インプレッション

レクサス「LS500h」(車両型式:DAA-GVF50-AEVQH/公道試乗)

前席&後席で感じた美点と課題

LS500hに試乗

 我々テスターが新型車を試乗する場所やタイミング、そして回数は極めて限定的だ。新型車の発表・発売からしばらく時間が経過した後であれば、自動車メーカーに用意いただく取材用の広報車両によって撮影や試乗の時間がとれるのだが、発売直後となると潤沢な時間はとれず、撮影と試乗含めて1時間弱の取材でレポート執筆となることも少なくない。それだけに、現場ではその車種を担当された方々への取材が大切になる。

 そうしたなか、幸運にも筆者は新型「LS」に触れる機会を複数回いただいてきた。このLSでは「GA-L」と命名された低重心の新型プラットフォームが織りなす「走行性能」とともに、先進安全技術群である「Lexus Safety System +A」や高度運転支援技術である「Lexus Co Drive」に視線が集まっている。先進安全技術や高度運転支援技術については、過去に詳細なレポートがあるのでそちらで確認いただくとして、今回は公道における走行性能について報告したい。

 LSのパワートレーンは現時点では2種類の用意がある。V型6気筒3.5リッターエンジン+マルチステージハイブリッドシステムを搭載する「500h」と、V型6気筒3.5リッターツインターボエンジンを搭載する「500」で、それぞれに後輪駆動であるFRと4輪駆動であるAWDをラインアップする。500hのトランスミッションはトヨタ/レクサスのハイブリッドモデルが採用するTHS-IIに4速分の有段変速ギヤを組み合わせ、事実上10段分の変速制御を行なう。マルチステージハイブリッドシステムと名付けられたこの方式は、2017年3月16日に発売されたレクサス「LC500h」と同一だ。

V型6気筒3.5リッターエンジンにマルチステージハイブリッドトランスミッションを組み合わせる「LS500h“F SPORT”」(ホワイトノーヴァガラスフレーク)。価格は1310万円。クーペモデル「LC」から採用された「GA-Lプラットフォーム」を用い、2WD(FR)のボディサイズは5235×1900×1450mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは3125mm
同ハイブリッド仕様の「LS500h“EXECUTIVE”」(マンガンラスター)。価格は1640万円

 一方、新開発のツインターボのトランスミッションには同じく新開発となるトルクコンバーター方式の10速ATを採用した。このうち、今回のレポートでは長文になることからハイブリッドモデルである500hに絞っている。なお、ターボモデルの500については次回のレポートで紹介する。

 それにしても、今回の試乗内容はバリエーションに富んでいて充実していた。通常の試乗なら限られた時間的/場所的な条件があるため、公道における装備の紹介や使い勝手を中心としたロードインプレッションが主となるが、このLSでは運転席から助手席、そしてショーファードリブンならぬ後席でのロードインプレッションを取ることができた。貴重な取材機会をいただいたのにもかかわらず、舌足らずな部分がたくさんある点はご容赦いただきたい。

今回の試乗会では、新型LSに搭載される予防安全パッケージ「Lexus Safety System+A」の機能を体験できるコーナーも用意された。写真はブレーキ制御だけで衝突回避が困難で、かつ操舵制御によって回避ができるとシステムが判断した場合に自動でステアリングを制御するアクティブ操舵回避支援の様子。自車速度60km/hからの自動ブレーキ制御とともに、自動ステアリングによって障害物を回避するのを体感できた。車線をはみ出さない、つまり対向車線に出ないよう回避している
こちらは車両後方の歩行者にも世界初対応した「パーキングサポートブレーキ」の体感コーナー。超音波ソナーで障害物などを検知し、衝突の可能性がある場合にエンジン出力を絞りつつブレーキを掛けるというもの。まずは検知したことをナビゲーション画面に表示し、警告ブザーで注意喚起。そのまま後退するとブレーキ制御を行なって衝突回避または被害を軽減する

マルチステージハイブリッドシステムが持つ課題

 まずは「500h“F SPORT”」の助手席に座り、同乗者となった場合のロードインプレッションに徹する。コースは都内中心部から都市高速、そして東名高速道路上のとあるPA(パーキングエリア)に至るおよそ100kmの区間だ。こうしてLSの本格的な公道試乗は助手席が初となったのだが、それだけに普段の試乗では全てに確認が及ばないシートの調整機構のうち、いくつかを試すことができた。

 ご存知のように、シート座面の高さ調整やバックレストの倒し具合によって乗り味は大きく変わる。これは運転席でも同じだが、助手席ではステアリングなどつかまるところがないため、クルマの振動や動きがストレートに身体へと伝わってくる。試乗したFスポーツのフロントシート(運転席と助手席)の調整機構は、なんと28方向に及ぶ。シート本体(座面/バックレスト/ヘッドレストレイントなど)はモーター駆動としつつ、腰や肩、下半身の保持には新たに空気袋である「エアブラダー」による力を利用するのだが、これにより身体のあらゆる部分を点ではなく面で支えられるため、非常に心地よい。

都内中心部から都市高速、東名高速と走行

 分かりやすく表現すれば、それは北欧家具のように包まれる感覚なのだが、単にリラックスできるだけでなく、走行時に身体に掛かる力を面全体で受け止めつつ、シート表皮で無用に滑らないような設計(例:肩甲骨や骨盤後方を部分的にシートと圧着させる)がなされているため、上半身から下半身が適度にホールドされるのだ。都市高速の連続するカーブやその途中で遭遇するジョイントでは、20インチの大径ランフラットタイヤが発する“ダダン!”という通過音が耳につくものの、シートを通じて伝わる身体へのショックは極わずか。また、この適度に保持されるシート形状によって身体の芯が安定するため、頭のふらつきも激減。よって、助手席の同乗者からは「上手な運転ね!」との声が挙がるはずだ。

 シート表皮にしても、このクラスのクルマが採用する本革シートではシートベンチレーション機能が評価を大きく左右する。もっとも、この機能が本領を発揮するのは主にサマーシーズンだ。しかしながら、筆者が所有する車両にもシートベンチレーションがあり、興味津々であっため季節外れを承知の上でスイッチを入れた。結論からして、LSのこの機構は実に効果的であることが分かった。難しい技術的な詳細は別機会に譲るが、LSのシートベンチレーションでは一般的なペルチェ素子を使った方式(電流の極性に応じて加熱と冷却を行なう)から、車内の空気を吸い込み冷気を身体に伝える方式へと変更している。そのため冷気の風量が豊かで、清涼感そのものも従来方式よりも長い。

LS500h“EXECUTIVE”のインテリア。同グレードでは最適なサポート位置をきめ細かく設定できる28ウェイ調整式フロントパワーシートを標準装備するとともに、リアシートでは専用ヒーターを搭載。左後席にはオットマン付きの22ウェイ調整式リアパワーシートも設定する

 PAで運転席へと移り、今度はステアリングを握る。パワートレーンは慣れ親しんだTHS-IIなのだが、マルチステージとして有段ギヤがあるため加速にメリハリがあっていい。とくに本線へと合流する際の40~100km/hあたりまでの領域では、有段10速ATを採用するツインターボモデルよりもしっかりとした変速感が味わえる。

 誤解ないように付け加えると、この500hに変速ショックがあるわけではない。エンジンの回転が瞬時に落ちて上の段へとバトンをタッチし、継ぎ目なく加速を行なうのだが、そもそもエンジン透過音の演出が気持ちよく、さらに10段あるため1段分の割り当て速度域が細かく狭い。そのため“クォーン”とやや甲高い音を変速ごとに奏でる3.5リッターエンジンの存在を加速中はいつでも意識する。ボディサイズの大きなLSだが、この新しいパワートレーンの躍動感によってミディアムスポーツカーのように感じられるシーンがあるのは大きな発見だった。

 前走車に追従しながら走るACCを試す前に、80~100km/hの間で前走車に対して自らのアクセル操作で追従走行を行なってみた。エンジン(299PS)とモーター(180PS)を融合したシステム出力は359PSだ。こちらもすでに知られているが、THS-IIの場合は複雑なリダクションギヤを介して駆動力を生み出しているため、エンジンとモーターの力を単純に足した数値がシステム出力とはならない。その代わり、エンジン/モーターともにアクセル開度に応じてもっとも力強くなる領域へと瞬時に落とし込むことができるし、体感加速値で重要となるトルクの生み出し方も人の感性に合わせやすい。

LS500hに搭載されるV型6気筒3.5リッター「8GR-FXS」エンジンは、最高出力220kW(299PS)/6600rpm、最大トルク356Nm(36.3kgm)/5100rpmを発生。これに最高出力132kW(180PS)、最大トルク300Nm(30.6kgm)を発生する「2NM」モーターを組み合わせ、今回試乗した“EXECUTIVE”と“F SPORT"(いずれも2WD)ではJC08モード燃費15.6km/Lをマーク

 こうしたTHS-IIそのものの美点はLSにも受け継がれていたのだが、前述の追従走行時にはアクセル開度とエンジン回転のギャップが大きいように感じられる場面が多かった。具体的にはこうだ。平坦路において巡航速度域に入った(≒アクセル開度が一定で車両負荷も低い)と判断されると、内燃機関であるエンジンは可能な限り回転を停止するのだが、そこから前走車の加速に併せて日常領域で多用する0.1Gにも満たない加速(≒ジンワリとした加速)を試みると、バッテリーのSOC(残容量)が80%程度と十分な状態であっても想像よりも2呼吸ほど前にエンジンが再始動する。

 また、その際のエンジン回転数が高め(状況によって大きく変化するが、こうした巡航速度ではポンと2500rpm以上になることも)だから、余計にギャップを感じやすい。ちなみに新型LSが採用するマルチステージハイブリッドシステムでは、エンジンを停止させたEV走行可能速度が従来型である「LS 600h」の約70km/hから140km/h(AWDはギヤ比の関係で129km/h)へと大幅に向上している。ほどなくして高速道路を降り、一般道では登り勾配を主に走行したのだが、遭遇した8%以上の勾配路となると、やはりアクセルONでの高めのエンジン回転数が気になる。加えて、エンジンが目覚めた際には車体の個体差が原因なのか、運転席の足下やステアリングに微振動(100Hzあたりか)が確認できた。

 さて、これはどういうことなのか? 先にマルチステージハイブリッドシステムを採用したレクサス LCでもそうだが、10段分の変速制御を実現したプラスの効果はとても大きい。なかでもアクセルペダルの踏み込み量が大きくなる(約50%以上)となる領域での体感加速値では、車体との一体感が劇的に向上。ここではエンジン回転数とリンクする安定した躍度(時間あたりの加速度変化)もその好印象を後押しする。これはエンジン回転が先行してしまうラバーバンドフィール(加速感をゴムに例えた比喩)が残る従来のハイブリッドシステムであるTHS-IIでは実現しなかったことだ。ここは多くのドライバーから評価される部分だろう。

 半面、EV走行可能速度の向上や優れた駆動力の伝達特性、さらには徹底して高められた静粛性によってマルチステージハイブリッドシステムが持つ課題が見え隠れしたように感じられた。車両負荷やアクセルペダルの踏み込み量に応じたエンジン再始動ポイントでのエンジン回転数が高いからだ。体感的にはSOCの減少に応じて“ポン”と高めのエンジン回転数でインターセプトするシリーズハイブリッド的要素が強くなったと表現するのが分かりやすいか……。シリーズ/パラレル方式の両利点を併せ持つTHS-IIに有段ギヤを組み合わせ10段分と、細分化された変速制御が行なえるマルチステージ化だが、それによりエンジン再始動時の存在感が際立っている。これは同じ排気量である3.5リッター+THS-IIのレクサス「RX」はおろか、同じマルチステージ方式のLCよりも目立つのは、やはり静粛性が極めて高いLSならではの事象なのだろう。もっとも、この1件だけで購入を断念せざるものではないが、これまでの方式との違いとしてここに記した。

熟成には時間が必要

 後席では思いがけない発見ばかりだ! 「500h EXECUTIVE」の左後席(助手席側)には、22方向の調整機構を内蔵したパワーシートが備わっていて、前席と同様にモーター/エアブラダーの両方で各部を動かし、快適な移動空間を実現(マッサージ機能には家庭用マッサージチェアの制御も採用)する。また、従来型のLSと同様に、ショーファーモードならぬ「リラックスモード」として座面が前にせり出し、同時にバックレストが大きく倒れる機構があるのだが、助手席が前方へと大きくスライドすることで左後席の足下スペースはメルセデス・ベンツ「Sクラス」(ロングボディ)並みの前後長1022mmを確保する。加えて、バックレストにしても従来型から3度増えて48度も倒れる。数値にすればわずか3度の増加だが、実際座ってみると座面形状の見直しや電動オットマン(足置き)との兼ね合いもあり、従来型以上にリラックスできた。一方、こうした状況では万が一の衝突や追突時に、乗員がシートベルトの下をくくりぬけてしまうサブマリン現象を抑制するため、従来型と同じくシート座面が強い衝撃を検知するとポップアップする機構を継続採用する。

EXECUTIVEの後席アームレストには「リヤマルチオペレ-ションパネル」が内蔵され、オーディオやエアコン、リラクゼーション、シェードなどの設定が行なえる

 ただ、このリラックスモードはドライバーからすると注意すべき点がある。それは運転中に必要な左側方の視界についてだ。リラックスモードでは助手席を前方へスライドさせることは述べたが、同時にバックレストを前倒しするため、ドライバーからの左側方視界はその助手席のバックレストによって部分的に遮られてしまう。とはいえ、ドアミラーにはまったくかからずクリアに見えるし、そもそもこうしたシートモードにおける左側方の有効視界に関した規定もないという(新型LS開発者談)のだから、実用上は問題ないのかもしれない。しかし、部分的とはいえシートが視界を遮るわけだから左前窓からの景色は大きく様変わりする。優秀な先進安全技術や高度運転支援技術を有するLSだが、人が目視によって周囲の交通環境を確認すべき領域では、快適性を多少なりとも落としても安全性を優先すべきではないか。

 また、EXECUTIVEの助手席&運転席のヘッドレスト後部には後席用のモニターが装着できるが、ドライバーの体躯によるシート位置との関係から、このモニターによってさらに視界を遮られてしまうことがあることが分かった(下の画像で確認されたし)。こうした率直な感想を開発担当のお1人で、レクサス製品企画の主幹である大塚健司氏に伺ったみたところ、「リラックスモードではドライバーの視認性確保のためモニター電源は入らないように設定しています」との回答をいただいているが、ドライバーが左側方を見たときのモニターの角度を調整式とし、モニターの右側面だけがドライバーの視界に入るようにするだけでずいぶんと改善するのではないか。モニターの調整機構は手動式でもいいが、できれば電動化してドライバーのシート位置や運転の自動化レベル3以上での装着が必須となる「ドライバーモニタリングーカメラ」からの情報を活用し、ジャストな位置に自動調整して最適な運転環境を生み出したいところ。

リラックスモードにした状態の運転席からの左側方視界

 ちなみに、メルセデス・ベンツ SクラスにもLSと同様の助手席前倒し機能がある。今回は両車の遮られる面積がいかほどなのか計測したわけではないので定かではないが、筆者がドライバーとして左側方の目視による安全確認を行なった際の印象では、助手席シートが立派で大きな分、新型LSの方が遮られていると感じられた。

V型6気筒3.5リッターツインターボエンジンを搭載するLS 500

 肝心の500h EXECUTIVEが持つ後席での乗り味だが、少々クルマ酔いをしてしまった。よって、AWDではもう少し柔軟性を高めていただきたいという感想を持った。クルマ酔いの要因は加齢により三半規管が衰えたことが主たる要因だろうと、今度はプロドライバーによる運転で後席インプレッションを体験させていただいたのだが、それでもやはりAWDではクルマ酔いをしてしまった。ここも前出の大塚氏に伺ったみたところ、「ハイブリッドモデルのAWDでは道路環境との兼ね合いでそうした傾向があることは認識しています」とのことだった。しかし、お話を進めていくとすでにその要因と解決策は見いだせているとのことで、ユーザーに納車されるLSでは改善されていることと思う。

 LSはドライバーズカーであり、時にショーファーモデルの性格をも両立させなければならない。故に開発は困難を極める。しかもGA-Lプラットフォームは生まれたばかりの大器であるから、熟成には時間が必要だ。これは誕生間もないマルチステージハイブリッドにも同じことが言える。今回はハイブリッドモデルである500hについて助手席/運転席/後席のインプレッションを行なってきたが、やはりクルマの試乗はあらゆるシーンで行なわなければならないと改めて実感する貴重な体験となった。

西村直人:NAC

1972年東京生まれ。交通コメンテーター。得意分野はパーソナルモビリティだが、広い視野をもつためWRカーやF1、さらには2輪界のF1であるMotoGPマシンの試乗をこなしつつ、4&2輪の草レースにも参戦。また、大型トラックやバス、トレーラーの公道試乗も行うほか、ハイブリッド路線バスやハイブリッド電車など、物流や環境に関する取材を多数担当。国土交通省「スマートウェイ検討委員会」、警察庁「UTMS懇談会」に出席。AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)理事、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。(財)全日本交通安全協会 東京二輪車安全運転推進委員会 指導員。著書に「2020年、人工知能は車を運転するのか 〜自動運転の現在・過去・未来〜」(インプレス)などがある。

Photo:安田 剛