トヨタ、2012年3月期決算説明会
2012年3月期は減収減益、2013年は1兆円の営業利益を見込む

2012年3月期の決算概要を発表するトヨタ自動車 豊田章男取締役社長

2012年5月9日発表



左から、専務役員 早川茂氏、取締役社長 豊田章男氏、取締役副社長 小澤哲氏

 トヨタ自動車は5月9日、2012年3月期の決算説明会を東京本社で開催。トヨタ自動車 取締役社長 豊田章男氏、取締役副社長 小澤哲氏、専務役員 早川茂氏が出席した。

 決算説明会の冒頭、豊田社長が決算概要を発表。2012年3月期は震災や円高などの逆風の中3556億円の営業利益を確保したこと、期末配当を30円とし、中間配当とあわせ通期では50円になるなどを語った。以下に冒頭の決算概要の発言を記す。



 2012年3月期は、東日本大震災やタイの洪水による減産、超円高等、経営環境が非常に厳しい年でありましたが、全従業員の努力に加え、仕入先や販売店の皆様方が一丸となり、生産・販売の回復に取り組んでいただきました結果、3556億円の営業利益を確保することができました。私はグローバルビジョンの中で、「トヨタが持続的に成長する」ために、「どんなに厳しい環境でも、しっかりと利益を上げられる体質」に向けた「強い収益基盤」の確立を目指す、と申しあげました。

 当期の営業利益は、利益の絶対額としては、決して大きいとは言えないレベルですが、昨年は多くの自然災害があり、かつドルが80円を切る超円高の中で、以前の体質のままであれば、赤字になってもおかしくなかったのではないかと思います。

 それほどの厳しい環境の中、このように、なんとか利益を確保できましたのは、ここまでトヨタの体質強化に向けて、ともにご尽力いただいた販売店、仕入先の皆様、そして従業員の努力の賜物であり、敬意を表するとともに、心から感謝したいというのが率直な気持ちでございます。

 そして、トヨタ車、レクサス車に対し、変わらぬご愛顧をいただきましたお客様には、あらためて、深く感謝申し上げたいと思います。

 期末配当につきましては、1株あたり30円とし、中間配当とあわせ、年間50円を本年の株主総会でご提案申し上げたいと思います。

 株主の皆様への最も重要な還元である配当につきましては、今後も株主の皆様のご期待にお応えしていけるよう、そして、「トヨタの株を持っていてよかった」と思っていただき、長期に保有していただけるよう、努力してまいります。

 2013年3月期の見通しにつきましては、詳細は後ほど副社長の小澤よりご説明申し上げますが、私が一言申し上げたい点は、全社をあげて取り組んできた収益改善活動の着実な進捗に加え、いいクルマが台数・収益に結びつき、さらなるいいクルマへの投資につながるというサイクルが回りだしたことに確かな手応えを感じている、ということでございます。

 そして今年は、「商品」が、大きく変わる年になります。トヨタブランド、レクサスブランドともに、多くの車種がモデルチェンジの時期を迎えるなか、先進国の成熟市場においても、これから伸びていく新興国市場においても、「何としてもこのクルマに乗りたい」とお客様に思っていただける、魅力的な商品を次々と投入してまいります。

 これから出てくるモデルは、デザイン面でも、収益面でも「もっといいクルマ」に向けて、着実に進化させてまいります。

 私は、喜劇王チャップリンが、「あなたの最高傑作は何か?」と聞かれた時にはいつも、「NEXT ONE」と答えたという、常によりよいものを作ろうとする姿勢に、我々でいう「改善」の精神と相通ずるものを感じております。ぜひとも、トヨタ、レクサスの「NEXT ONE」に、ご期待いただきたいと思います。

 ここ数年、本当に厳しいことが続きました。そのような時にもずっと支え続けていただいたステークホルダーの皆様に報いるために、今年こそは、皆の努力を、何としても結果として皆様にお示ししたいと思っております。今後も、グローバルトヨタ32万人と、心をあわせて取り組んでまいりますので、引き続き、皆さま方のご支援をよろしくお願い申し上げます。


取締役副社長 小澤哲氏

 決算の詳細については、小澤副社長が説明。2012年3月期は、連結決算で売上高は18兆5836億円(前期比4100億円減)、営業利益は3556億円(1126億円減)、純利益は2835億円(1246億円減、30.5%減)になり、その減要因としては、震災や円高があり、円高の影響は2500億円におよぶ。

 ただ、それだけの逆風の中でも、営業利益率を改善することに成功しており、その要因として「震災からの挽回だけでなく、いいクルマ作りが販売、収益に結びつき、成果として現れたもの」であるとした。

20112年3月期連結販売台数連結決算。減収減益となっている
純利益の増減要因四半期別営業利益の推移

 所在地別営業利益では、日本は原価低減などの努力により赤字幅が縮小、北米では震災などの影響で出荷できなかったことが響き利益幅が縮小。アジアなどでは震災やタイ洪水による影響と、業務拡大による先行投資があり、やはり利益幅が縮小している。

 金融セグメントの営業利益は、前期比310億円減の2898億円。これは、融資金利が低下し、利ざやが縮小した結果であるとした。

金融セグメント別営業利益持分法投資損益
単独決算要約(日本基準)株主還元。1株につき通期で50円

今期は1兆円の営業利益、870万台の販売台数を見込む
 一方、今期(2013年3月期)については、連結販売台数134万8000台増の870万台を見込んでいる。北米やアジアでは400万台以上増加し、日本においてもエコカー補助金などの追い風もあり、12万9000台増としている。

 売上高については、3兆4164億円増の22兆円、営業利益は6444億円増の1兆円を見込んでおり、純利益についても4765億円増の7600億円としている。

 これについては、「いいクルマを作り、そのクルマを通じて社会に貢献し、結果として販売台数を伸ばす。それを次のいいクルマ作りにつなげるサイクルを作る取り組みが順調に進んでいるため」(小澤副社長)と言い、新商品の投入、原価改善活動に取り組みつつ、1兆円の営業利益を目指していく。

2013年3月期の見通し営業利益は1兆円を見込む
増減要因設備投資など

 豊田氏は社長就任から約3年となるが、「100年に一度、1万年に一度というようなことがある中、いろいろなことをみんなとともに解決してきた」「お客様に選んでいただけるいいクルマを作ろうという心あわせぶれずに推進してきた」と言い、この3年で取り組んできたことが2012年は表に現れてくると言う。

 トヨタは今後、新興国での生産比率を上げ、先進国と同等の生産台数にもっていく。その中で、「もっとワクワクどきどきするクルマ」を作り、「もっと仕事ができる環境」を作っていくと言う。超円高の中でも利益を出せる体質に改善する取り組みを続けることで、「新たな成長プラットフォーム作りがやっとできるスタートラインに立ったかなとの感触を得ている」と語った。

(編集部:谷川 潔)
2012年 5月 9日