなんだろう」と大いに悩んだという。

 そこで旭氏は、高級車の概念を覆した初代LSを超え、さらに“よりエモーショナルで、より先験的はブランド”として、お客さまに驚きと感動を提供するレクサスというブランドを、LSはフラグシップモデルとして牽引していかなければならないと定義。

 そのために、見た瞬間に引き込まれるエモーショナルで独創的なデザイン、ステアリングをずっと握っていたくなるような走りの気持ちよさ、初代からDNAとして受け継ぐ「二律双生」「人間中心」「おもてなし」を徹底的に追求しながら、レクサスならではの“人に寄り添う先進技術”で時代をリードして行くといったテーマを持って開発を進めてきたと旭氏は語っている。

新型LSの外観デザインについて旭氏は「ブランドの象徴として、なにかに似ていることは絶対に許されません。それでいて、風格を兼ね備えていることが求められました。セダンやクーペといったカテゴリーを超えた、唯一無二の迫力ある存在感を追求しました」と解説
新開発のV型6気筒の3.5リッターツインターボエンジンについて、「高速燃焼、高効率ターボなどの新技術に加え、10速のダイレクトシフトATと組み合わせることにより、V8エンジンを凌ぐ気持ちいい加速、ターボエンジンとしては世界トップレベルの熱効率がもたらす優れた環境性能を実現しています」と旭氏は解説
3月に発売した「LC」にも搭載されているV型6気筒の3.5リッターのマルチステージハイブリッドシステムを、旭氏は「より穏やかで滑らかな加速フィーリングになるようチューニングを行ない、LSに求められるエレガントさを実現いたしました」と表現

 さらに旭氏は、「歴代のLSは、時代をリードする安全技術を常に採用してきました」と語り、新型LSにもこれまで使われてきた「Lexus Safety System+」に、先進的な予防安全技術と高度運転支援技術をパッケージ化して追加した「Lexus Safety System+A」を開発して搭載することを紹介。このLexus Safety System+Aでは、世界初となる「アクティブ操舵回避支援」を持つ「プリクラッシュセーフティ」、未来の自動運転に繋がる高度運転支援技術「Lexus CoDrive」を採用。米国や欧州に加え、日本では世界で最も複雑と言われる首都高速道路でも走り込みを行なって開発しているという。

 また、人とクルマが頻繁に行き交う駐車場での接触事故を防ぐ予防安全技術「パーキングサポートブレーキ」の開発にも力を入れて開発に取り組んだと説明。各技術について動画を用いて解説した。

アクティブ操舵回避支援
世界初の装備である「アクティブ操舵回避支援」は、車両前方に障害物があった場合、従来までの「プリクラッシュセーフティ」で実施してきたドライバーに対する警報や自動的なブレーキ作動による回避支援に加え、オープンスペースに自動的に操舵操作を実施してより効果的に回避支援を行なう
従来どおりのプリクラッシュセーフティとアクティブ操舵回避支援の比較
アクティブ操舵回避支援では、歩行者だけでなく、ガードレールのように連続した構造物に対しても操舵による回避支援が行なえる
レーントレーシングアシスト
新技術の「レーントレーシングアシスト」では、カメラでの白線認識と前方を走るクルマの走行軌跡を併用。これにより、渋滞時などで白線が認識できないときでも操舵支援が可能になる。さらに高速道路の分岐などではカーナビ情報も活用。進行方向のカーブの曲率と現在の車速から、このままでは安全ではないとシステムが判断した場合に警告を行ない、減速操作が行なわれない場合は自動的に減速する
レーンチェンジアシスト
レーントレーシングアシストの作動中にドライバーがウインカー操作を行なうと、「Lexus CoDrive」のシステムがウインカーが点滅している方向のレーンをチェック。後続車などが追い抜いてこないようなタイミングで操舵支援が行なわれて車線変更を実施。車線変更後にはウインカーが自動消灯する仕組みとなっている
パーキングサポートブレーキ
駐車場での安全性を高めることを目的としたパーキングサポートブレーキでは、既存の「インテリジェントクリアランスソナー」「リヤクロストラフィックアラート」に加え、世界初の技術である「対後方歩行者サポートブレーキ」を採用。後退中にリアカメラで歩行者などを発見した場合に警報の作動とブレーキによる減速を行なって危険回避をアシストする

「Lexus Safety System+A」の新技術を2018年から全モデルに展開

トヨタ自動車株式会社 専務役員 先進技術開発カンパニー President/Chief Safety Technology Officer 伊勢清貴氏

 また、トヨタ車の安全面での責任者を務めているトヨタ自動車 専務役員 先進技術開発カンパニー President/Chief Safety Technology Officerの伊勢清貴氏も登壇。トヨタにおける安全に対する考え方をはじめ、先進安全技術や自動運転について解説した。

 このなかで伊勢氏は、「トヨタには『自動車を通して人々に笑顔をお届けしたい』という創業以来の思いがあります。クルマとは本来、わくわくドキドキしながら乗る楽しいものですが、一方で交通事故やCO2排出という2つの課題を持っています」と語り、CO2排出に関しては、2015年10月に発表した「トヨタ環境チャレンジ2050」でロードマップを示していることを紹介。

 もう1つの課題である交通事故などの安全面については、初期の衝突安全技術にはじまり、現在では自動ブレーキに代表される予防安全技術も普及して、その先にある自動運転についても注目を集めていると解説。自動運転は安全性が向上するほか、運転ができない人に自由な移動を提供したり、渋滞をなくして環境負荷を低減したり、運送業界のドライバー不足の解消など多方面で社会的課題の解決が期待されているとしつつ、伊勢氏は「私たちは安全が最優先であると考えています」との立場を明示。交通安全のためには技術開発に止まらず、ドライバーや歩行者に対する啓発活動、交通環境の整備も欠かせない要素であると説明し、究極の目標として「交通事故死傷者ゼロ」を目指していると述べた。

 このためにトヨタでは、「先進技術」と「普及技術」の2つを両輪として開発を進めていると伊勢氏は語り、現状の普及技術である「Toyota Safety Sense」「Lexus Safety System+」の各技術について解説。さらに同日に発表した「Lexus Safety System+A」で開発した新しい先進技術の数々を普及技術として展開し、2018年からトヨタ車とレクサス車の全モデルに展開させると述べ、「安全技術は普及させることが重要」との考え具現化すると語った。

 このほかに将来展望では、新たに市場投入する新型LSを「世界で最も安全なクルマを目指した」とする一方、伊勢氏は「私たちはこのLSを、敢えて“自動運転車”ではなく“将来の自動運転に繋がる高度運転支援を搭載したクルマ”と定義したいと思います。近年は自動運転に関心が高まっていますが、自動運転の定義はメーカー間で幅がある状態になっています。“自動運転”という言葉は『ドライバーがなにもしなくてもいい』という誤解や過信を招かないよう、注意深く扱う必要があると考えています」とコメント。2015年10月に発表した「Mobility Teammate Concept」の考え方を解説し、自動車専用道路での自動運転である「Highway Teammate」を2020年ごろに商品化。さらに2020年代前半には一般道での自動運転である「Urban Teammate」の商品化も目指しているとした。

トヨタにおける安全技術開発では、「先進技術」と「普及技術」の2つを両輪として開発を進めている
Lexus Safety System+Aでは従来技術をさらに進化させた
Lexus Safety System+Aで開発した技術を、2018年からトヨタ&レクサスの全車に展開していくという
LS500h“F SPORT”のインテリア
レッドとグレーのコンビネーションシートを採用
LS500hのインテリア
メーターパネルはデジタル表示となる
ブラウンのレザーシートやドアトリムを採用
白いレザーシート&ドアトリムを装着する車両も展示
リアシートのアームレストにタッチパネルディスプレイを備えたアームレストを用意している