イベントレポート 東京オートサロン 2020

一部改良した「シビック」について開発責任者の松井充氏にインタビュー

シビックの“ありたい姿”を議論した

2020年1月10日~12日 開催

株式会社本田技術研究所 四輪R&Dセンター 第10技術開発室 技術企画ブロック 主任研究員の松井充氏

 幕張メッセ(千葉市美浜区)で1月10日~12日に開催された「東京オートサロン 2020」。本田技研工業のブースでは一部改良して1月23日に発売される「シビック セダン」「シビック ハッチバック」を展示。会場で改良ポイントについて開発責任者の本田技術研究所 四輪R&Dセンター 第10技術開発室 技術企画ブロック 主任研究員の松井充氏に話を聞くことができたので、そのレポートをお届けする。

シビックの“ありたい姿”を議論した

――2017年9月に現行モデルが発売されて以来、3年目のマイナーチェンジです。今回のポイントについて教えてください。

松井氏:まずハッチバックは、もともと持っていたスポーティさに上質感を加えることをコンセプトに開発しました。一方のセダンは上質感とともにスポーティさをもう少しプラスしています。

――なぜそのような方向性で開発したのでしょうか。

松井氏:シビックは1度日本国内から撤退し、現行車で復活しました。現在、色々なお客さまに支持してもらい好評ですので、さらにその支持の幅を広げたいという思いで今回のアップデートをかけたのです。

――市場の声からその方向性を選んだのか、あるいは社内でその方向性が足りないという意見があったのか、どちらですか。

松井氏:どちらかと言うと後者の方が強いと思います。お客さまの声ももちろんありましたが、それ以上に自分たちで“シビックのありたい姿とは何だろう”と色々議論しながら、TYPE Rを含めてこの3つをマイナーチェンジしたのです。

一部改良して1月23日に発売される「シビック ハッチバック」

ハッチバックは上質、セダンはスポーティ

一部改良して1月23日に発売される「シビック セダン」

――具体的な変更箇所を教えてください。

松井氏:ハッチバックは上質さを際立たせるために「トップロードサンルーフ」をオプション設定。それから防音性能を高めています。適材適所に防音材を追加することで、タイヤから来るロードノイズや風切音などを抑えています。

 セダンはバンパー全体を横基調のデザインにすることで、よりワイド&ローに見えるようにしてスポーティさを高めています。また、フォグランプベゼルのまわりやリアにメッキのバーを追加することで上質さも向上させています。

――ハッチバックの方もワイド&ローに見せているようですね。

松井氏:はい。外観はよりスポーティに、乗っている時にはコンフォート。乗り心地をよく感じさせるために防音材などを追加したのです。

従来はセダン(左)とハッチバック(中央)で共通性の高いフロントマスクが与えられていたが、セダンのフロントバンパーをデザイン変更。バンパーのロアグリルが左右に連続するスタイルとなり、ワイド&ローな雰囲気を演出している
ハッチバックのアルミホイールはデザインを刷新

――足まわりで変更点はありますか。

松井氏:アルミホイールのデザイン変更のみで基本的な変更はありません。

――欧州などからの要望は何かありましたか。

松井氏:世界中からいろいろな要望があります(笑)。そこは適材適所で対応しています。細かいところではスイッチの使い勝手を少し変え、見えないところも少しずつ変更しています。実はスイッチの角が少しトゲトゲしいものがありましたので、その角を落としたりしているのです。

熟成を極める

――かなり熟成方向のように聞こえますね。

松井氏:まさにその通りです。いたずらにデザインを変えるというよりも、本質的なところをどんどん高めていこうというのがこのシビックシリーズのマイナーチェンジの大きな意図なのです。

――今回のマイナーチェンジで一番のこだわりは何でしょうか。

松井氏:しっかりとアップデートさせたというところです。いたずらに外見だけを変えるというのは、このクルマのマイナーチェンジとしての正しい姿ではありません。乗ってもらってしっかりと分かるようなところをアップデートしようという大きなこだわりを持って開発しました。

内田俊一

AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしてデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー 25 バカラと同じくルノー 10。