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日産、2013年度通期決算を発表。販売台数は前年比5.6%増、純利益も13.6%増の3890億円に

2014年度は新型「グローバル・ピックアップトラック」「ムラーノ」などを発売予定

日産自動車 社長兼CEOのカルロス・ゴーン氏が登壇し、2013年度の結果、そして2014年度の目標について力強く語った
2014年5月12日発表

 日産自動車は5月12日、神奈川県横浜市にある日産グローバル本社で2013年度の決算発表を行った。2013年度通期の連結売上高は、中国合弁会社比例連結ベースで11兆4348億円。連結営業利益は6057億円、売上高営業利益率は5.3%。当期の純利益は前年から13.6%増加の3890億円となっている。

 自動車事業のフリーキャッシュフローは2081億円で、2013年度末は自動車事業で1兆1337億円のキャッシュ・ポジションとなり、2012年度末の9159億円から改善している。

 2013年度の販売状況についてだが、グローバル全体需要は前年比4.8%増の8310万台で、日産の販売台数は518万8000台。前年と比較すると5.6%増の伸びとなる。つまり日産の販売台数の増加はグローバル全体需要の伸びを上まわるものでもある。そしてグローバル市場における日産の占有率は6.2%となった。

2013年度の財務実績。すべての項目で前年を上まわる

 主な市場における内訳も公表され、日本では前年比11.1%増の71万9000台を販売し、市場占有率は12.6%。この伸びは日本市場の全体需要の伸びを上まわる成績で、これについては軽自動車の「デイズシリーズ」や新型「エクストレイル」の販売が好調だったことが大きく貢献しているという。また、今期は消費税増税前の駆け込み需要もあったため、それにも支えられたというコメントだった。

 そのほかの国についても紹介された。大きな市場である中国での販売も好調。前年比17.2%増の126万6000台を販売している。中国では「キャシュカイ」「シルフィ」が、ヴェヌーシアやインフィニティといったブランドの新型車とともに好調で、販売増加に貢献している。続いて、こちらも重要な市場である北米。ここでは新型「ローグ」や「アルティマ」が好調で飛躍的に販売を伸ばし、前年比13%増の128万5000台を販売している。

 カナダでも「ローグ」が好評で、前年比20.9%増の9万6000台を販売。そしてメキシコ。この国での日産人気は非常に高く、市場占有率は24.9%。自動車販売ランキングの上位10台中、5台が日産車で、さらに顧客満足度では1位というトップブランドとなっている。販売台数は26万5000台である。また、ロシアを含む欧州では市場回復の勢いが増していて、ここでも前年比2.4%増の67万6000台という結果を出している。

 ダットサンブランドを復活させたインドでは、新型「ダットサンGO」の販売を開始。すでに発売済みだった新型「テラノ」も高く評価されているということで、新興市場での成功の兆しも見えてきている。しかし、不安定な為替変動や政策変更、そして財政の影響を受けたアジア、オセアニア、中南米などでは不安定な市況にさらされてしまい、アジアとオセアニアでは前年比17.8%減の36万3300台。中南米は前年比16.1%の18万6300台となった。しかし、中東の販売台数は前年比22.5%増の22万6400台だったので、これで前記の国での台数減の一部を補っている。

2013年度は世界で8310万台のクルマが売れ、うち518万8000台が日産車
2013年度の販売実績:日本
2013年度の販売実績:中国
2013年度の販売実績:北米
2013年度の販売実績:欧州
2013年度の販売実績:その他

 2014年度の見通しについては、全体需要を前年比1.6%増の8442万台として前提し、日産は前年比8.9%増の565万台という大幅な伸びを見込んでいる。この数値により、グローバル市場の占有率も過去最高の6.7%を想定する。中国合弁会社に持ち分法を適用した場合の予想では、連結売上高は前年比2.9%増の10兆7900億円、連結営業利益は5350億円、当期純利益は前年比4.1%の4050億円という見込みを打ち出している。

2014年度も順調に成長し、連結売上高は前年比2.9%増の10兆7900億円、連結営業利益は5350億円、当期純利益は前年比4.1%の4050億円という見込み
2014年度、日本は消費税増税後の反動減が予想されるが、そのほかの地域では伸びが期待できるので、トータルでは8.9%のアップと予想
2014年度も確実に自動車事業でのフリーキャッシュフローを生み出すという予測のもと、株主配当を10%増加させる予定。配当性向の最低ラインも25%から30%に引き上げる
ブランドパワー、セールスパワー、クオリティの向上を謳った日産パワー88に、新たにゼロ・エミッションのリーダーシップ、事業の拡大、コストリーダーシップを追加

 日産が6カ年計画として進行している「日産パワー88」は前期の3年が経過し、2014年度から後半戦に入るが、この後期戦略では新たに3つの優先事項に取り組むことがゴーンCEOから発表された。

 その1つ目は新技術と低排出ガスに対するコミットメントの維持。日産にはゼロ・エミッションのシンボルである「リーフ」があり、このクルマは世界の電気自動車(EV)市場で5割近いシェアを持っている。そのリーフの技術を生かした商用EV「e-NV200」も現在実証実験を行っているので、これが市場投入されれば市場の拡大とシェアのアップも期待できる。2つ目は「既存の生産設備を最大限利用する」ということ。新工場への投資はすでにピークを迎えており、その新しい生産能力を活用しながら次の成功を掴む段階にシフトしていくという。

 そして3つ目は新たな段階に入ったルノー・日産アライアンスで、総販売台数は830万台に達し、世界で第4位の自動車グループになっている。そこでユーザーの購買への興味を加速させるため、アライアンスの統合をより深化させ、さらに強力な商品の投入も予定している。フラグシップモデルを日産、インフィニティ、ダットサン、そしてヴェヌーシアから発売。多チャンネルから発売することで幅広いユーザーにアピールしていく狙いだ。さらに新型「ムラーノ」「e-NV200」に加え、新型の「グローバル・ピックアップトラック」も発売予定だ。中国市場向けではインフィニティの「Q50」と「QX50」にロングホイールベース車も投入される。

 このように、2014年度は「日産パワー88」の後半目標に向けて進んでいくが、「現状でもよいポジションに付けていることを強調しておきたい」とゴーンCEOは語る。日産自動車の人財、生産能力、マネジメント組織の力により、今よりさらに品質を徹底し、販売力を向上させることで「利益ある成長のチャンスを追求していく」という力強い言葉で報告会は締められた。

リーフを主体に継続していく電気自動車を使ったゼロ・エミッション戦略。今年は新たに「e-NV200」も投入して、電気自動車の世界的シェアも拡大していく
「日産パワー88」の成果。インターブランドが発表した2013年度版の「ベストグローバルブランド100」ランキングで、圏外から一気に65位にジャンプアップしている
2014年に世界で発売する新型車がこちら。日産、インフィニティ、ダットサン、ヴェヌーシアから市場投入される

(深田昌之)