インプレッション

ランボルギーニ「ウラカン ペルフォルマンテ」(鈴鹿サーキット/富士スピードウェイ試乗)

ニュル最速の市販車

 ランボルギーニに触れる機会はそう頻繁にはないが、あればそのたびに心躍る思いをしている。この夏には鈴鹿サーキットと富士スピードウェイという国際的なコースで開催された試乗会で、最新モデルに乗ることができた。そのうち1台が「ウラカン ペルフォルマンテ」で、2016年秋にニュルブルクリンク北コースで当時、市販車として史上最速となる6分52秒01のタイムを叩き出した話題のニューモデルだ。

 ペルフォルマンテとは、英語でいうパフォーマンスを意味するイタリア語であり、その名のとおりパフォーマンスに特化したウラカンである同モデルには、軽量化、エンジン、シャシー、エアロダイナミクスという特筆すべき4つの点がある。

 軽量化については、レジン母材に炭素繊維を埋め込んだ「フォージドコンポジット」という革新的な素材を導入。従来の素材では不可能とされた複雑な幾何学形状を軽量なまま実現できるのが特徴で、これを運動性能とエアロダイナミクスの両面において重要なオーバーハングを中心に積極採用し、車両重量についても40kgもの軽量化に成功した。

 搭載するV10エンジンは、専用に設計された吸排気系により標準のクーペに対して最高出力30PS増、最大トルク40Nm増を実現。性能向上に合わせてDCTも最適化されている。なお、0-100km/h加速は2.9秒、最高速は325km/hを達成している。

ウラカン ペルフォルマンテが搭載するV型10気筒5.2リッター自然吸気エンジン。ウラカン クーペなどで搭載するものと基本的に同じだが、エアインテークシステムの最適化、チタン製バルブの採用、エグゾーストシステムの改良などによってベースから30PS/40Nm増となる最高出力470kW(640PS)/8000rpm、最大トルク600Nm/6500rpmを発生。0-100km/h加速は2.9秒、0-200km/h加速は8.9秒、最高速は325km/hというスペック

 シャシーは応答性が高められており、「ANIMA」により3段階のドライブモードを選択すると、「ストラーダ」「スポーツ」「コルサ」のそれぞれに合わせて性格が大きく変わる。

 エアロダイナミクスについては、「ALA(エアロダイナミカ・ランボルギーニ・アッティーヴァ)」と呼ぶランボルギーニが開発したエアロベクタリング機能を持つアクティブエアロダイナミクス機構の搭載が特徴的だ。これにより状況に合わせてダウンフォースを増減させたり、コーナリング時には片側ずつ独立して制御するなどしてダウンフォースの最適化を図る。

 空力付加物をまとったレーシーな外観は、速さを追求する上で必要な機能を与えた結果であることは言うまでもないが、このルックスは個人的にかなり好みだ。オリジナルのウラカンもスタイリッシュだが、もう少しアクセントがあるとなおよいなと思っていたところ、ペルフォルマンテはまさしくそれ。インパクトもあり、見るからに速そうに目に映る。

ウラカン ペルフォルマンテのボディサイズは4506×1924×1165mm(全長×全幅×全高。全幅はサイドミラー部含まず)、ホイールベースは2620mm。乾燥重量は1382kg。ニュルブルクリンク・ノルドシュライフェで6分52秒01というラップタイムをマークするスーパーカーだ
エクステリアの随所にランボルギーニの特許素材「フォージド・コンポジット」を採用するとともに、専用開発したアクティブ・エアロダイナミクス・システム「エアロダイナミカ・ランボルギーニ・アッティーヴァ(ALA)」を装備するのが外観上の特徴になる。足下は専用設計のブロンズカラーの20インチホイールと専用開発されたピレリ「P ZERO CORSA」の組み合わせ
インテリアではエアベント、パドル、ドアハンドル、センターコンソールなどにフォージド・コンポジットを採用
エンジンフードもフォージド・コンポジット

刺激的でかつスタビリティも高い

 鈴鹿ではあいにくご覧のとおりの空模様で、近くで避難勧告が出るほどの暴風雨に見舞われた。とはいえ、クルマのよさもわるさも色々なことがより露わになるのがウェットコンディション。インストラクターの先導で走行すると、スタビリティが高く、あまり不安に感じることなく走れたのが印象的だった。

 鈴鹿はあまり走り慣れておらず、水しぶきで視界が限られるなか、先導車についていくのも大変な状況ではあったが、そんな中でもいかんなく発揮されたトラクションとスタビリティの高さに4WDの恩恵を感じた。少し滑らせながらコーナリングしても、限界付近の挙動が穏やかで、かつコントロール性が高いので不安はない。

鈴鹿サーキット走行動画

 そして続く富士では、このクルマ本来のパフォーマンスをつぶさに体感することができた。まずエンジンが標準のウラカンよりもずっと元気なことをあらためて実感。アクセルレスポンスがよく、ベース車に対してこちらのほうが吹け上がりが軽い感じがする。猛々しい中にも洗練されたエキゾーストサウンドも素晴らしい。組み合わされるのがDCTゆえ、シフトチェンジを瞬時にこなしてくれるのもウラカンの強みだ。

 そしてとても乗りやすい。イメージしたとおりに、行きたいところに自在に行けてしまう感覚である。これには例の空力デバイスも効いていることと思うが、まずはあまりに素直な回頭性により気持ちよくターンインできる。そして速度を上げるにつれてタイヤが路面に押し付けられていくような感覚で、それに応じてグリップ感が高まり、安定感が増していく。これぞまさしくエアロベクタリングの効果。空気の力がいかに大きいものであるかを思い知らされた。富士に何カ所かあるハイスピードコーナーをけっこうなペースでドライブしたが、まだまだ先がある印象だ。

 ストレートエンドではメーターが290km/h近くを指していたが、本気で走れば300km/hを超えることに違いない。250km/hを超えてからの安定感もピカイチだ。ドライブフィールは極めて刺激的でありながら、スタビリティも非常に高くて、どんなシチュエーションでも不安なく走れるという相反する要素も兼ね備えている。

富士スピードウェイ走行動画

 これならニュルで最速タイムを出したというのも大いに納得だ。スーパースポーツの世界では錚々たる面々がさらに上の境地を目指して進化し続けているが、その性能を語る上でウラカン ペルフォルマンテは1つの節目となる、記録にも記憶にも残る存在となることだろう。非常に先進的で洗練された、画期的なスーパーカーであった。

岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者の方々にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:堤晋一