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「人とくるまのテクノロジー展 2019 名古屋」、見どころをダイジェストで紹介
2019年7月18日 17:01
- 2019年7月17日~19日 開催
- 入場料:無料(登録制)
7月17日、名古屋にあるポートメッセなごや(名古屋市国際展示場)で「人とくるまのテクノロジー展 2019 名古屋」が開幕した。会期は7月19日まで。
「人とくるまのテクノロジー展 2019」は5月22日~24日に神奈川県横浜市にあるパシフィコ横浜でも開催されている。こちらの内容についてはCar Watchで詳細に取り上げているので、横浜の模様も合わせて読んでいただければと思う。
さて、名古屋での開催だが、こちらは自動車産業が盛んなエリアに近接しているので出展企業も多く、開催期間は混み合うイベントだ。
開会前には、特設ブースでオープニングセレモニーが開催された。最初は自動車技術会の展示会企画会議 議長の豊増俊一氏が主催団体の自動車技術会について、世界一の自動車研究とそれを担う人材を育成することを目的とした会であることを紹介したあと、本開催のポイントとしてインフラと融合したクルマの進化を生み出す重要技術を15個取り上げて、それぞれの特徴をひと言ずつ解説をした。
次に登壇したのは自動車技術会 会長の坂本秀行氏だ。坂本氏は「名古屋での開催は5回目です。参加企業数は前回を上まわる377社の方々に出展いただきました。人とくるまのテクノロジー展の最大の特徴は、何と言っても自動車技術者、研究者を始めとして業界に関わる皆さんが技術を論議し、交流する場になっている点にあると思っています。また、今の自動車技術では通信やIT、そしてAIなどいろいろな分野の技術者、研究者とも繋がり、これまでの枠組みを超えた交流の場になることを期待しています」と語った。
名古屋のみに出展しているブースをピックアップ
人とくるまのテクノロジー展 2019 名古屋では横浜開催のときと同じ企業も多く参加しているので、本稿では名古屋のみに出展しているブースの中からいくつかの展示物を紹介していこう。
まずはこれから発売されるタイヤ向けの新技術を展示していたTOYO TIREブースだが、こちらの出品物で多くの人に興味深いものとしてあったのが、「トーヨー サイレント テクノロジー(略してTST)」というタイヤが発生する騒音を低減させる技術だ。
まず、タイヤからの騒音だが、そもそもこの音は空気の振動によって生まれるもので、クルマのタイヤは内部が空気で満たされているため、走行中の路面との接触によって発生する入力がタイヤ内部の空気を振動させ、それが騒音になって室内に届く。これが走行ノイズになるといい、こういったものを「タイヤ空洞共鳴音」と呼んでいる。
TOYO TIREではタイヤ空洞共鳴音についての研究を行なっており、その結果としてタイヤ内部の空気の流れを発見し、それをシミュレーションによって可視化することを可能にした。すると、タイヤ内の空気に回転方向への流れと垂直方向への流れがあることが分かり、そこに注目。そして作り上げたのが「空気の流れを活用してノイズの低減を図る」という独自の技術「トーヨー サイレント テクノロジー」である。
TSTを採り入れたタイヤも展示されていたが、それを見る限りではもう完成しているようにも見えた。発売の時期について質問をしたが、詳しい日程は未定とのこと。ただ、そう遠くない時期には発売できそうとのことなので、静粛性の高いタイヤに興味がある方はTST技術のデビューを楽しみしていただきたい。
次に目に付いたのは、ホンダアクセスが販売する「S660 Neo Classic KIT」を装着した「S660」を展示していた積水化成品工業のブースだ。S660 Neo Classic KITはドア以外の外板をホンダアクセスがデザインしたFRP製に変えるものだが、その材料として選ばれているのが積水化成品工業のガラス樹脂だった。
担当者によると、S660 Neo Classic KIT用の素材については自動車メーカーの求める要件を満たすための作りに特徴があり、そこを作ることに苦労をしたという。ただ、積水化成品工業の製品は自動車用部品の中ではユーザーの目の届かないところに使われるものが多いので、S660 Neo Classic KITのように趣味性の高いクルマそのものに使われることについては、開発陣もとても楽しくやれたという。
続いてフレキシブル基板の大手メーカーである日本メクトロンのブースで見かけた「3原触モジュール」というもの。
これは「振動提示部」「温度提示部」「電気刺激提示部」という3つの触感提示手段を世界で初めて指先サイズに搭載した製品で、この3原触モジュールを組み込んだ2つ以上のグローブがあると、1つのグローブが受けた触感や温度をほかのグローブでも共用できるという。さらに触感や温度が予めデータ化されていれば、実際に触れるなどしなくても物に触れているのと同じ感覚を得ることのできる装置だ。
振動部分は実際に物に触れている感覚を幅広い周波数で駆動することで伝え、温度表示部はヒーター(温の状態)とペルチェ素子(冷の状態)を組み合わせた作り。高速で状況を伝えられるようになっている。
用途例として挙げられたのはゲーム、VR(Virtual Reality)、ロボットを使った各種作業、オートモーティブ、モバイル機器などだが、この技術は触感という人間の便利な機能を、これまでとは違うレベルで生かしていける技術だけに、例として挙げたものだけでなく幅広い発展を期待したいものだった。
人とくるまのテクノロジー展 名古屋にはトヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業、スバル、マツダ、三菱自動車工業、スズキ、ダイハツ工業、いすゞ自動車、日野自動車などもブースを出展している。また、デンソー、東レ(TORAY)、NOKといったサプライヤーの出展も数多く、ここに来ると自動車がどのように作られているかがよく分かる。そして自動車のこれからも見えてくるので、時間があれば会場へ足を運んで見てはいかがだろうか。