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フォルクスワーゲン、2020年に本格導入するEV専用アーキテクチャ「MEB」ワークショップレポート(その2)

ID.ファミリーは後輪駆動だった。バッテリー容量をチョイスでき、航続可能距離は330km~550km以上(WLTP基準)

2018年9月20日(現地時間)開催

ワークショップで初公開されたMEBシャシー

 フォルクスワーゲンは9月20日(現地時間)、ドイツ ドレスデン工場においてEV(電気自動車)専用の新型アーキテクチャ「MEB(モジュラー エレクトリック ドライブ マトリックス)」に関するワークショップを開催した。

 今回のワークショップでは、「MEBアーキテクチャ」「バッテリー・セル」「充電と充電インフラ」という3つのテーマのグループセッションが行なわれており、本稿ではMEBのプロダクトマネージャーを務めるDavid Holbein氏によるMEBアーキテクチャのプレゼンテーションの模様をお伝えする。

独フォルクスワーゲンでMEBのプロダクトマネージャーを務めるDavid Holbein氏

 今回のワークショップで初公開されたMEBシャシーは、同社の新しいEV「ID.(アイディ.)」シリーズに用いられるもので、EV専用にイチから設計された。別記事でも触れたとおり、ID.は5ドアハッチバックのコンパクトカーとSUV、Bセグメントセダン、ミニバンタイプをラインアップすることが予告されており、そのいずれもMEBシャシーを採用する。

 ID.のシャシーでは、電気モーターがギヤボックスとともにリアアクスルに組み込まれ、バッテリーが他のコンポーネントとともに車両のフロア下に効率よく搭載される。これにより、最適な重量配分による優れた走行性能を実現するとともに、乗員に快適な高いシートポジションを提供することが特徴になっている。

 加えて内燃機関を搭載しないことで前後アクスルを車両のより外側に配置することが可能になり、その結果ショートオーバーハング、ロングホイールベースを実現している。電気モーターからリアアクスルへのパワーの伝達は1速ギヤボックスを介して行なわれ、ID.モデルは330km~550km(WLTP基準)の航続距離を実現するという。

MEBを用いるID.モデルはリア側にドライブトレーンを配置(モーターをレイアウト)して後輪を駆動。フロント側にもモーターをレイアウトする4WDモデルもラインアップする。全長はゴルフよりも短く、ホイールベースはパサートよりも長いという高い居住性をうたっている

 Holbein氏は、MEBの特徴について「内燃機関向けのものとはまったく異なるアプローチを取りました。全長はゴルフよりも短いですが、ホイールベースはパサートよりも長い。メイントピックはインテリアスペースが長いことにあります」と述べるとともに、「航続距離について、従来のe-ゴルフ(2017年モデル)はだいたい231km(WLTP基準)でしたが、ID.モデルは330km~550km以上(WLTP基準)を実現します。バッテリー容量はベーシックなものをアップグレードしていくことで航続可能距離を延ばしていくことが可能になります」とアピール。

 また、バッテリーをフロア下に配置することで低重心化できること、そして初代「ビートル」以降のモデルで初採用というリア側にドライブトレーンを配置(モーターをレイアウト)して後輪を駆動すること、さらにフロント側にモーターを追加する4WDもラインアップすることを紹介した。

 加えてMEBはアウディ、セアト、シュコダ、フォルクスワーゲン商用車といったグループブランドで用いられることから、ブランドごとにディスプレイやステアリングホイールなどを変更することで個性を活かしていくことが紹介されるとともに、「ゆくゆくは道路に警告を照射したり、2020年代後半には自動運転技術が盛り込まれていきます」と将来の展望についても触れられた。

 なお、Holbein氏はID.の5ドアハッチバックのコンパクトカーとSUVモデルを2020年に、同社のマイクロバス「Bulli(ブリー)」を現代的に解釈したミニバンやBセグメントのセダンを2022年に導入することを予告。また、アウディ、セアト、シュコダ、フォルクスワーゲン商用車の4ブランドが2022年末までに全世界で27のMEBモデルを投入することを紹介したほか、ID.シリーズがツヴィッカウ工場で生産され、北米や中国では現地生産を行なうことが紹介された。

MEBプラットフォームではバッテリーをフロア下にレイアウト。パサートよりも長いホイールベースで居住スペースに優れる
バッテリー容量はエントリー、ミディアム、ロングレンジの3段階を設定
後輪駆動モデルと4WDモデルを設定
ID.はコンパクトハッチバック、SUV、セダン、ミニバンタイプをラインアップ

 以下、ワークショップに出席した報道陣との質疑応答を記す。

ドライビングパフォーマンスのことを考えて後輪駆動を選択

――バッテリーの容量は何段階で変更可能ですか?

Holbein氏:現在はエントリー、ミディアム、ロングレンジの3段階です。

――エントリーモデルを買った後にスケールアップすることは可能ですか? またバッテリースペースはいずれも同じですか?

Holbein氏:後から変更することは可能ですが、現時点でその計画は今のところないです。クルマを購入する前にバッテリー容量を決めていただきたいというのがわれわれの考えです。スペースはいずれも同じです。

――プラットフォームの材質は?

Holbein氏:ボディシェルを含めスチールで、バッテリーのハウジングはアルミニウムです。“手に届く価格で”というのが重要でしたので、もちろんアルミやカーボンファイバーを用いることは可能でしたが、当然価格が跳ね上がってしまい、それでは意図と違うことになります。

――(4WDモデルにおいて)前後のモーターは同じですか?

Holbein氏:前後で違います。前後のモーターはMEB向けに専用に開発されたもので、リアはPMSM(永久磁石同期電動機)、フロントは非同期モーターで補器になります。フロントモーターは必要な場合に介入するもので、後輪駆動がベースになります。リアモーターはだいたいフロントと比べて2倍の出力を持ちます。タイヤはMEB用に開発したもので、今回は冬用タイヤを履いています。サプライヤーは1社だけではないです。

――(既存の生産モジュール)MQBと比べてMEBとオートノマスドライブの相性についてはいかがですか?

Holbein氏:MEBでは開発の初期段階からオートノマスドライブを想定して開発が進められましたが、MQBはすでに使われているもののため、空いているスペースを探してセンサーを搭載するといったことが必要でした。その違いがあります。

また、MQBとMEBの違いとしてはMQBは前輪駆動ということがあります。MEBはドライビングパフォーマンスのことを考え、トルク曲線が非常に高くなるので後輪駆動の方が重心が後ろにいくということから選択しました。

――車両重量はいくつですか?

Holbein氏:エントリーで1.6tで、それ以外のモデルはまだ決まっていません。