イベントレポート CES 2020

パイオニア、乗用車などに後付けできる「LiDAR kit」

500mの遠距離計測可能な「次世代 3D-LiDAR」も

2020年1月7日~10日 開催

3D空間データ収集 LiDAR kitを天井に装着したイメージ

 パイオニアの連結子会社であるパイオニアスマートセンシングイノベーションズ(PSSI)は、米ラスベガスで開催されている「CES 2020」(会期:1月7日~10日)で、乗用車などへ後付けでき、車両の周辺環境を高精度・高解像度に検知可能な、3D空間データ収集「LiDAR kit」の試作モデルを出品した。

 LiDAR kitは、3D-LiDARセンサーとカメラ、GNSS(全球測位衛星システム)を一体にしたハードウェアと、物体認識や位置推定、差分抽出を行なうソフトウェアアルゴリズムをセットにしたトータルソリューション。乗用車や業務車両などの屋根の上にLiDAR kitを簡単に後付けでき、複雑な調整を行なうことなく周辺物体の位置や距離、形などを正確に検知し、3D空間データとして収集することができる。周辺環境や路面標示、道路の凹凸などの情報まで含む3D空間データは、地図更新のほか、マーケティング用データの作成などへの活用が可能となる。

PSSIは、3D空間データの収集・活用を効率的かつコストを抑えて行ないたい企業向けに、2020年秋よりLiDAR kitの販売を開始する予定。なお「CES 2020」で出品している試作モデルには、カーメイト製の360度カメラ「d’Action 360 S(DC5000)」を使用している
道路面環境検出(イメージ)
3D空間データ収集(イメージ)

 またPSSIは、自動運転レベル3(条件付き自動運転)以上の自動運転の実現に不可欠とされる「3D-LiDAR センサー」をキヤノンと共同開発しており、パイオニアの「MEMSミラー」を用いたスキャン技術とキヤノンの光学技術を用いた量産モデル(波長 905nm)をブースで展示。さらに量産モデルとともに、両社のコア技術をベースに、韓国のSK Telecomの送受信技術を加えることで計測距離を大幅に伸長させた「次世代 3D-LiDAR センサー」も出品している。開発中の新モデル(波長 1550nm)は、500mの遠距離かつ高解像度な計測が可能となる。

 2020年秋から量産を開始するモデル(準広角短距離用、中距離用、長距離用、広角タイプ)に、次世代の遠距離モデルを加えることで、セキュリティ、交通監視用途、路側センサーなどのモニタリング用途、自動運転車両における遠距離計測など、さまざまな市場やユーザーニーズに対応することが可能になる。また、各LiDARセンサーを使用して物体検知や自車位置推定などを高精度に行なえるソフトウェアも開発、提供が可能となる。PSSIはパートナー企業と技術を持ち寄り、次世代3D-LiDAR センサーのさらなる高性能化、小型化およびソフトウェアの開発を進め、2021年以降の実用・商用化を目指している。

2020年秋より本格的な量産開始を予定している3D-LiDAR センサー
開発中の次世代 3D-LiDAR センサー
Pioneer_3DLiDAR_application_JP(2分26秒)

 PSSIは、パイオニアの自動運転関連事業を承継する新会社として2019年10月1日に設立。高性能で小型かつ低コストなMEMSミラースキャン方式の3D-LiDARセンサーの開発を進め、2020年には本格的な量産を行なうと同時に、3D-LiDARセンサーを活用した高精度な「物体認識アルゴリズム」および「自車位置推定アルゴリズム」「周辺環境情報の差分抽出アルゴリズム」の開発も行なっている。

編集部:塩谷公邦