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今後のクルマ作りに欠かせない「モデルベース」を紹介するメディアブリーフィング
人とくるまのテクノロジー展 2019 名古屋で坂本秀行会長が解説
2019年7月19日 13:52
- 2019年7月17日 開催
愛知県名古屋市にあるポートメッセ名古屋(名古屋市国際展示場)で7月17日~19日、自動車技術会が主催する自動車技術展「人とくるまのテクノロジー展 2019 名古屋」が開催されている。この展示会ではブースでの展示に加え、自動車技術会 会長の坂本秀行氏によるメディアブリーフィングも行なわれたので、本稿ではその内容を紹介する。
ブリーフィングでは自動車技術会の活動とこれからの自動車技術の読み解きについて坂本会長から語られた。また、総務担当理事 展示会企画会議議長の豊増俊一氏と、常任理事の東雄一氏も列座していた。
坂本会長は「まずは自動車技術会について少し紹介させていただきます。自動車技術会は5万人を超えるメンバーがいて、半数くらいが自動車メーカー、自動車用部品メーカーに所属しています。残りの半数の方々は官や大学、そして電機など自動車以外のメーカーの方です。このように多様なメンバーによって構成されている日本最大の学会なのです」と組織の解説を行なった。
続いて活動内容だが「開催している『人とくるまのテクノロジー展』は自動車や部品、計測などいろいろなメーカーの方が集まっていて、それぞれの成果を持ち寄っています。そしてその内容を議論できる場となっています。会の開催趣旨もまさにそこにあります。さらに春と秋には専門技術者同士が議論できるハイレベルな会も行なっています」と代表的な活動を紹介した。
続いて昨今の技術の解説。坂本会長が取り上げたのは「モデルベース」という開発技術についてだ。
坂本会長は「モデルベースはいろいろなところで話題になっていて、経済産業省も推進しているものです。そして自動車技術会も重要な活動として捉えています。では、なぜこれをやっているかということですが、いろいろな研究者や技術者が自分が考えた技術や研究成果、さらにサプライヤーの方が『この部品が自動車にどのように役に立つか?』ということを試せる環境を作るためです。これまで、そういったことがあっても自動車メーカーに実験を依頼するしかなく、道のりが長いものになっていたのですが、モデルベースがあると自分の持っているアイデアや技術、研究成果、部品をその場ですぐに試せるです。これはある意味革命です」と切り出した。
そして「われわれはいろいろな分野の技術が自動車を通じて交わることで化学反応を起こすことを推進していますので、モデルベースはそのために必要な大きなソリューションだと思っています」と語った。
次はモデルベースとは? という話だ。坂本会長はこのことについて「この現実の世界とは別に、もう1つのバーチャルな世界をイメージしてください。そのバーチャルな世界でクルマが動く、これこそがモデルベースの世界です。このバーチャルの世界で重要になるのが、まず制御工学で『プラントモデル』と呼ばれる制御対象です。これは動くものを指します。燃料を入れると動くエンジンや電気を通すと動くモーター、そしてサスペンションなども含まれます。もう1つは『制御モデル』というものです。こちらはアクセルを踏んだときにドライバーが期待するのと同じ出力を出したり、ブレーキを踏んだりしたときもどれくらいの制動を入れるかなど、いろいろなことを決める頭脳です」と説明した。
ここまでの説明でもモデルベースの世界を作るのは大変であると伝わってくるが、さらに坂本会長は「クルマが動く道には歩行者もいるし、植木もあるし、坂もあるなど『交通流モデル』も必要になります。これらを全部そろえて壮大なバーチャル世界を作るのがモデルの世界になります」と付け加えた。
「大変なことですが、こうした世界ができてしまうともうお分かりのように、安全なバーチャルの世界で実験ができるのです。それにこの世界では人が作ったクルマに自分の研究を乗せることも可能になって、結果を見て感じることができるんですね」と続け、モデルベースの活用法も伝えた。
クルマのモデルをバーチャルな世界で走らせるときは、周囲のクルマなどの環境もモデルで作る必要がある。
このことに関しては「自動運転の開発でモデルを使います。頭脳の部分でクルマを動かしているなかで、例えば高速道路の合流に差し掛かったとします。ここでは本線を走るクルマの動きに速いもの、遅いもの、さらに前に入られないよう加速して来るものなどいくつものパターンを設定し、そこでわれわれが作った自動運転の制御系が上手く機能するのかということを実験します。それと新しいアルゴリズムを使ったAIを使うとどんなふうに機能するのかも試せるのです。今の開発現場ではこういうことをドンドンやってます」と坂本会長は語った。
さて、そのような使い方ができるモデルベースだが、モデルを作るには専門的な知識が必要なので、それぞれのメーカーが得意とする分野のモデルを作ることになる。ここで大事なのは各社が作ったモデル同士を組み合わせるときに問題がないことである。そのため流通モデルには統一されたモデリング言語が必要となり、ここは自動車技術会が取り組むところであるとのこと。そのように作られたモデルがまとめて管理され、関係する人が使えるようにしておくと、サプライヤーや大学の人でも自動車の実験ができるようになる。
このように、モデルベースの利用が可能な世界になることで、自動車の開発はこれまでとは違う進化が期待できるという。
このような内容のメディアブリーフィングだった。モデルベースという用語は、運転支援機能や自動運転技術の記事でも出てくると思うので、ここで概要を確認していただければ幸いだ。また、自動車技術会という団体が自動車業界を強力にサポートしていることもお伝えできたと思う。