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富士通テン、事故時の“ドラレコの法的有効性”を調査。その結果は?

富士通テン株式会社のコーポレートコミュニケーション室 宣伝チームの中村康生氏(左)とコーポレートコミュニケーション室 広報チームの樽井孝介氏(右)の2人が“ドラレコの法的有効性”を紹介

 富士通テンは、同社も製品としてラインアップするドライブレコーダーが持つ交通事故の抑止効果を調査。合わせて交通事故の分野を専門とする弁護士からヒアリングを行ない、この結果を一部報道向けに紹介した。

富士通テンにおけるドラレコの歴史

 富士通テンでは2005年にタクシー向けのドラレコをいち早く製品化。翌2006年には一般消費者向けにも製品展開をスタートし、2015年には通信型のドラレコ、2016年にはドラレコ内蔵カーナビ「録ナビ」シリーズを発売している。

 調査報告では交通事故の発生パターンや事故内容、過去10年における発生件数の推移などを分析し、このなかで交通事故では「車両相互」が86.7%と最も多く、類別では「追突」(42.3%)と「出会い頭」(28.1%)が計70.4%を占めると解説。2005年からの10年で交通事故全体の発生件数は右肩下がりの傾向だが、追突+出会い頭の衝突は発生件数があまり減っておらず、割合が高まっていることを報告している。

 こうした前提をもとに、全日本トラック協会が2015年3月に発表したドラレコの導入効果では、月あたりの平均事故発生件数が導入後に56.8%の事故削減効果を挙げていることを紹介。「ドライブレコーダーを装着すると安全運転意識が高まり、事故削減へとつながる」としている。また、2016年に富士通テンが自社のWebサイトで実施したアンケート調査では、交通事故発生時のドラレコの有用度について「非常に役に立った」(29.8%)、「役に立った」(40.4%)で計70.2%となり、「あまり役に立たなかった」(22.8%)、「全く役に立たなかった」(7.0%)の計29.8%を大きく上まわっている。

交通事故の発生は、お盆や年末に多いという傾向
クルマとクルマがぶつかった事故では「追突」「出会い頭」「右左折時」の3種類で7割以上を占める
ドラレコの装着で、事故発生件数が半分以下になったというデータ
ドラレコ装着車で事故に遭った人の7割以上が「役に立った」と回答

カメラの高解像度化、GPS情報の記録などの高性能化で証拠能力を獲得

富士通テン株式会社 コーポレートコミュニケーション室 広報チーム 樽井孝介氏

 また、ドラレコの法的有効性について、梅田シティ法律事務所に所属し、交通事故を専門に扱っている北村泰一弁護士からヒアリングを実施。

 北村弁護士は、交通事故の発生時には当事者双方の主張が食い違うことが多く、過失割合について折り合いがつかなければ当事者自身が法廷で事故状況を証明する「本人尋問」が行なわれることを紹介。この場合は軽微な物損事故でも解決まで半年~1年の歳月が必要となり、費用面での負担に加えて精神的な負荷も大きくなるという。

 それに対し、事故当時の状況がドラレコの映像として記録されていれば「互いの主張が違っていても、片方の主張に合致する映像があるとかなり強い証拠になる」というのが北村弁護士の見解。以前には映像がデジタルデータであれば「内容が改ざんされている可能性もあるので証拠として認められない」という論もあったが、近年ではドラレコの持つ性能が飛躍的に向上。実際に富士通テンが2016年12月に発売した「録ナビ Dシリーズ」の「AVN-D7」「AVN-D7W」では、200万画素カメラと1/2.7型CMOSイメージセンサーをフロントカメラとして標準設定。「HDR(high dynamic range imaging)合成技術」も搭載して、状況に寄らず見やすい映像をフルHD(1920×1080)サイズで記録できる。

 また、GPSを搭載して、録画と同時に位置情報や時刻情報などをデータに保存できる製品も増えている。このように、映像が鮮明でさまざまな情報も盛り込まれたデータを改ざんするためには高いスキルが要求され、誰でも持っているわけではないということから、北村弁護士は「証拠能力は非常に強いと言ってよい」と結論づけている。そのため、ドラレコの映像がある場合には事故後に裁判まで至らず示談交渉のみで終了するケースも多く、さらに裁判になったときも状況について争う場面が減って精神的な負荷が下がるというのが北村弁護士の所感だという。

梅田シティ法律事務所の北村泰一弁護士は、ドラレコの映像は「証拠能力は非常に強い」と結論づける

 これに補足して、富士通テン コーポレートコミュニケーション室 広報チーム 樽井孝介氏は、「現在でも法的な根拠としての“100%の証拠”にはならないことに変わりはないと思います。ただ、我々が2006年の製品を発売した当時は解像度も低く、私たちの製品は当初から音声も同時に記録していましたが、ほかの製品では映像だけというものも多かったのです。こういったデータであれば改ざんされるということも考えられましたが、現在ではナンバープレートの数字まで読み取れるような解像度になり、走行しているスピードや、どの場所で事故が起きたのかといった情報まで一気に出てきます。これを全部変更するというスキルは、多くの人が持ち合わせてはいないだろうというのが弁護士さんや法廷の見解になっているようです」と語った。

“身を守るツール”としてドラレコは有効

富士通テン株式会社 コーポレートコミュニケーション室 宣伝チーム 中村康生氏

 クルマ同士の物損事故に止まらず、人身事故が起きた場合はドライバーが刑事責任を問われることになるが、このときもドラレコが有効に働くというのが北村弁護士の見解だ。

 一例としては人が飛び出してきて事故が起きたときに、「どういった飛び出しだったのか」「避けられたのか」といった状況を映像で確認できる。実際に映像から相手に非があることを証明して、罪に問われなかった事例もあるとのこと。また、意図的に飛び出してくる「当たり屋」の被害から身を守るツールとしてもドラレコは有効であるという。

 このほか、録ナビ Dシリーズでもオプション品として用意されているバックアイカメラの映像についても「非常に効果的」と北村弁護士は評価。交通事故で最も多い追突事故では複数の車両が関連するケースもあるが、事故後にどのような順番で車両が追突したのかで意見が食い違うこともあり、これによって「事故の原因が誰にあるのか」について争いになって解決まで難航することも多いという。そんなときに前方だけを撮影しているドライブレコーダーではなく、前後のどちらも記録していれば事故の状況が明確になり、示談交渉がスムーズに進められるとしている。

 この部分を解説した富士通テン コーポレートコミュニケーション室 宣伝チーム 中村康生氏は「高速道路でも、渋滞の最後尾に続くときなどで事故が起きることが多く、そんなときには2つのパターンがあります。1つは『玉突き事故』で、後ろ側から順次前方のクルマにぶつかっていくというものです。もう1つは『順次追突』というものがあり、先頭となるAという車両に後方から来たBがぶつかり、そこにあとから来たCの車両が止まりきれずにBに追突。この衝撃でBがAに再度ぶつかるといったようなケースです。AはBから2回ぶつけられることになるのですが、こうしたケースはもめることが非常に多いそうです」。

「というのも、BとCの事故負担の割合で、例えばAのクルマが自走不能になった場合、原因が最初にBがぶつかったからなのか、あとからCがぶつかった2回目にあるのか、事故後になると証明が難しくなるからです。そんなとき、録ナビのように後方も同時に記録できるドライブレコーダーであれば順次追突が起きてしまったときもスムーズに示談交渉が進みます」と語っている。

意図的に飛び出してくる「当たり屋」の被害から身を守るツールとしてもドラレコは有効と北村弁護士
車両前後の状況を同時に記録できるバックアイカメラは複数のクルマが関連した事故などで威力を発揮する
オプションのバックアイカメラを追加すれば「順次追突」のようなケースにも対応でき、カーナビの大きな画面で録画内容をチェックできることなどが「録ナビ」の特徴とのこと

 近年では交通事故が起きたとき、警察からドラレコの装着を確認されたり、記録されている映像を提出することを依頼されることもあるという。ドラレコの映像が持つ価値がステータスとして一般に認められるようになっているが、価格の安さから数多く使われている海外製のドラレコにはいざというときにきちんと録画されていないといった場合もあるという。

 樽井氏は「ドラレコは保険と同じで、本来は使われないことが一番いいですが、金額が安いからといっていざという場面で壊れているようでは意味がありません。私たちも『ドライブレコーダ協議会』に参加していますが、みなさんにしっかりとした製品を買っていただき、『ドラレコは役に立つ』と感じていただきたいです」とコメントしている。