イベントレポート 東京オートサロン 2020
「シビック TYPE R」開発責任者の柿沼秀樹氏にインタビュー
スポーツカーとしてのダイナミクスを進化
2020年1月16日 08:00
- 2020年1月10日~12日 開催
幕張メッセ(千葉市美浜区)で1月10日~12日に開催された「東京オートサロン 2020」。本田技研工業のブースでは一部改良モデルとなる「シビック」のハッチバックとセダンが展示され、その横にはサプライズとしてシビック「TYPE R」もお披露目。発売は夏ごろを予定しているため詳細は語られなかったが、いくつかのポイントについて、開発責任者である本田技術研究所 オートモビルセンター 第11技術開発室 開発戦略ブロック 主任研究員の柿沼秀樹氏から話を聞くことができた。
スポーツカーとしての進化
――“カタログから完全に落とされるのではないか”などうわさが絶えなかったシビック TYPE Rですが、夏ごろの発売と聞いて安心しました。今回の改良はどのような考えで開発が進められたのでしょうか。
柿沼氏:やはりTYPE Rですから、マイナーチェンジと言えどもスポーツカーとしての進化を遂げないといけません。しっかりとやりきれるところをやりきったところがこのクルマのポイントです。
――具体的にはどういうところなのでしょうか。
柿沼氏:今回はまだすべてを話すことはできないのです(笑)。見た目での現行モデルとの違いは、ベース(シビック ハッチバック)と同様にバンパーのデザインを変更し、ロー&ワイドでスポーツフィールを強調。見た目のスポーツ感を進化させています。
その上で、スポーツカーとしてのダイナミクスを上げるため、エンジンの冷却性能をさらに進化させました。具体的には、現行モデルはハッチバックと同じグリルデザインを採用していましたが、今回のマイナーチェンジでは上の開口をかなり広げることで、そこから空気をたくさん取り入れ、しっかりとエンジンを冷やせるようにしています。その結果、TYPE Rの2.0リッターターボエンジンのパフォーマンスをより発揮できるようアップデートしました。
――足まわりなどでの変更はありますか。
柿沼氏:見えるところではブレーキを変更しました。これまでフロントはブレンボ製のワンピースのディスクブレーキを使っていましたが、今回はそれを2ピースのフローティングタイプに変更し、熱ダレなどによるブレーキフィール、無効ストロークを大幅に改善しました。その結果、タッチもよくなり、スポーツ走行を連続した時のタフネスさを大きく向上させました。
なぜでそこまでやるのか
――独ニュルブルクリンクのラップタイムなどが取り上げられますが、このクルマも狙っているのかなという気がします。
柿沼氏:他車がどうこうではなく、今回は3年目のビッグマイナーチェンジですから、スポーツカーとしてのダイナミクスの進化をしっかり図ることをまず目標としました。すなわち、TYPE Rで言えば速さとクルマとしての基本性能をしっかりと高め、乗ってもらって明らかに進化したなと感じてもらえるように改良しています。
その結果は当然速さにも繋がりますし、お客さまがサーキットなどに行かなくても、普段使いで明らかに進化したなと感じてもらえるようなところを、速さから乗り心地まですべての領域でしっかりと進化させました。
――そうすると、かなり手間暇がかかっているように感じますね。
柿沼氏:会社内でも「何でそこまでやるんだ」と言われています(笑)。しかし、自分たちがやりたいのだからやらせてくれと会社にいって(開発を)進めたというのが今回のマイナーチェンジなのです。
元々の現行シビックのベースモデルとTYPE Rはすごくしっかりと作りましたので、土台としてのポテンシャルの高さがあります。それにプラス3年の時間をかけて、われわれ開発者がもっとこうしたい、もっとよくしたいという思いを、マイナーチェンジ後のハッチバックをベースにしてさらに進化させたわけです。
――もっとこうしたいという一番強い思いは何だったでしょうか。
柿沼氏:クルマは天井なしだと思います。やれるところまでやりたい、やりたくてしょうがないというその気持ちをとにかく形にすることでしょう。当然、現行車は現行車としてしっかり開発して、それのマイナーチェンジとして3年の期間がありました。そこから、もっとあれとこれとそれを(今回は具体的に言えませんが)やりたいと押し進めたのです。ホンダのエンジニアの思いが詰まったスポーツカーですし、今回のマイナーチェンジは進化だと思います。