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内閣府、自動走行(自動運転)に関するSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)説明会
「自動走行の第1の目的は交通事故を防ぐこと」と、渡邉裕之プログラムディレクター
(2015/1/29 19:32)
- 2015年1月29日開催
内閣府は1月29日、庁舎内において自動走行(自動運転)に関するSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)説明会を開催した。SIPは、安倍内閣で閣議決定された科学技術イノベーション総合戦略、日本再興戦略に基づくもので、府省や分野を横断して日本の産業競争力をさまざまな面で向上させていこうというもの。2014年度の予算として500億円が計上されており、10分野に対してのプログラムが行われている。
そのうちの1つとなるのが、自動走行(自動運転)の分野。予算としては25.35億円が配分され、トヨタ自動車顧問 渡邉浩之氏がとりまとめを行うPD(プログラムディレクター)を担当している。
当日は、渡邉浩之PD、国際連携WG(ワーキンググループ) 主査 天野肇氏、白土良太氏(日産自動車)、難波秀彰氏(デンソー)らがSIPでの自動走行の取り組みについて説明した。この分野のプログラムを、SIP-Automated Driving for Universal Services(SIP-adus)と表記しており、以下、本記事でもSIP-adusと表記していく。また、Car Watchでは通常この分野を自動運転と表記しているが、本記事についてはプロジェクト名にあわせ自動走行と表記する。
渡邉PDは、SIP-adusの取り組みについて2013年末から議論検討を開始したと紹介。その中で、自動走行をどう位置づけるかについての議論があり、「第1の目的としては交通事故を防ぐこと」にあるという。日本は2018年の交通事故死者2500人以下に向けて交通事故死者を低減する取り組みを行っており、2014年の交通事故死者は前年よりも260人減少して4113人。これは、10万人あたりの交通事故死者数としては世界で5番目によい状態だという。とはいえ、死者はゼロではなく、近年は高齢者の事故が目立つようになるなど死者の減少ペースが落ちてきている。また、世界では約130万人が交通事故で亡くなっており、今後も増える傾向にあるという。
この交通事故を防ぐために必要なのが自動走行技術で、その導入のために「交通事故低減など国家目標達成」「自動走行システムの実現と普及」「次世代交通公共システムの実用化」と3つの目標を設定。自動化レベルを定義し、官民協力して自動走行の導入を図ろうとしている。そのために必要となるのが、社会の理解。今回の報道陣向けのSIP-adus説明会も、そうした活動の一環となる。
SIP-adusの目標とする自動走行は、完全に無人で走るクルマを目指すのではなく、自動走行の能力を備え、ドライバー主体から自動走行までを遷移するクルマになる。「自分の家から出るときはITSの設備がない、そのためレベル1で走るでしょう。高速道路ではインフラがあるため、レベル2、3で走るでしょう。しかしながら、何かが飛び出してブレーキを踏んだらドライバーが運転する状態になる」(渡邉PD)といい、自動走行とマニュアル運転の間を移行するような使われ方を想定している。
世界の自動走行研究の現状については天野氏から説明。欧州では科学技術・イノベーション戦略「Horizon 2020」に約10兆3000億円が投じられ、そのうち交通分野には8400億円が投資されている。一方、米国ではミシガン州に13万平方メートルの敷地を使った協調型自動走行を試験する設備を作っている。この広大な敷地内に、直線路、市街路、トンネルなどを作って、車車間通信、路車間通信などのテストを行っていくという。
日米欧の自動走行の開発分野については共通点なども多く、2014年11月17日~18日に国連大学 ウ・タント国際会議場で、日米欧の研究者が集うSIP-adus Workshopを開催。その討議内容については、SIP-adusのWebサイト(http://www.sip-adus.jp/workshop/program/index.html)で公開されているとのことだ。
デジタルマップについては日産の白土氏から、つながるクルマ(Connected Vehicle)についてはデンソーの難波氏から説明があった。
今後については、白土氏から東京・お台場での実証試験予定が説明されたほか、天野氏からは2015年10月29日から開催される「第44回東京モーターショー2015」前に何らかの自動走行車両のデモ走行を行いたいとのプランが明かされた。
自動走行の分野は、技術開発はもちろん、交通法規や社会的な合意が必要になる。そうした意味でSIP-adusの取り組みは、技術開発だけでなく国のルール作り、国際間のルール作りまで踏み込んでいくものになる。