インプレッション

2017 ワークスチューニンググループ合同試乗会(NISMO編)

初期型GT-Rを長く乗り続けている人へ

「NISMO(ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル)」「無限(M-TEC)」「TRD(トヨタテクノクラフト)」「STI(スバルテクニカインターナショナル)」という4社の合同グループ活動である「ワークスチューニンググループ」。

 NISMOは2017年の合同試乗会に「GT-R」「ノート e-POWER」「エクストレイル」の3台を持ち込んだ。

 GT-Rは初期型の2008年モデルにニスモパーツを装着した車両だ。実は修善寺で開催された前回のワークスチューニング試乗会でドライブしたGT-Rと同じ個体なのだが、前回はサーキット仕様だったところ、今回は会場の群馬サイクルスポーツセンターに合わせ、ストリート仕様に変更しての再登場となる。

 2007年のデビューから10周年を迎えるGT-Rだが、まだ初期型を大事に乗りつづけているオーナーは少なくない。今回の仕様はそうしたオーナーに向けて、さらに今後も10年10万kmと長く乗ってもらえるようにとの思いから企画されたものだ。

 サスペンションには、評判のよい2017年モデルの“ノーマルGT-R”のパーツも用いつつ、普段使いからワインディング程度を視野に、あくまで乗り心地を重視し、快適に走れる仕様を目指したという。

「GT-R ニスモパーツ装着車」(ベースモデルは2008年式のGT-R Premium edition)
11月発売予定という「サイドスカートセット」(左)や「フロントフェンダーセット」(中央)、「フロントアンダースポイラー」(右)などを装着
タイヤ&ホイールは2017年モデルのGT-R NISMO純正品を使っている
排気系には「スポーツチタンマフラー(税別47万8000円)」「スポーツキャタライザー(税別38万円)」を採用
リアウイングに追加する「アドオンリアスポイラー」(11月発売予定)

 いざドライブすると、とても乗りやすいことに感心。このコースは路面がかなりバンピーで幅も狭いのだが、しなやかに動いて衝撃を吸収してくれるので安心してアクセルを踏める。コントロール性がよいので不安なくハイペースを維持して攻めていける。

エンジンチューニングメニューの“S1”は、エンジンとトランスミッションのオーバーホールも実施するフルコンバージョンキット。取り扱い店限定メニューとして11月発売予定

“S1”と呼ばれるチューニングが施されたパワートレーンは、エンジンとトランスミッションのオーバーホールも含め、カムやターボチャージャー、ECUなど一式フルにチューニングして出力向上を図っている。そのフィーリングは素晴らしいのひと言。中間域で力強く盛り上がるトルクに加えてもともと速いVR38DETTが、さらに高回転域にかけてより伸びやかに吹け上がるようになっている。アクセルを踏み込むのが楽しみになる味付けだ。そして、足まわりがよいので、そのパワーを余すことなく路面に伝えることができている。

 初期型の顔をあまり変えたくない人に向けて新たに発売予定のエアロパーツは、SUPER GTのNISMO GT500マシンに携わる空力エンジニアと、日産自動車のGT-Rデザインチームによる異例のコラボで実現したもの。その効果は言うまでもないだろう。

内装は2015年モデルのGT-R Track edition engineered by nismoから「インテリア コンバージョン」している
“ニスモアンバサダー”のミハエル・クルム氏にドライブしてもらい、このクルマのポテンシャルを再確認

 今回も、幸運にも“ニスモアンバサダー”のミハエル・クルム氏の横に乗せてもらうことができたのだが、このクルマのポテンシャルの高さをさらに実感した次第。プロ中のプロが本気の領域で走らせてもしっかり応えてくれる実力の持ち主でもある。

 初期型GT-Rと言うと、もちろん速いが、快適性の面では褒められない部分もあったのは否めず。ところが、こうして手を入れることで、これほどまでに速くて快適に走れるようになることに感心しきりであった。

スポーツドライビングも大得意

 日産の関係者も驚くほどの売れ行きを見せているノート e-POWER。そして、「電気自動車=エコ」という枠にとらわれず、「ノート e-POWER NISMO」で「ワークスチューニングサーキットデイ」や「NISMOドライビングアカデミー」といったイベントに参加する人も増えているそうだ。そんなユーザーに向けて、NISMOも各種チューニングメニューを用意している。

「ノート e-POWER NISMO ニスモパーツ装着車」

 モーターとコンピュータにNISMO独自のスポーツリセッティングを施し、Sモードの加速感と回転特性の変更により、回生が強く効くようにしたことで「ワンペダルドライブ」を実現している。このコースなら終盤にあるヘアピンまで全開で攻めても、ブレーキを踏むことなく走れてしまうほどだ。

 アクセルを踏めば即座に力強く加速してくれるのもe-POWERならではだが、このクルマは加速の特性も変更されていて、より瞬発力のある加速を示すのも楽しい。かなりきつい上り坂でも、ものともせず駆け上がっていく。

要所に「NISMOレッド」の加飾を配したエアロパーツは「ノート e-POWER NISMO」の純正装着品
「カーボンピラーガーニッシュ」はフロントが3万3000円(税別)、リアが1万6500円(税別)
「カーボンドアミラーカバー」は4万3000円(税別)。鏡面には「マルチファンクションブルーミラー」(税別1万9000円)を装着
標準装備品の16インチ(横浜ゴム「DNA S.drive」)から、「ノート NISMO S」で採用している17インチのミシュラン「パイロットスポーツ4」に変更。タイヤサイズは195/55 R16から205/45 ZR17となる
テール径φ85の専用エキゾーストテールエンド

 NISMOのオリジナルチューニングを施したオーリンズ製のサスペンションと、テストを担当した松田次生選手のイチオシというミシュランのパイロットスポーツ4を組み合わせた足まわりも素晴らしい。これにより姿勢変化が小さく、4輪の接地バランスもよい。リアがとことん粘って、フロントは荷重が瞬時に移動して、より俊敏な回頭性を身に着けている。

 加速感にハンドリング、そして回生ブレーキも含め、ドライブしていて楽しく、これほど速くこのコースを走れてしまうとは、コストパフォーマンスとしても相当に高いと思う。

インテリアは「フロアマット」(税別2万7500円)を追加した以外は基本的に変更なし。エアコンベゼルやシフトセレクター外周などがNISMOレッド塗装となり、シートはNISMO専用スエード調スポーツシートを採用する

 ブレーキをあまり踏まずに済むのは、むろんそれは回生制御が強いので減速Gが大きいという意味と、限界性能が高く、コーナリングスピードが速いので、減速しなくても曲がっていけるという両面の意味で。タイトターンの多いコース全体でも本当に数えるほどしかブレーキは必要ない。新しいスポーツドライビングの形を感じさせるクルマである。

SUVであることを感じさせない走り

 エクストレイルは「パフォーマンスパッケージ」装着車だ。パフォーマンスパッケージというのは、コンプリートカーであるNISMOモデルまでいかないが、NISMOモデルのようなルックスやドライバビリティを後付けで装着できるよう、いくつかの内外装や機能パーツを組み合わせてパッケージ化したもので、ほかに「エルグランド」や「セレナ」(旧型)、「リーフ」(旧型)など、NISMOモデルではカバーしきれないいくつかの車種について設定されている。

「エクストレイル NISMO パフォーマンスパッケージ」装着車。ベースモデルはエクストレイルの20X 4WD

 エクストレイルには6月のマイナーチェンジの1年あまり前、現行モデル初期型の途中から設定されていたところ、マイチェンに合わせてエアロキットとアルミホイールのデザインが新しくされた。スポーツサスペンションキット、スポーツステンレスマフラー、小物類などは従来を踏襲している。もちろん、プロパイロットに影響がないことも確認済みだ。

 実のところ、マイチェン前は硬めの乗り心地や中立付近に緩い遊びのあるステアリングフィールなど、いろいろ改善の余地が見受けられたのは否めない。ところが今回ドライブすると、気になっていたところはほぼすべて解消されて、緻密な印象の乗り味になっていた。マイチェンによってクルマ自体が進化したおかげで、よりマッチングがよくなったようだ。

フロントアンダースポイラー、リアアンダースポイラー、サイドスカートをセットにした「エアロキット」は塗装済みで23万8000円(税別)
「スポーツステンレスマフラー」(税別11万8000円)
「ルーフスポイラー」(税別5万5000円)
幅広い日産車に用意される「ドアハンドルプロテクター」(税別2800円)
19インチホイールの「LMX6S」は4万8000円/本(税別)。足まわりも「スポーツサスペンションキット」(税別10万円)に変更され、車高が30mmローダウンしている
「フロアマット」(税別3万6000円)
共通デザインを採用する「オイルフィラーキャップ」(左)は6200円(税別)、「フューエルフィラーキャップカバー」(右)は5500円(税別)。どちらも素材はアルミダイキャスト

 街乗りが主体で、ローダウンさせてハンドリングをより楽しみたいという人にとって、パフォーマンスパッケージはもってこい。実際にドライブしても、操舵に対して一体感のある気持ちのよいフットワークは、SUVであることを忘れさせるほどだ。

 そんなNISMOの3台は、それぞれに相応しい、持ち味を生かしたチューニングが施され、その味付けの巧みさも際立っていた。

岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者の方々にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:堤晋一