世界7大都市を巡る「BMW i.BORN ELECTRIC TOUR」が六本木ヒルズで開催 BMW iブランドの「i3」「i8」に加えカーボンシャシー「LifeDrive構造」を初公開 |
10月6日から8日まで、六本木ヒルズ52階「東京シティビュー」にて開催される「BMW i.BORN ELECTRIC TOUR」。開催前日となる5日に、報道陣向けにイベントの詳細をアナウンスする記者会見が実施された。
「BMW i.BORN ELECTRIC TOUR」は、BMWのサブブランドとして立ち上がった「BMW i」のコンセプトやリリース予定の車両を多くの人に周知してもらうためのイベントで、世界7大都市を巡るツアー。すでに、ドイツ・デュッセルドルフとイタリア・ローマでは開催され、東京は3番目の開催地として巡ってきた。ちなみに、これら3都市以外の巡業場所は、ニューヨーク、ロンドン、パリ、上海となっている。
六本木ヒルズ52階のエレベーターを降りるとi3、LifeDrive構造、i8が展示されていた |
記者会見の内容に移る前に、まずBMWのサブブランドとして「BMW i」について紹介しよう。昨年7月に発表された「BMW i」は、次世代モビリティのための専用ブランドで、新たな車両コンセプト、ドライブトレーンの代替技術、新素材、モビリティサービスなど、あらゆる面でこれからのクルマ社会を見ている。車両デザインや生産工程に始まり、最終的にはリサイクルに至るまで、車のライフサイクルにおけるすべてで、持続可能(サステイナビリティ)な個人のモビリティを実現するための革新的なソリューションを提案する。
つまり生産工程、車両に使う素材、使用燃料などにおいて、化石燃料や資源になるべく頼ることなく、クルマ社会をトータルで見つつ持続可能な社会を作っていくことが、BMW iの最大のテーマであり提案になる。
「BMW i.BORN ELECTRIC TOUR」の会場には、BMW iブランドのテーマを具現化したコンセプトカー「BMW i3 Concept」と「BMW i8 Concept」、そして国内初公開となるi3のコンポーネンツとなる「LifeDrive構造」が展示されていた。
国内初公開となった次世代モビリティの基礎骨格「LifeDrive構造」。シャシーは上部のカーボン製のライフ・モジュールと、下部のスチール製のドライブ・モジュールに分かれている。バッテリーを積むことよって重量が増加してしまいがちな電気自動車(EV)だが、ボディーにカーボンを採用することで、重量増をトレードオフしている |
モーターはリアに装備されリアの左右輪を駆動させる |
タイヤは展示用だが、175/60 R19というサイズが装着されていた |
記者会見の冒頭で、まず10月1日付けでBMWジャパンの代表取締役となった、アラン・ハリス氏から自己紹介を含めた新任の挨拶があった。
アラン・ハリス氏は、「BMWの重要なマーケットである日本に着任し非常に光栄で、これからの数年を非常に楽しみにしています。『未来都市』と言われる東京は、この六本木ヒルズからの景色を見ても分かるように素晴らしいというのが第一印象です。BMWとしては、輸入車のプレミアムセグメントでNo.1を維持すること、またMINIブランドの成長や開拓を進めるつもりで、市場のニーズにあった最適なモデルを今後も導入していきます」「その1つとなるのがこの場にあるBMW iで、次世代のモビリティである2つのモデルは、自動車業界が抱く課題に対しても対応できるモデルとなっている」とし、BMW iブランドを含め、これからもプレミアムセグメントに先鞭をつけるようなモデルの導入を検討していくと述べた。
BMWジャパンの代表取締役に就任したアラン・ハリス氏 |
続いて登壇したのは、本国BMW AGに所属し、BMW iセールス&マーケティングディレクターを勤めるDrマキシミリアン・ケルナー氏。
「BMW iは、見ての通り新しいブランドかつ商品となります。未来を先取りしたモビリティで、軽量化を図るカーボンファイバー技術やエレクトリックドライブ、そして将来実現するであろう技術などを盛り込んでいます。ですがBMW iは、BMWブランドが持つポートフォリオから成り立っているので、走る楽しみやBMWらしさは運転すればすぐに分かるはずです。BMW iは、i3とi8からスタートします。i3は大都市での使用にマッチしたモデルで、郊外から大都市、大都市から郊外への移動などでも使えます」と、同ブランドの車両特性を述べるとともに、「外観は小さく見えるかもしれませんが、インテリアはゆったりとした空間が広がっています。i8は、週末の小旅行にぴったりなモデルです。PHVなので航続距離の心配もありません」と、タイプの異なる2台のコンセプトモデルを披露した理由や、BMWらしい走りへの情熱はBMW iでも失っていないことを解説した。
BMW AG BMW iセールス&マーケティングディレクター Drマキシミリアン・ケルナー氏 |
また、国内でプロジェクトBMW iのディレクターを務める丸山英樹氏によると、BMW iのプロジェクトは2007年に組織を横断する形で立ち上がったそうで、各国のプロジェクトチームが大都市のクルマを研究し、この森ビルにもメガシティや都市計画などについて聞きにきた経験があることを紹介。
丸山氏は、「環境変化や都市化、温暖化に人口増加など、世界中を見渡しても大きな課題が数多くあり、2050年には世界の人口の7割が大都市に住むようになると言われています。そうなったときに化石燃料を使い、CO2を大量に排出しているようではいけない。持続可能なモビリティには、既成概念を打ち破る製品や新たな素材、ドライブトレーンが必要になります。そこでLifeDrive構造では、カーボン(CFRP)をボディーに使うことで軽量化を行い、バッテリーはセンターの下側にセットしました。これにより、重量バランスと軽量化を図っています」と、BMW iのプロジェクトチームの生い立ちからコンセプトまでを解説した。
BMWジャパン プロジェクトBMW iディレクター 丸山 英樹氏 |
丸山氏に続いたのは、BMW AGでBMW iシニア・エクステリア・デザイナーを務めるカイ・ランガー氏だ。
デザイナーの視点から見たi8について、「ダイナミックでエモーショナルなデザインをE-モビリティとして実現したプレミアムスポーツカーがi8です。空気抵抗にも優れた流線型のフォルムやリアに流れるラインなどは、とても情熱的」「カラーリングにもこだわりがあり、軽量なシャシーを使っているので重たく見えないようにブラックを効果的に使い、ルーフも塗り分けています。もっとも気に入っているのは、ドアを開けたときに見えるカーボンの装飾。たくさんのカーボンを使い、ユーザーを室内に誘い込むようにしています」と、その作り込みのこだわりようを明かしたほか、「i8は進化したスポーツカーですが、居住性も重要視していて、乗員がリラックスできる快適性も妥協していません。外装の機能面では、ヘッドライトにレーザーライトを採用したことがトピックです。LEDよりも省電力でありながら、LED以上の照射性を持っています」と、エクステリアは抑揚の効いたスポーツカーというルックスであるとした。
BMW AG BMW iシニア・エクステリア・デザイナー カイ・ランガー氏 |
なお、同イベントには未来に対して持続可能かつ新しい視点を持つ企業が、それぞれの開催都市でローカルパートナーとして招かれるそうで、東京では「森ビル」「チームラボ」「リバースプロジェクト」の3社が選ばれた。イベントの最後に、この3社を代表してリバースプロジェクト代表で俳優としても活躍する伊勢谷友介氏から、イベントに展示する商品と概要の説明があった。
伊勢谷氏は、「展示商品のハイライトとなるのが、エアバックを再利用して製作したダウンジャケット。クルマの部品は85%がリサイクルされているが、シートベルトとエアバックだけは未だに処分されています。廃棄されているエアバックに新たな命を吹き込んだのがこのダウンジャケットで、多くの企業やクリエーターとともにコラボして、発売も開始していきます」と、BMW iの持続可能性というキーワードと合致した考え方で、アパレル製品を作っていることを紹介した。
リバースプロジェクト代表の伊勢谷友介氏 |
パートナー企業のリバースプロジェクトが製作したウェア類も展示されている | 奥に見えるのが、エアバックをリユースして生まれ変わったダウンジャケット |
シャシー上部にカーボン製のライフ・モジュールが使われる | シャシー上部と下部に切り分けた考え方 | 次世代モビリティの基礎骨格「LifeDrive構造」がバッテリー重量の問題を解決した |
BMW iのターゲット層 | i3 conceptの概要 | i8 conceptの概要 |
なお、BMW iのWebサイト(http://www.bmw-i.jp/tour)で同ツアーの招待券を先着でプレゼントしているので、時間があるようならBMW iの最新技術と持続可能なクルマ社会、製品などをチェックしに行ってみてはいかがだろうか。6日の15時および17時から、パートナー企業とのワークショップも開催する予定。
(真鍋裕行)
2012年 10月 5日