インプレッション

ランボルギーニ「アヴェンタドール S」(鈴鹿サーキット/富士スピードウェイ試乗)

進化したフラグシップ

「アヴェンタドール」と言えば、スーパーカーブームの主役だったカウンタック直系のランボルギーニのフラグシップ。そのアヴェンタドールの「S」を冠した最新モデルを、鈴鹿と富士でステアリングを握るチャンスに恵まれ、鈴鹿はヘビーウェット、富士はドライと対照的なコンディションでドライブすることができた。仕事柄、こうしたクルマに触れられる機会がたまにあるのは本当に嬉しいかぎりだ。

 このクルマにはいくつかのポイントがある。その1つは、初期型に対して前後の意匠をはじめエクステリアデザインの一部が変わったこと。全体的によりアグレッシブさを増していて、個人的にもこちらのほうがずっと好みだ。また、デザイン変更によりエアロダイナミクスも進化し、ダウンフォースが大幅に向上している。

 次いで心臓部。伝統のV12エンジンは、最高出力が40HP増の740HPへと引き上げられている。さらには、ランボルギーニ生産車で初採用となる4輪操舵システムにも注目だ。フロントの「LDS(ランボルギーニ・ダイナミック・ステアリング)」とリアを統合して最適に制御される。これに合わせてサスペンションにも改良された最新のプッシュロッドと磁気粘性サスペンション「LMS」を採用している。

2016年12月に発表されたフラグシップクーペ「アヴェンタドール S」。日本での販売価格は4490万4433円。ボディサイズは4797×2030×1136mm(全長×全幅×全高。全幅はミラー部のぞく)、ホイールベースは2700mm
従来モデルの「アヴェンタドール」から空力性能をはじめエンジンおよびラジエター冷却の向上を図るべくフロントまわりのデザインを変更。リアまわりではブラックのディフューザーに垂直フィンを設定するとともに、可動式のアクティブリアウイングなどを搭載。こうした空力性能の改善により、アヴェンタドールからフロントのダウンフォースが130%、ダウンフォースの全体効率が50%(ウイングが最適な位置にある状態の場合)増加したという。ランボルギーニのシリーズ生産車として4輪ステアリングシステムを初採用したのもトピックの1つ。装着するピレリ「P ZERO」のサイズはフロントが255/30 ZR20、リアが355/25 ZR21
アヴェンタドール Sのインテリア。今回からドライビングモードに既存の「ストラーダ」「スポルト」「コルサ」に加え「エゴ」が追加された

40PS出力向上したV12エンジン

パワートレーンは最高出力544kW(740HP)/8400rpm、最大トルク690Nm/5500rpmを発生する自然吸気のV型12気筒6.5リッターエンジンにシーケンシャルトランスミッションの7速ISRの組み合わせ。最高速は350km/h以上、0-100km/h加速は2.9秒

 こんなクルマを目の前にして、テンションが上がらないわけがない。シザースドアを開けて乗り込むと、その気持ちはさらに昂る。これを味わえる瞬間が、まず弟分「ウラカン」との大きな違い。そして、コクピットから眺めた360度すべての景色が特別感に満ちている。

 コースインしてアクセルを踏み込むと、出力向上したエンジンの威力を思い知らされる。もちろんこれまでも十分に速かったところ、高回転域のトルクが増したことで、より力強く盛り上がり、トップエンドにかけて伸びやかに吹け上がるようになった印象を受ける。740HPの加速力というのは、やはりハンパではない。アクセルを踏み込むとともに高まっていく、エモーショナルなV12サウンドにも聞き惚れずにいられない。

 V10を搭載するウラカンだって十分に刺激的だが、この圧倒的なエンジンフィールもまたウラカンとの差に違いなく、ひいては並み居るほかのスーパースポーツに対しても異彩を放つ部分である。

 また、ウラカンにはDCTが組み合わされるところ、アヴェンタドールには重量や寸法の面でより有利なシングルクラッチをあえてこだわって採用している。むろんDCTほどシームレスではないものの、従来よりもギヤチェンジの精度が向上し、よりスムーズに進化したとの説明のとおり、いくぶん駆動抜けの時間も短くなり、扱いやすくなっている。

鈴鹿ではウェット走行を体験できた

進化したフットワーク

別日に富士スピードウェイで開かれた試乗会は、一転してドライ路面でその実力を確かめることができた

 4WDはもとより、新しいアクティブサスペンションと4輪操舵=4ホイールステアリングの採用による効果も体感できる。走る速度域によってリアホイールの向きが変わるのは、すでに世にある4WSと同じ。低速ではより俊敏性が増し、高速ではより安定性が増す。ホイールベースが伸縮するような効果があり、状況に合わせて最適なハンドリングを提供してくれる。大雨に見舞われた鈴鹿でもペースを維持して走ることができたのは、まさしくそのおかげだろうし、富士ではパフォーマンスをフルに引き出して、安全にそれを堪能することができた。この「LRS」の採用により安定性が向上したため、もともと前後の駆動力配分が40:60だったところ、やや後輪寄りに配分できるようになったことで、従来よりもアクセルで積極的に曲げる感覚を楽しめるようになった。

 ドライブモードの「ストラーダ」「スポーツ」「コルサ」の選択によってそれぞれキャラクターが大きく変わるのも面白い。任意にカスタマイズできる「EGO(エゴ)」が新設されたのも今回のニュースの1つで、ネーミングのセンスにもランボルギーニらしいウィットを感じる。

 スポーツモードを選ぶと、より後輪駆動を強調したオーバーステア気味のハンドリングになるとともに、アジリティが高まってクルマが軽く感じられる。コルサモードではトラクションが増し、あえてややアンダーステアが強めになる印象で、挙動が乱れにくくなる。どちらを選んでもコントロール性は高いが、コルサモードのほうが安定感は高い。よりエキサイティングな走りが楽しめるスポーツモードに対し、タイムを狙うときはコルサモードのほうが適している。

 ストレートエンドでスピードメーターは約290km/hを指していた。今回はインストラクターに従って早めにブレーキを踏んだのだが、最終コーナーを本気で立ち上がり、ブレーキをもっと詰めれば、300km/hオーバーは確実だろう。

 レーシングコースでのドライブのあとは、別に用意されたジムカーナコースでパイロンスラロームとちょっとしたジムカーナを試し、ドライブモードの選択によるフットワークの変化をあらためて確認した。低速でも分かりやすく違いが表れる。スポーツモードを選んだときの、このサイズのクルマとは思えない俊敏性が印象的だった。

 弟分のウラカンのほうが一時期ニュルブルクリンクにおけるラップタイムのレコードホルダーだったこともあるほどで、むしろパフォーマンス面では軍配が上がるシチュエーションは少なくないと思うが、このデザインとエンジンフィールに象徴される圧倒的な存在感と特別感こそ、アヴェンタドールなればこそ持ちえるもの。ひいては世にいくつかあるスーパースポーツの中でも、アヴェンタドール Sが他をリードしているように思う。まさしくスーパーカーの中のスーパーカー。唯一無二の存在であることをあらためて実感した次第である。

アヴェンタドール S走行動画(富士)

岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者の方々にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:堤晋一