インプレッション

ランボルギーニ「ウラカン・ペルフォルマンテ」(イモラ・サーキット試乗)

最強ウラカン登場

「ガヤルド」以降のランボルギーニは完成度を増し、今やライバルをも超えてしましそうな勢いで進化を続けている。今回、ガヤルド後継モデルの「ウラカン」に新たなファミリーが誕生した。その名は「ペルフォルマンテ(Performante)」。すでにジュネーブショーで発表済みだから、ご存知の方も多いだろう。

 イタリア語でペルフォルマンテとは「高パフォーマンス」という意味だ。そのペルフォルマンテであることを証明しているのが、ニュルブルクリンク・ノルドシュライフェでのラップタイム。これまで、システム出力800PSを超えるハイブリッドカーのポルシェ「918スパイダー」が記録していたタイムを5秒以上も上まわる、6分52秒01という驚異的なラップタイムを叩き出したのだ。

 今回、その高パフォーマンスを検証するために用意されたテストの場は、イタリア・ボローニャにあるイモラ・サーキットだ。イモラと聞いてピンとくる方も多いことだろう。そう、あのアイルトン・セナが事故死した1994年のサンマリノグランプリ。その舞台となったのが、ここイモラ・サーキットだ。

 ボクは初めてイモラ・サーキットを訪れたのだが、イモラ市に隣接するといってもよいほど市街地に近く、すぐ側をサンテルノ川が流れ、歴史を感じさせるとても美しいサーキットだ。全長は5km強、どちらかというとストップ&ゴー的なイメージのコースだが、3速4速ギヤでの中高速コーナーやシケインが多く、そこから中レベルのストレートがいくつもあり、さらにそれらが適度に曲がったり勾配がついていたりと、全開でイケそうでイケなさそうな、なかなかテクニカルなコースだ。メインストレートは比較的長く、今回の最高速はインストラクターの先導車付きではあったが260km/h近くを記録した。

今回試乗したのは、ニュルブルクリンク・ノルドシュライフェで6分52秒01というラップタイムをマークしたウラカンシリーズ最強モデル「ウラカン・ペルフォルマンテ」。日本でも6月に導入が発表され、価格は3163万8800円(税別)とアナウンスされている。ボディサイズは4506×1924×1165mm(全長×全幅×全高。全幅はサイドミラー部含まず)、ホイールベースは2620mm。乾燥重量は1382kg

 コクピットに着座したところから走りの話をしよう。着座した位置から見える前後側方の視界はウラカンそのもの、何も変わらない。Dシェイプのステアリングの下段に走行モードを変更するためのANIMAシステムのスイッチが設置されている。このドライブモードを変更することで、ナビ画面も映し出すことのできる液晶ディスプレイ・メーターパネルのデザインが自動で変更される。シートはリクライニング機構付きのセミバケットタイプで、電動アジャスト式のほかに完全なバケットシート付モデルも用意されていた。両方ともボクにとっては若干大きめだが、サポート性はかなりよい。

 インテリアには今回40kgもの軽量化に貢献したフォージド・コンポジットによるカーボンが採用され、いつもながら感心させられるイタリアンなレザークラフトと相まって実にレーシーな雰囲気を作り出している。レーサーのボクならずとも、速くコースインしたい衝動に駆られるインテリアだ。

エアベント、パドル、ドアハンドル、センターコンソールにフォージドコンポジットを採用
松田秀士氏による車両紹介(6分33秒)

各走行モードをチェック

 走り出そう。左右に設置される長めのパドルはステアリングではなく、ステアリングコラムに設置されるタイプ。そのパドルを操作しながら、インストラクターが操縦するウラカンの後につく。初めてのコースだが先導車がいるから安心。当たり前だが640PS/600Nm、パワーウェイトレシオ2.16㎏/PS、0-100km/h加速2.9秒のモンスターで、いきなりイモラのコースにさぁ行ってらっしゃい、というわけにはいくまい。

 コースインしてアクセルを全開にすると、ピークパワーを発生する8000rpmを飛び越え8400rpmあたりでエンジンリミッターが作動する。そこまでまったくストレスがなく、振動感も4000rpmレベルとほとんど変わらない印象だ。ただし、エキゾーストノートとエンジン内の爆発音の高まりが非常にレーシーで、ノイズに聞き惚れてアップシフトするのを忘れ何度もリミッターを作動させてしまった。ランボルギーニのV10エンジンで最強となったペルフォルマンテのチューニングは、チタンバルブ&スプリングの採用とカムシャフトのデザイン変更でバルブリフト量を拡大。そしてインテークシステムの最適化や、排気パイプの軽量効率化をすると同時に、より高く中央寄りにマウントしている。

ウラカン・ペルフォルマンテではエアインテークシステムの最適化、チタン製バルブの採用、エグゾーストシステムの改良などによって最高出力470kW(640PS)/8000rpm、最大トルク600Nm/6500rpmを発生

 なるほど、だからこのレーシーなサウンドなのだと納得。とにかくエンジンのフィーリングはパワフルでスムーズ。わずか1000rpmで70%以上のトルクを発生させている。話は前後するが、一般道での試乗も行ない、高いギヤをチョイスしての低速走行でも粘り強く扱いやすい。都心での渋滞も難なくこなしそうだ。

 走行モードについては、いわゆるノーマルモードとなる「ストラーダ」でもスポーティで、普通にスポーツドライブする限り、これで十分と感じる。なぜならF1マシンと同じ前後ダブルウィッシュボーン式のサスペンションには磁性流動体のダンパーが採用され(オプション)、ブッシュ類が50%、スプリングが10%、スタビライザーが15%強化されているのだ。さらに20インチのピレリ「Pゼロ・コルサ」はペルフォルマンテ用に専用開発されている。実は一般道での乗り心地も、このストラーダモードなら突き上げ感は若干あるものの、十分長距離が走れるレベルだ。

 サーキットに話を戻そう。「スポルト」に走行モードをチェンジ。もちろんペルフォルマンテは4WD。その前後駆動配分はストラードモードではデフォルトが50:50。それがスポルトでは40:60へとリア寄りになる。ドリフトがしやすくなるような設定なのだ。

 今回は先導車がいるためほぼ試すことはできなかったが、2~3速レベルのコーナリング中に乱暴にアクセルを扱うことでリアの滑りやすさを体感。アクセルOFFのターンインでも、ブレーキを残し気味にすれば不安のない早さでキレイにリアが巻き込む。ただし、そこからアクセルを踏み込もうとすると先導車に追突する危険があるので、それぞれ個別に試してみた。

 そしていよいよサーキットモードともいえる「コルサ」モードに。こちらの前後駆動配分は45:55。そう、サーキットではリアが流れやすくなるモードはタイムに繋がらないのだ。同時にコルサモードでは、電動パワーステアリングと可変ギヤ比のLDS(ランボルギーニ・ダイナミック・ステアリング。オプション設定)の可変幅を抑え、よりダイレクトなフィーリングを優先する味付けとなる。

 実際、コーナリング中のステアリングフィールが重くなることと、狙い通りのラインに乗せられるダイレクトなものに変化する。とにかく安心感を持ってコーナーを攻めることができる。サーキット試乗ではよくあることだが、前走車に乗るドライバーの技量が高いとタイヤの内圧が上がってしまい、ブレーキングなどでフラつき感を覚えるもの。今回もそんな事象に出くわしたが、フロント6ピストン、リア4ピストンのブレーキのコントロール性が高いので、横Gを残したブレーキングも不安なくこなせた。特にコルサモードだとこういう事象でのコントロール性が高い。

松田秀士氏ドライブによるインカー動画(22分22秒)

ペルフォルマンテのハイライト「ALA」とは?

 さて、ここからがペルフォルマンテのハイライトだ。ペルフォルマンテには「ALA(エアロダイナミカ・ランボルギーニ・アッティーヴァ)」というランボルギーニ特許の新しい空力システムが採用されている。これはフロントスポイラー内にアクティブフラップというモーター可変のフラップを配し、これを開閉することで空気の流れを変えるというもの。同時に、リアウィングの底面に開けられたスリットからは、リアボンネット上のエアダクトから取り入れられた空気が放出される仕組みになっている。リアウィング下面のスリットから放出される空気は左右独立してコントロールされる。

ペルフォルマンテではイタリア語で「翼」を意味する「エアロダイナミカ・ランボルギーニ・アッティーヴァ(ALA)」を採用。フロントスポイラーやリアボンネットのエアダクトに電動モーターで動くアクティブフラップを付け、フラップの開閉で走行状況に応じて最適なダウンフォースを得られるアイテム

 では、これがどのような効果を発揮するのだろうか。まず、このALAが作動していない状態、つまりフロントフラップが閉じ、リアウィングからエアの放出がない状態では最大限のダウンフォースが発揮される。なんと、最大垂直ダウンフォースはウラカン クーペ比で750%増しとのことだ。このダウンフォースを知り、高速コーナリングの安定感とニュルブルクリンクでのレコードタイムに納得したのだが、スゴイのはここからだ。ALAが作動するとフロントフラップが開き、フロントスカートに溜まったエアがボディ下面に放出され空気抵抗が減少。同時に、リアウィング下面のスリットからもエアが放出され、空気抵抗が減少してストレートスピードと加速力がアップするのだ。フロントのロジックに関しては分かりやすいかもしれないが、リアウィングはどうして? という方が多いだろう。

 そこで少し説明を加えると、F1レースで雨のレースを見たことがあるだろうか。F1マシンが巻き上げる水しぶきのリアウィング後を見ると、きれいに上方に巻き上げられて走る姿がある。これはリアウィングがしっかりと仕事をして、ダウンフォースを発生しているからだ。つまり、リアウィング下面の空気の流れが上面のそれよりも流速が速くなっていることを意味している。飛行機の翼を上下反対にした状態と同じで、こうなることで揚力が下向きに発生している。つまりダウンフォースだ。

 しかし、同時に空気抵抗も大きくなるため、このスリットから空気を放出することでリアウィング後方に空気の渦が発生し、リアウィング後の空気の流れに変化が起き、例えば水しぶきは真上ではなくより後方に流れるようになる。こうなることでダウンフォースは低減するが、空気抵抗は下がるので加速とストレートスピードが上がるのだ。

リアウィングはペルフォルマンテでのハイライトの1つ

 そして、さらにランボルギーニらしいギミックが与えられている。それはエアロ・ベクタリングだ。トルク・ベクタリングやブレーキ・ベクタリングはご存じだろうか。4輪のうち、ある車輪にだけブレーキをかけて旋回性能をアップさせるテクノロジーで、最近は各メーカーが進化の度合いを早めている。しかしエアロ・ベクタリングとは初耳。これはリアウィング下面の空気放流を左右面で独立させるというものだ。

 例えば右コーナリング中には左側のスリットからのみ空気を放出させることで、リアウィング右側のダウンフォースを増大させ、よりリア内輪に荷重を掛けて安定させようというもの。このALAのシステムはLPI(ランボルギーニ・ピアッタフォルマ・イネルツィアーレ)によって自動的に電子制御されていて、0.5秒でフラップ等をコントロールする。直進時はレスダウンフォースだが、ブレーキング時にはALAがOFFになることで最大限のダウンフォースを発生させるシステムになっている。

 このシステムのおかげで、高速域でのコルサモードでのコーナリングは非常に安定していて、例えばアクセル全開で4速から5速にシフトアップしての左下り坂コーナーでは、少ない操舵角でピタリと路面に吸い付いて旋回してくれた。きっと富士スピードウェイの100R等では、相当威力を発揮するものと思われる。

 歴史を感じさせるイモラの美しいサーキットをしっかりと走り込むことができ、さらにペルフォルマンテの性能を堪能し、とても素晴らしい試乗だった。

ペルフォルマンテ走行シーン(5分51秒)

 翌日は工場見学を行ない、レストア部門のポロストリコや、アヴェンタドールのフルカーボンコンポジット製作現場を取材。また、本社工場内にあるペルソナム・スタジオを見学した。ペルソナム・スタジオは注文時にオーナーがオリジナルのランボルギーニを製作するための、いわゆる打ち合わせスタジオ。さまざまなエクステリア&インテリアの素材が展示されていて満足度の高いものだった。改めて、ランボルギーニの質の高さを確認した試乗会だった。

松田秀士

高知県出身・大阪育ち。INDY500やニュル24時間など海外レースの経験が豊富で、SUPER GTでは100戦以上の出場経験者に与えられるグレーテッドドライバー。現在62歳で現役プロレーサー最高齢。自身が提唱する「スローエイジング」によってドライビングとメカニズムへの分析能力は進化し続けている。この経験を生かしスポーツカーからEVまで幅広い知識を元に、ドライビングに至るまで分かりやすい文章表現を目指している。日本カーオブザイヤー/ワールドカーオブザイヤー選考委員。レースカードライバー。僧侶

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