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カタログ燃費と実走行燃費に差が出る理由とは?
自工会が「燃費試験法で測れないエネルギーの存在が大きな理由」と分析

解説を行った日本自動車工業会 乗用車燃費基準検討会の大野栄嗣幹事

2012年7月24日開催



 自工会(日本自動車工業会)は7月24日、報道陣向けに「乗用車におけるカタログモード燃費と実走行燃費の関係」と題する説明会を開催し、自工会 乗用車燃費基準検討会の大野栄嗣幹事が解説を行った。

 近年では、エコカー減税やエコカー補助金といった政府による施策を受けたハイブリッドカーの大幅な普及や、“第3のエコカー”と呼ばれる純ガソリン車の登場などでクルマの燃費性能に対する注目はさらなる高まりを見せているが、その一方で車両スペックとして主要諸元表に記載される「カタログモード燃費」と、実際にユーザーが走らせた際の燃費に少なからぬ差があることも、言わば“公然の事実”となっている。

 そこで自工会は、カタログ燃費と実走行燃費に差が出てしまうメカニズムについて分析を実施した。この中で、近年のカタログモード燃費の向上がその差を増大させていること、さらに差を生じさせる大きな要因が分かってきたことなどから、まだ中間報告としながらも解説を行うことになった。

 スライドを使った説明では、まず大元となる燃費基準とカタログモード燃費について解説。1970年代に起きたオイルショックを契機に制定された「省エネ法」で誕生した乗用車の燃費基準は、メーカーに具体的な数値目標としてのハードルを設定して燃費改善を促し、現在ではユーザーにとって購入時の目安になるデータとしても活用されている。また、前出のエコカー減税と補助金の基準ともなっており、現代のクルマにとって極めて重要な性能数値と言えるだろう。

最近ではすっかりおなじみになった緑のステッカーが燃費基準クリアの証

 燃費の計測は、計測条件を一定にするためシャシーダイナモに車両を乗せた状態で行い、指定時間内に加減速を繰り返すことで燃料の使用量を計測する。この加減速の時間とパターンは、1991年から約20年に渡って使われてきた「10・15モード」から、昨年4月に「JC08モード」にスイッチされており、エンジンが冷えている状態で計測する「コールドスタート」が追加され、さらに最高速度の向上、加減速の増加、計測時間が倍になるなど、より厳しい内容となっている。

 燃費基準値は、現在では5年ごとに数値が更新されているが、実際に販売される車両の平均燃費は燃費基準のペースを大幅に前倒しにする勢いで向上を続け、すでに昨年の段階で次のハードルとなる2015年の基準数値を上まわっている。また、乗用車以外の大型貨物車などにもそれぞれに燃費基準を設定して運用しているのは日本だけと言う。

すべての車両が一定の条件下で計測されるよう、シャシーダイナモを使って燃費を計測。走行状況を再現する走行モードは20年ぶりに一新してJC08モードに。海外でも同様のカタログモード燃費の計測が実施されている
実際に販売される車両の平均燃費はすでに昨年の段階で次のハードルとなる2015年の基準数値を上まわっている

 続いて本題となるカタログモード燃費と実走行燃費の乖離について解説。まず、日本国内全体で見た場合の「新車販売モード燃費」「保有モード燃費」「実走行燃費」の3つのデータを紹介。その年度に新車販売された乗用車のカタログモード燃費の平均は、2000年前後から大きく伸びを見せているが、実際に日本国内を走っている乗用車全体となる保有モード燃費は一定の間隔でゆるやかに上昇している。

 また、実走行燃費も同じように向上しているものの、2種類のモード燃費とは大きく差が出ており、今回の分析では保有モード燃費との差が注目された。こうした乖離の度合いを数値化し、「モード燃費到達率」として定義している。

グラフの数値は国土交通省が持っている走行量統計値、ガソリン消費量統計値などを用いている

自動車技術の向上でカタログモード燃費が向上しているのに、ユーザーが求める実燃費と隔たりがあることを示すグラフ

 実走行燃費をカタログモード燃費で割ったモード燃費到達率でグラフ化すると、とくに最近10年では右肩下がりで数値が低下しており、カタログに掲載された燃費とユーザーが走らせた燃費の差が大きくなっていることが分かる。しかし、このデータは日本国内を1つにまとめた数値を使っているので、傾向は理解できても分析には利用できない。

 公的なデータでは車両ごとの燃費や利用エリアなどを登録した数値がなかったため、今回の調査では日本国内のデータにはイードが主催する「e燃費」、欧州のデータはドイツで実走行燃費を公開している「Spritmonitor.de」(http://www.spritmonitor.de/)の集計したデータを使って分析を実施。乖離の要因を「外部環境」「車の使い方」「燃費計測試験法」の3種類に分けて分析している。


燃費乖離の要因を「e燃費」、「Spritmonitor.de」の集計データを使って分析した

燃費のよいクルマほど影響を受ける“燃費試験法で測れないエネルギー”とは
 分析結果として紹介されたデータでは、外気温の上下や天候の変化、地域による温度帯や交通量の影響による平均車速、利用者ごとの走行パターンなどが要因になると明示されたほか、目を惹いたのは燃費計測試験法の項目で解説された「燃費試験法で測れないエネルギーの存在」というデータ。

外気温の変動が燃費を大きく左右すると示すデータ。モード燃費到達値に一番近いのは月平均気温が15〜20度あたりと言う
どの地域を走るかによっても、温度帯や平均速度が燃費に差をつける
年間走行距離の差は、1回の走行距離だけではなく使用条件などにもばらつきが出るため、因果関係の特定は難しくなる

 乗用車のカタログモード燃費とモード燃費到達値を使ってグラフ化すると、カタログモード燃費がよくなるほどモード燃費到達値が低くなることに相関関係を見出し、実走行で使われたエネルギーの中にカタログモード燃費の計測試験では測れない消費エネルギーが含まれていると仮定。カタログモード燃費が向上しても、この消費エネルギーが変化しなければモード燃費到達値を低下させる要因になるという考え方だ。

 実際の集計データと照らし合わせた結果、わずかに修正が必要な点はあったものの、カタログモード走行以外に使われているエネルギーがあると判明。さらにこのモード外エネルギーはカタログ燃費が良好なクルマほど大きく影響が出るため、モード燃費到達値との差が大きくなる要因になっていると言う。

 また、モード外エネルギーにはエアコンやカーナビなどの電装系、補機類で使用されるエネルギーが含まれることで、年を追うごとに増加傾向にあるとの見解も出されている。エンジンパワーが走行目的以外にも消費されているというのは、経験則から想像できる部分だが、それが燃費のよいモデルほど大きな比率でマイナスに働くという法則は注目したいところだ。

カタログモード燃費が向上するほどモード燃費到達値が低下することが1本の回帰線で表現され、相関関係を示している 燃費試験法では測れないBというエネルギーがあると仮定 Bエネルギーは一定という仮定は否定されたものの、データ化による回帰式の存在によってBエネルギー自体の存在が示される結果となった

 このほか、カタログモード燃費が10・15モードからJC08に変わるとモード燃費到達値が向上することや、欧州のデータでも日本同様に燃費乖離が存在し、カタログモード燃費の向上とモード燃費到達値の低下というデータが現れていることなどを紹介。その一方で、アメリカではハイブリッドカーの普及を受けて2008年から評価方法を一新。複雑な計算を行う「5サイクル法」と「簡易法」を持つ「ラベル燃費」を用いることで、実走行燃費と大きな差がないと評価されていると解説した。

JC08モードになって実走行との差が小さくなったが、燃費がいいクルマほど差が大きい傾向は変わらない 日本と似たNEDCモードで燃費を計測するヨーロッパのデータでも日本同様の傾向を示している

 自工会ではこういった分析結果を踏まえ、問題の解決や「乗用車排ガス・燃費国際調和試験方法(WLTP)」の策定に向けた国連の専門家会議への参加を、これからも続けていくとのこと。また、これまでに続けてきた各種取り組みによるCO2削減努力を今後も推し進めていくと説明している。

アメリカでもモード燃費を使っていた時代は燃費乖離の問題があったものの、現在は新しい評価方法に切り替えて対処している
日米欧モード燃費到達率のまとめ 日本の運輸部門でCO2の削減ができた要因
自工会は欧州自工会(ACEA)、米国自工会(Auto Alliance)と連携し、総合的対策のアピールを行っている まとめ

(佐久間秀)
2012年 7月 25日