日産、EV「リーフ」をマイナーチェンジ、航続可能距離228kmに ベーシックグレード「S」を新設定、334万9500円から |
日産自動車は11月20日、電気自動車(EV)「リーフ」をマイナーチェンジして発売した。このマイナーチェンジに伴い、ベーシックグレード「S」を新設定し、従来の2グレードから3グレード構成となった。価格は334万9500円~413万3850円。
モデル | 原動機 | 駆動方式 | 価格 |
G | EM57 | 2WD(FF) | 4,133,850円 |
X | 3,757,950円 | ||
S | 3,349,500円 |
■航続可能距離が228kmに
今回のマイナーチェンジでは、大幅な軽量化、パワートレーンの刷新、回生領域の拡大、空調消費電力の削減などにより、満充電時の航続可能距離が従来の200kmから228kmに、交流電力量消費率は124Wh/kmから114Wh/km(ともにJC08モード)となった。
ボディーカラーは全7色を設定し、新たにダークメタルグレー、ブリリアントホワイトパール、ホワイトを追加した。外観ではこのほか、17インチアルミホイールをGに新たに採用している |
まず軽量化では、従来モデルでトランクルーム側にあった充電器をモータールーム内に移設し、DC/DCコンバーター、ジャンクションボックスと統合した「PDM(Power Delivery Module)」とした。さらにPDM、インバーター、モーター、減速機を一体化してすべてモータールーム内に収め、この統合により30kgの軽量化を行った。さらに、バッテリーの合理化で20kg、その他ボディー関係で30kgと、合計80kgのダイエットに成功している。この充電器の移動に伴い、トランクルームの容量は従来の330Lから370Lに拡大している。
一方、パワートレーンではモーターがこれまでの「EM61」から「EM57」に変更され、最高出力は80kW(109PS)/3008-10000rpm、最大トルクは254Nm(25.9kgm)/0-3008rpmとなった。最大トルクはEM61からやや落ちるものの、ギア比の最適化により発進性能は従来モデルよりも優れるとしており、実用域での効率を高めることで電費改善を図っている。これにより、0-100km/h加速のタイムが3%短縮したと言う。
また、ブレーキペダルを踏んだ際に、油圧ブレーキよりも回生の作動を優先させることでエネルギーを回収する「回生協調ブレーキ」も全面刷新。従来モデルでは7km/h以下でのエネルギー回収を行ってこなかったが、機械構造と制御の高効率化により3km/hまでエネルギー回収をするにようになっている。
そのほかG、Xグレードには、大気中の熱を集め、熱を圧縮して高温の熱にするヒートポンプ式キャビンヒーターを新採用。特に暖房時の消費電力を大幅に低減することができたと言う。さらにエアコンの使用を抑制する装備として、エアコンに送風モードを追加したほか、ステアリングヒーターとシートヒーター(全席)を標準装備し、少ない消費電力で身体が直接触れる部分を温め、体感温度を効率的に上げられるようにした。
また、新たにルーフ外板とルーフトリムの間にアルミフィルムを貼り付け、車内の暖かい(または冷たい)空気を逃がしにくく、車外の冷たい(または暖かい)空気を車内に伝えにくいようにしている。
今回のマイナーチェンジではPDM、インバーター、モーター、減速機を一体化してすべてモータールーム内に収めた。これらを総称して「e-パワートレーン」と呼ぶ |
■仕様・装備の変更
エクステリアでは、スポーティな17インチアルミホイールをGに採用したほか、オートレベライザー付きLEDヘッドランプ、フロントフォグランプをGに標準装備、S/Xにオプション設定した。
また、ボディーカラーにはダークメタルグレー、ブリリアントホワイトパール、ホワイトを追加し、全7色を設定した。
インテリアでは、ブラック内装色を新設定(本革シートはG/Xにオプション設定)するとともに、要望が多かったと言う後列中央席に調整式ヘッドレストを採用した。また、マルチファンクションディスプレイ内に、バッテリー残量を%で表示する機能を追加。加えて、足踏み式パーキングブレーキを採用している。
シフトパターンには新たに「B」レンジを追加(G/X)。「D」「B」レンジともにECOモードを設定しており、加速度は「D」「B」レンジが同じで、「D-ECO」「B-ECO」ではマイルドになる。また、減速度は「D-ECO」よりも「B」「B-ECO」の方が強くかかる設定になっている。
そのほか、ヒルスタートアシストを全車標準装備するとともに、ボーズの7スピーカーシステム「Energy Efficient System」や、視認しにくい周囲の情報を映像で映し出す「アラウンドビューモニター」を、G/Xにオプション設定。さらに高濃度プラズマクラスターイオン発生器を搭載したフルオートエアコンを、Gに標準装備している。
インテリアではアラにブラック内装色を新設定したほか、後列中央席に調整式ヘッドレストを採用した。また、シフトパターンには新たに「B」レンジを追加している |
■到着時バッテリー残量予測などEV-ITも進化
今回のマイナーチェンジで、EV-IT(リーフ搭載のEV専用情報通信システム)も改善が図られ、ドライビングサポートの充実、充電スポット検索/情報提供機能の充実、車両機能との連携が強化された。
主な改善点だが、EVは坂道や高速道路を走行すると電費に影響することから、今回新たに「省エネルート案内/到着時バッテリー残量予測機能」が追加された。これは目的地を設定した際に、山道や高速道路、渋滞などを回避し、もっとも消費電力が少なくてすむルートを案内するというもので、ナビゲーションの地図データに国土地理院が発表している標高データを収録するとともに、車重や空気抵抗値など車両固有のパラメータも加味して算出していると言う。
また、設定した目的地が航続可能距離よりも先にある場合に、充電スポットを案内する機能も追加された。これは自車位置を中心に充電スポットを検索するのではなく、検索時点での航続可能距離を加味して辿りつけるであろうポイントを中心に、ルート周辺で検索を行う機能。これにより、ルートの途中に立ち寄る最適な充電スポットをドライバーに案内することが可能になっている。
一方、ユーザーからの要望が多かったと言う充電スポットの営業時間表示がより分かりやすくなり、定休日や営業時間を考慮して、利用できない充電スポットを専用アイコンで表示するようになった。ただし、隔週定休日、不定期な営業時間については対応していない。
さらに、充電スポットの空き/使用中情報提供機能を追加。これはネットワークに接続された充電スポットのリアルタイム利用状況が、カーウイングスデーターセンターから情報配信されるもので、混雑中の充電スポットは赤く、空いている充電スポットは緑のアイコンで表示される。
メニューページ | 充電スポットの検索ページ |
電費情報・電力消費計のページ |
今回新たに「省エネルート案内/到着時バッテリー残量予測機能」を追加。国土地理院の標高データなどを元に、もっとも省エネなルートを表示。到着時のバッテリー残量予測表示もされるようになった |
■新型および先代リーフ主要諸元
グレード | S | G | 先代G |
定員[名] | 5 | ||
全長×全幅×全高[mm] | 4445×1770×1550 | 4445×1770×1545 | |
ホイールベース[mm] | 2700 | ||
前後トレッド[mm] | 1540/1535 | 1530/1525 | 1540/1535 |
最低地上高[mm] | 160 | ||
室内長×室内幅×室内高[mm] | 2080×1460×1185 | ||
駆動用バッテリー | リチウムイオン電池 | ||
バッテリー総電圧[V] | 360 | ||
バッテリー総電力量[kWh] | 24 | ||
原動機型式 | EM57 | EM61 | |
最高出力 | 80kW(109PS)/3008-10000rpm | 80kW(109PS)/2730-9800rpm | |
最大トルク | 254Nm(25.9kgm)/0-3008rpm | 280Nm(28.6kgm)/0-2730rpm | |
最終減速比 | 8.1938 | 7.9377 | |
交流電力量消費率(JC08モード)[Wh/km] | 114 | 124 | |
一充電走行距離(JC08モード)[km] | 228 | 200 | |
ステアリング形式 | ラック&ピニオン | ||
前/後サスペンション | 独立懸架ストラット式/トーションビーム式 | ||
主ブレーキ形式 | ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスク | ||
タイヤ | 205/55 R16 | 215/50 R17 | 205/55 R16 |
(編集部:小林 隆)
2012年 11月 20日