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タイで突撃!隣の愛車訪問!? タイの熱いホンダユーザーのコレクションを見た
2016年11月10日 05:00
ホンダアクセスは、本田技研工業が販売する市販車の純正オプションパーツを開発、販売する会社だ。
ホンダ車のユーザーであれば、Modulo(モデューロ)のブランド名をホンダ車のカタログなどで目にしたことがあるだろう。そのホンダアクセスは、SUPER GTにおいて道上龍監督率いる15号車 ドラゴ モデューロ NSX CONCEPT-GTのスポンサーを務めている。10月8日~9日に行なわれたSUPER GT 第7戦タイではドラゴ モデューロ NSX CONCEPT-GTが見事に2位表彰台を獲得するなどの活躍を見せている。
そのホンダアクセスは、SUPER GTタイ戦の終了後に、タイでドライバーや監督などがゲストとして登場するユーザーイベント(別記事参照)などを行なっている。それに合わせて、15号車のエースドライバーである武藤英紀選手、ホンダアクセスの開発アドバイザーを務めている土屋圭市氏の2人が、タイのホンダ車オーナーを訪問するというので同行取材することになった。
そこでお会いしたタイのホンダユーザーは、とても熱い方々だった。
5台のタイプRやS2000など、ホンダ車の博物館のようなコレクション
タイの自動車市場は日本市場といろいろな意味で共通点が多い。その最大の理由は道路を見ているとすぐ分かるが、とにかく日本車が多いのだ。走っているクルマは、ホンダ車のほかにもトヨタ自動車、日産自動車といった日本メーカーのクルマだらけと言っても過言ではない。日本の経済産業省が公開しているデータによれば、タイでの日系メーカーの販売シェアは2013年の時点で88%となっており、データもそれを裏付けている。
タイには地場の自動車メーカーはないので、基本的に国外メーカーのクルマになるのだが、ASEAN域外からの輸入車には車両価格とほぼ同等という高い関税がかけられるため、各自動車メーカーはタイ国内で生産を行なっている。
とくに日本のメーカーはいち早くタイに進出しており、タイの国内販売分、そしてASEAN諸国への輸出をタイから行なっている。そうした事情で、日本の自動車メーカーは国外ブランドながら“タイの国民車”的に扱われていて、各メーカーとも日本と同じように熱心なファンを集めている。
もちろん、ホンダもタイで人気の自動車メーカーの1つ。タイでホンダは「シビック(日本で未発売のFC型4ドアモデル)」「ジャズ(フィットの現地名)」「CR-V」「アコード」などを販売して人気を博している。
今回取材させていただいた2人のホンダ車オーナーは、そうしたタイのホンダファンのなかでも熱狂的な人たちだ。最初に取材したのはパッタ・シャハワットさん(44歳)。
シャハワットさんのホンダ車コレクションを見せてもらったとき、正直に言って度肝を抜かれた。訪れたガレージには、初代「インテグラ タイプR(DC2型)」、初代「シビック タイプR(EK9型)」、2代目「シビック タイプR(EP3型)」、無限(M-TEC)が3代目「シビックタイプR(FD2型)」をベースに300台限定で発売したコンプリートカー「シビック MUGEN RR」、最新の「シビック タイプR(FK2型)」など、タイプRないしはそれをベースにしたコンプリートカーが5台あり、さらに「S2000」や「フィット ハイブリッド RS」などが所狭しと並んでいたのだ。
今回の撮影は、シャハワットさんが経営するレストランの「25G」で行なわれた。レストランなのだが敷地内には立派なガレージが用意されており、そこに前出のタイプR群やS2000などが置かれていた。聞けば、このガレージに置かれているのはシャハワットさんのコレクションのほんの一部なのだという。
レストランの裏側に用意されているガレージに行ってみると、ホンダ車以外にもランボルギーニやフェラーリといったスーパーカーなど、実に多数のコレクションがある。ただ、これらはすべてがシャハワットさんのクルマというわけではなく、実はほかのオーナーから預かっているクルマもあるという。
管理を担当しているシャハワットさんの秘書によれば、空調が整った倉庫で月額6万円で預かり、メンテなども行ない、24時間出し入れ可能ということで、スーパーカーなどを持っているオーナーから人気で、空きスペースの順番待ちが出るほどだという。ちなみに、タイの平均年収は100万円程度とされており、国税庁が発表した日本の平均年収は415万円なので、単純計算でタイでの6万円という金額は、我々にとって24万円に相当することになる。平均的な収入のほぼ1カ月分と言っていいだろう。
そんな多数のタイプRとS2000を持っていて、レストランやガレージを運営しているシャハワットさんは何者なのだろうか?
ご本人によれば、シャハワットさんは「VANACHAI GROUP」という会社で副マネージングダイレクターを務めているという。VANACHAI GROUPは木材を利用した家具を製造するタイのメーカーで、タイだけでなくASEAN諸国や日本を含むアジア各国に輸出しているのだという。その取引先には、世界的に有名で日本にも進出している家具販売チェーンも含まれているとのことで、バンコクの株式市場にも上場している大企業だ。このVANACHAI GROUPはシャハワットさんの祖父が創業した企業で、シャハワットさんはその3代目なのだ。それなら、これだけの財力があるというのも納得だ。
なお、シャハワットさんが持っているタイプRなどは、いずれも日本で販売されたものをタイに輸入した車両だという。シビック MUGEN RRは日本でだけ300台のみ販売されたモデルだし、新型シビック タイプR(FK2型)もタイで売っておらず、そもそも日本でさえ750台が販売されただけだ。いったいどうやって手に入れているのか聞いたところ、シャハワットさんのビジネスパートナーが輸入車事業を手がけており、そのルートで入手しているとのことだった。
ちなみに、シャハワットさんが次に欲しいクルマは新型「NSX」だということだったが、ご存じのとおりNSXは日本でも納車までかなり長い時間が必要な状態。取材に同行したホンダアクセスの関係者に、真顔で「どうにか買う方法はないのか」と聞いているシャハワットさんからは、本当にホンダ車が好きなんだというのがこちらに伝わってきた。
EG型シビック、DC2型インテグラ タイプRなどホンダファンなら熱くならざるを得ないコレクション
2人目のホンダユーザーは、バンコク市内に新居を建設中というナタワット・ドゥラヤーピラディットさん(37歳)。ドゥラヤーピラディットさんはタイで鉄板の販売を行なう企業の経営者で、趣味でレースに参加しているとのこと。
ドゥラヤーピラディットさんが乗っているホンダ車は、まずは普段乗りに使っているという「インテグラ タイプR(DC2型)」と「インテグラ(DC1型)」。さらに「シビック(EG型)」のレース仕様が1台あり、その街乗り用も1台持っているというなかなか通な組み合わせ。
なぜEG型のシビックとDC型のインテグラを選択したのかと聞くと「最近のクルマは電装系がすごいのはいいんだけど、いじることが難しい。本気でいじるなら、この世代のホンダ車が最高」とのこと。
ホンダ車を選んでいるのは、やはり乗ったときのエンジンフィーリングや足まわりなどを評価してそこに落ち着いたとのこと。なお、これらのDC型インテグラやEG型シビックはすでに登場から20年以上が経っている車両で、パーツなどの入手性が気になるところだが、ドゥラヤーピラディットさんによれば中古品が潤沢に出まわっているそうで、それらを使ってメンテナンス可能ということだった。
なお、ドゥラヤーピラディットさんが4台のほかに街乗りとして使っているのは、日本ではすでに販売が終了したCR-V。こちらは2年前に結婚された奥様と、奥様の家族などを乗せて移動する際に利用しているとのことだった。
ちなみに、奥様に「こんなにクルマにつぎ込んでてオッケーなのか?」と聞いてみると「自分のお金でやっているので問題ない、結婚前からそうだってことは知っていましたし」という仏様のようなコメント。趣味にお金をつぎ込みたい人にとっては理解のある伴侶を得ることが重要なのは万国共通ということなのだろうか……。
ドゥラヤーピラディットさんは、新居のガレージ2階部分に趣味の部屋を作っているということなので、そこも取材させて頂いたが、そこにあったのはホンダグッズの山。
一体どこから買ってきたんだろうという展示用のF1タイヤ(本物ではなく、メーカーが店頭での展示用などに作ったタイヤ)、自分のレーシングカー(EG型シビック)のミニカー、ホンダ車のカタログなど、実に多数のホンダグッズが保存されていた。
これを見ただけでも「この人はホンモノだ……」と分かる凄い部屋だった。なお、最後には、ホンダファンにとっては神様の1人と言ってよい土屋圭市氏、ホンダのSUPER GTワークスチームとも言える15号車 ドラゴ モデューロ NSX CONCEPT-GTのエースドライバーである武藤英紀選手の2人に部屋にサインを入れてもらい、ドゥラヤーピラディットさんはかなりご満悦という様子だった。
今回の取材で2人のガレージを取材して感じたことは、やはり2人ともタイではかなり裕福な人なのだとは思うが、かけている金額の凄さだ。2人からクルマのためならお金をかけることは厭わないホンダ車への愛を感じたことが筆者にとって印象的だったし、その対象が日本の自動車メーカーであるということに、日本人としてシンプルに嬉しかったという感想をこの記事のまとめとしたい。
協力:株式会社ホンダアクセス