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【連載】西川善司の「NISSAN GT-R」ライフ
第10回:GT-Rのマルチファンクションディスプレイとは?


 R35 GT-Rには、マルチファンクションディスプレイ(MFD)と名付けられた7インチサイズの液晶ディスプレイが、前席中央コンソールに組み込まれている。ここは、カーナビゲーションシステムの表示画面として使われることはもちろんのこと、4輪タイヤのリアルタイム空気圧値をはじめとしたさまざまな車両情報の表示画面としても使われる。

 今回はこのMFD機能のうち、「グランツーリスモ」シリーズの開発元で知られるポリフォニーデジタルが開発に携わったとされる、車両の状態やドライビングの履歴を表示する「マルチファンクションメーター」(MFM)にスポットを当てて紹介したい。

GT-R標準装備のマルチファンクションメーターとは?
 MFMは、中央コンソールにある【FUNCTION】ボタンを押すことで起動する。アプリとして起動しているためだろうか、エンジン始動後の初回起動時には必ず「POLYPHONY DIGITAL & CLARION」のロゴ入り起動画面を見ることになる。

 表示される画面はまさに「グランツーリスモ」のプレイ後のお楽しみである、リプレイ画面上の車両情報画面のようなデザインで、これが「R35 GT-Rはゲームみたい」と言われる要因の1つにもなっていると思う。

 変に奇をてらったデザインにはなっておらず、黒基調の背景に骨太の白色数字フォントを採用するとともに、赤の差し色やアクセントを盛り込んだデザインで、シンプルながらも見やすい仕上がりとなっている。

 このMFMは、全部で11ページ分の画面を持っており、それぞれが「1・2・3・4・A・B・C・D・E・F・G」というページ名が付けられている。ページ切り換えは画面上の1〜4・A〜Gの文字盤をタッチすることで行えるし、ステアリングの左側にあるダイヤルを回すことで順送り式に切り換えることも可能だ。

 11ページ分のMFMには、さまざまな車両情報や走行情報がリアルタイム表示されており、見たいページをユーザーが切り換えて活用することになる。表示されていないMFMページにおいても各種パラメータの計測は行われているので、パラメータ推移を表示する類のページでは、切り換えた瞬間にそれまでの情報もちゃんと確認できる。


ペダル操作とG表示を小パレットで一括表示するようにカスタマイズしてみた画面

 各ページのMFM画面は「パレット」と呼ばれる、Windowsで言うところのウィンドウ画面のような小領域で区切られており、1〜4のMFMページに限っては各パレットに表示するパラメータをカスタマイズすることができる。

 なお、パレットには小パレットと、小パレット4つ分の面積の大パレットがあり、MFM1ページ当たり6パレット分の面積しかないので、「小パレット6個の表示」か「大パレット1個+小パレット4個」の組み合わせに限定されることになる。

 各パレットに一体どんなパラメータを表示できるかだが、2012年モデル時点では以下のパラメータ・ラインアップとなっている。

パラメータ・ラインアップ パレット大 パレット小
WATER TEMP:エンジン水温
OIL TEMP:エンジン油温
OIL PRESS:エンジン油圧
OIL TEMP:ミッション油温
OIL PRESS:ミッション油圧
BOOST:ブースト圧
SPEED:速度 ×
FUEL/RANGE:燃料/航続可能距離
FUEL/FLOW:燃料噴射量
SECT CONSUMPTION:区間燃費
FR.TORQUE:トルク配分 ×
ACCEL:アクセル ×
BRAKE:ブレーキ ×
STEERING:ステアリング角 ×
CORNERING G:左右G
ACCEL/BRAKING G:前後G
ABSOLUTE G:合成G
CLOCK:時計 ×
PRESET画面に初期化

 パレット大とパレット小の両方で表示できるものは、大パレットで表示した方がより詳細なパラメータ推移が確認できる。小パレットでしか表示できないパラメータもあり、これはいずれ改善を望みたいところだ。

MFMページ1〜4
 MFMのページ1〜4では、ユーザーが表示パラメータを自由に選択変更できるのだが、そのうちページ1、2に関しては、工場出荷状態でプリセット設定がなされている。

 ページ1ではブースト圧(大)、エンジン油温(小)、エンジン油圧(小)が、ページ2はエンジン水温(小)、エンジン油温(小)、エンジン油圧(小)、トルク配分(小)、ミッション油温(小)、ミッション油圧(小)が最初からセットされている。

 ページ1は、ハイウェイ合流時やスポーツ走行時の気分高揚用にマッチする表示モードである。大パレット表示のブースト計は、自分が例え正面情景を凝視していても、視界に入ってくる。加速Gの実感にシンクロして円形ゲージが上昇していく様を、視界の左端に垣間見ているひとときこそ、GT-Rのオーナーシップを満喫する瞬間である。


大きなブースト計が特徴的なページ1。右側のパレットは水温表示にカスタマイズするのもありかも

 ページ2は、連続スポーツ走行時に実用的なものだ。温度関連のステータスが一望できるので、まだ頑張れるのか、それともクーリング走行が必要なのかを見極めるのに役立つ。サーキットなどをマニュアルモードでハイペース走行している時や、渋滞にハマった時の車両の状態確認にも便利だ。ドライバーが疲れていない場合でも、クルマが休憩を必要としていることが、ここの表示内容によって分かることがある。

 筆者が個人的に好きなのはトルク配分の表示で、R35 GT-Rの4輪駆動状態をリアルタイム確認できて面白い。ゲージが上に伸びれば伸びるほど前輪にも駆動配分がなされていることを表しており、筆者は納車直後、この表示に多大な興味を奪われてしまった。惜しむらくは、この表示が大パレットに対応していない点と、あまりにもシンプルな上下ゲージ表示になっている点だ。もう少し味わい深いグラフィックス表示だったらもっとテンションが上がるのだが。


各種温度やオイル関連パラメータを集約したページ2

 それはさておき、この表示は、GT-Rの走行メカニズムを理解するのにも役に立つ。

 R35 GT-Rは4輪駆動車として認知されているが、その実、通常走行時はほとんど後輪駆動(FR)状態になっているのがこのゲージを観察していればよく分かる。反応は非常に高速だが、前輪の駆動は発進時や追い越し加速時、あるいは車体姿勢制御が介入するときなどの“アシスト的”に活用されていることが実体験とともによく理解できるのだ。

 三菱自動車の「ランサーエボリューションX」やスバル「インプレッサWRX STI」など「生粋の4輪駆動システム車」と独特なR35 GT-Rの乗り味の決定的な差異は、このメカニズムが大いに起因していると思われる。

MFMページA〜ACCELERATION
 大パレットで加速G履歴を表示し、小パレットでブースト圧、アクセルペダル踏み込み量を表示するページ。

 加速G履歴は横軸を時間軸、加速Gを縦軸として折れ線グラフで表示される。助手席パッセンジャーや車体に負担を掛けない滑らかでスムーズな運転を実践するためには、この折れ線グラフがなだらかに立ち上がって、なだらかに下がるという、富士山のような形状になることが理想と説明されている。GT-Rに乗っていると、ついガツンと加速してしまいがちだが、そのようなときの波形は急激に立ち上がって下がる。

 ちなみに、富士山形状の波形を目指したいならば1つよい方法がある。それはトランスミッションモードスイッチを燃費重視の「SAVE」モードに設定することだ。SAVEモード下では、アクセルワークに対するスロットル開閉も緩やかになるので、急加速操作が緩和されるのだ。昨今のエコカーなどに搭載されているエコモードと同種の制御を連想して貰えれば分かりやすいだろう。電子スロットルならではの機構とも言える。


富士山形状の波形を作り出すのは意外に難しい?

MFMページB〜BRAKING
 大パレットで減速G履歴を表示し、小パレットで速度、ブレーキペダル踏み込み量を表示するページ。

 時間軸を横軸、G量を縦軸にとっている点はACCELERATIONページと同じだが、原点0の位置がBRAKINGページの方は上下逆転している点が大きく異なる。こちらもスムーズな運転では、富士山形状が逆転している形状を目指せばよいとアドバイスされている。

 こちらはトランスミッションモードスイッチのようなモードセレクトはないため、ユーザーが意識して実現していくしか方法はない。1つ有効な方法があるとすれば、シフトダウンを駆使したエンジンブレーキを積極活用することだ。こうすることで、ブレーキペダルを強く踏み込むよりも減速Gがマイルドになる。


初期減速Gがブレーキペダルを踏んでいないのに発生しているのは、シフトダウンをしているため

MFMページC〜STEERING
 大パレットで左右G履歴を表示し、小パレットで速度、ステアリング角を表示するページ。

 こちらは左右Gを表示する性格上、原点0を中心にとって左右にG量をマーキングする表示形態となっている。時間軸を縦軸に取っているので、ちょうど心電図のような折れ線グラフが上から下に広がっていくような見映えとなっている。

 急ハンドルを左右に切ると鋭い波形が左右に振れるように現れ、0.5Gを超えると画面全体が赤く光って警告を促してくる。サーキットなどをハイペースで攻めているときは、ここが赤に光りっぱなしになるわけだ。

 タイヤやパッセンジャーに優しいステアリング操作をするには、なだらかな波形を表示させることが必要になるわけだが、この項目は前者2つほど達成は難しくなく、一般道を普通に走っている分には、ほとんどその要件を満たすことができる。


一定以上の横Gが発生すると波形表示が赤くなる

MFMページD〜GEAR POSITION
 現在のリアルタイム走行速度に対して、どのギアで走行するのが適性なのかを、グラフィカルに表示してくれるページ。

 地味な画面だが、何気にR35 GT-Rの新米オーナーにとってとても勉強になるページである。R35 GT-Rのトランスミッションは6速を採用しているが、慣れないうちは各ギアの適性速度がイメージしづらい。

 1速と2速は比較的低速から利用できるが、3速以上は適切なシフトタイミングが分かりづらいのだ。逆にシフトダウンは3速以下は十分に減速してからでないとエンジンの回転数がグッと上がってしまう。

 こうしたことはATモードを使っていれば関係ないのだが、R35 GT-Rはデュアルクラッチシステムを採用した2ペダルマニュアルトランスミッションなので、できれば普段からMTモードを積極的に使うべきだし、実際使いたくなる。

 一見、何をどう見ればよいか分からないグラフィックスだが、これは現在の走行速度だと、各ギアポジションにおいてどのような燃費結果になるかを色で表したものになる。


GT-Rの最適なシフトタイミングを学ぶことができるモードだ

 端的に言えば、縦バーの色が水色に近ければ適性燃費であることを表しており、赤に近ければ回転数が高すぎることを意味している。なので、ユーザーとしては、現在選択しているギアポジションの前後において、水色に近ければシフトするとギアがスムーズに繋がることを知ることができるのだ。逆に言うと、シフト操作時にシフト先のギアポジションのバーの色が水色になっていることを確認してからシフトすればよいと言うことだ。

 街中でスローペースで走っているときにも役に立つページである。

MFMページE〜FUEL ECONOMY
 スポーツカーとは言え、昨今は燃費とは無関係ではいられないということなのか、ページEはリアルタイム燃費を確認できるモードとなっている。

 大パレットでは燃費運転レベル履歴を表示しており、縦軸に最大10km/Lの燃費、横軸に最大20分間の時間軸を取っている。テトリスのブロックのようなものが縦に積まれていき、このブロック長が長いほど燃費がよいことを意味している。例えば、ここにブロックが5個積まれれば、その1分間は約5km/Lで走行したことを意味している。

 2つの小パレットでは過去20秒間のリアルタイム燃費、現時点での燃費運転レベルの10点満点採点が表示される。

 筆者のここ9カ月間の実用燃費の雑感を述べさせてもらうと、GT-Rは前愛車のRX-7(FD3S)と比較すると、約2km/L程度燃費がよく、渋滞を含む街乗りで約7km/L前後、高速巡航だと約8km/L程度となる。

 筆者のRX-7は2ローターのロータリーエンジン・ツインターボ(ブーストアップ仕様)で340PS、GT-RはV型6気筒 3.8リッターツインターボエンジンの550PS(カタログ値)であることを考えると、GT-Rはかなり燃費レベルが高いと言えよう。


ハイパワー車だが瞬間燃費は意外に優秀だったりする

MFMページF、G〜TIME LOGGER、DRIVERS NOTES
 ページFは、区間走行タイムを計測するためのもので、TIME LOGGERという名称から連想できるように、簡単に言えば手動のストップウォッチみたいなものだ。

 ステアリングのスポーク右上側にある【START/STOP】ボタンを押すことで計測開始/停止が行え、【MRK】ボタンを押すとその時点での計測タイムが保存される仕組みだ。大パレットで計測タイムが、小パレットで時速、計測開始からの経過時間が表示される。

 サーキットのラップタイム計測用としては手動という操作系のため不正確なので、筆者はドライブ時に「目的地まで何分かかった」というようなドライブ記録用として使っている。

 ページGは、DRIVERS NOTEというモード名で、走行地点名とその地点を通過(あるいは停止)した時刻を記録していくために利用するものになる。

 【START/STOP】ボタンで計測開始、【MRK】ボタンでその地点を記録していくという操作系になる。記録されるのはカーナビ情報から取得された地点名、ETCゲート名、道路名などで、ドライブの時に「何時にどこに行った」という「思い出の記録」に活用することになるだろうか。【MRK】を押さなくてもギアポジションをパーキングにするとマーキングされるし、エンジンを停止しても再度ONにすれば記録が再開されるので、なかなかよくできている。

 なお、TIME LOGGERとDRIVERS NOTEは、同時にはどちらか一方しか利用できないという制約がある。

TIME LOGGER画面 DRIVERS NOTES画面

TESLA MODEL Sのコンソールにはなんとタッチパネル対応の17インチの液晶ディスプレイがビルトインされている

おわりに
 MFD/MFMをあえてオーナー目線で掘り下げてみたわけだが、いかがだったろうか。

 このMFD/MFMのおかげでGT-Rの場合、社外品のメーター類をダッシュボード上に並べなくて済むのがありがたい。機能も高く、実用性も良好。大きな不満は現状ない。ただ、GT-Rオーナーになって9カ月間、「こうなればよいな」という細かな要望は幾つか見えてきている。

 1つは、「MFMのフォントスタイルや配色がカスタマイズできたらよいのに」というもの。スマートフォンのスキン感覚でカスタマイズできるような改良があれば、よりGT-Rでのドライビングが楽しくなりそうだ。

 2つ目は、画面サイズの大型化と解像度の向上だ。大パレットの表示は申し分ないが、小パレットの表示はやや小さすぎる感があるので、現状の画面サイズの7インチから、9インチくらいになればよいなと思う。

 実際、アルパインからは車種専用のカーナビシリーズとして9インチ画面の「BIG X」シリーズが登場しているし、テスラ・モーターズのモデルSでは、17インチサイズの画面をビルトインしたものも出てきている。大画面マニアを自負する筆者としては、この辺りの話を聞くと「GT-Rにも搭載して欲しい」と思ってしまうのだ。

 GT-Rは2007年の発表以降、内装に関しては素材の変更があった程度で大きな手が入れられておらず、MFDに関して言えばほとんど改良が行われていない。将来の年次改良時には、何らかのパワーアップを期待したいところである。

(トライゼット西川善司)
2012年 11月 7日