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マツダ、金井誠太会長の基調講演「マツダのブランド価値経営」
金井氏「インコース高めのストライクゾーンに、一球入魂で全力で速球を投げ込む!それがZoom-Zoomである」
(2015/4/21 00:00)
- 2015年4月17日開催
マツダの代表取締役会長である金井誠太氏が4月17日、「マツダのブランド価値経営」と題して、日経BPコンサルティング主催の「ブランド・ジャパン」発行15周年記念セミナーで基調講演を行った。「魂動」をテーマとしたデザインや「SKYACTIV TECHNOLOGY」をはじめとする環境対応技術など、ブランドの存在感を高めつつあるマツダの戦略について金井氏が講演した。
基調講演では、東洋コルク工業、東洋工業、マツダと続く同社の歴史を紹介しつつ、浮沈を繰り返してきた経営の歴史について触れ、金井氏は「販売チャネルの拡大」「新車販売台数達成達成至上主義」「販売数量を上げることが最優先のビジネスオペレーション」との考え方に真因があったとの考えを示した。
金井氏は「(当時は)トヨタ、日産に負けまいと頑張っていて、数は力と信じて経営していた。商品もビッグプレイヤーと同じラインアップをそろえ、そのため品ぞろえするだけで手一杯で、全ての商品を競争力の強い商品に仕上げるだけの力がなかった」と分析。その反動として「ディーラーは無理な値引きをしてお客様に売り込み、ブランドが傷ついて経営も傾いた」と振り返った。
ブランド価値を見直すきっかけはフォードとの提携
バブル経済崩壊後の1990年代、当時のマツダは経営危機のためフォードの協力を得ることになったが、マツダのブランド価値について振り返る転機になったのは、フォードとの提携にあったという。
「フォードによる経営が、今につながる大きなターニングポイントになった。当時フォードは、リンカーン、マーキュリー、ジャガー、ランドローバー、ボルボも傘下に収め、各ブランドをどう特徴づけるのか腐心をしていた。マツダはどんなブランドになるべきか、フォードの経営陣はブランドの価値の向上をマツダの経営課題の中枢に据えてくれ、本格的なブランド戦略の策定に着手できた」(金井氏)と話した。
その結果、ブランドイメージの向上のためグローバルブランド戦略として展開された「Zoom-Zoom」の誕生につながり、金井氏は「子供の頃に感じた動くことへの感動やワクワク感、その時の感動を呼び覚ます心ときめく体験を、クルマを通じてお客様に届けることが、マツダの核となる提供価値であると改めて定義した」と説明した。
当時、初代「アテンザ」の開発主査であった金井氏。スライドでは「新しいブランド戦略をフルスケールで体現」「ミッドサイズカーの新たな世界ベンチマークとなる」「すべての面でBetterでなくBest、”最高で超一流、最低でも一流”」「開発、生産、販売、サービスする、購入、所有、使用する、誰もが誇りを持てる商品」など、開発段階にある2000年に示した”志”を紹介。
「経営陣から量産の早期化も要請がありましたが、”高い志を実現するには時間が必要です”と突っぱねさせていただきました。おかげさまで、アテンザはお客様からの評価も高く、世界中で174の賞を受賞しヒット商品になった。これにより、沈滞していた社内も自信を取り戻し、以降の商品開発の考え方にも大きな影響を与えたと考えている」と振り返った。
ものづくりで世界に貢献することを前提に”Zoom-Zoom”なクルマのNo.1に
また、マツダは2007年3月に技術開発の長期ビジョン「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言」を発表する。当時、ハイブリッド技術などの環境技術で先行するトヨタやホンダを横目に「”Zoom-Zoom”の次はなにか?」と焦る幹部もいたといい、金井氏は「2006年に、“2015年にはどんな会社になっていたいのか”を全社で議論することになった。環境規制への対応を含めて、しっかりとして長期ビジョンを作る最大のチャンスであると考えた」と、将来に対する不安を払拭するためにも目標を定める必要性があったという。
さらに金井氏は「世界に向けてマツダならではのものとして貢献できることは何か?を討議し、世界一”Zoom-Zoom”なクルマで走る喜びをお客様に提供する、たとえ10年先でもそれしかないじゃないか」と、金井氏お気に入りのフレーズとして「インコース高めのストライクゾーンに、一球入魂で全力で速球を投げ込む!それが”Zoom-Zoom”である」と紹介した。
その後、マツダは走る喜びをいつまでも提供し続けるため「SKYACTIV TECHNOLOGY」と、すべての基幹ユニットを一新することになる技術革新へチャレンジ、その成果となって現在のラインアップがあるという。
金井氏は、講演の中で技術的ブレイクスルーを実現するためにとった考え方や仕事術、マネジメント方法を披露。講演の最後に「日本は地下資源の乏しい国、工業製品や技術を輸出することは、これからも大きくは変わらない。つまり日本の最大の資源は”人”」とまとめ、会場からは拍手が贈られ講演を締めくくった。