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【SUPER GT 第7戦 SUGO】予選で光るものがあったModuloの2台に話を聞いた
Q1で2位の64号車 Modulo Epson NSX-GT、Q1/B組トップの34号車 Modulo KENWOOD NSX GT3それぞれのスポーツランドSUGOでの予選の戦い方
2019年9月22日 08:25
- 2019年9月21日~22日 開催
9月21日~9月22日の2日間に渡り、SUPER GT第7戦「2019 AUTOBACS SUPER GT Round 7 SUGO GT 300km RACE」が宮城県村田町のスポーツランドSUGOで行なわれている。9月21日には予選が行なわれ、22日の決勝レースのグリッドが決定した。
Moduloブランドを展開するホンダアクセスがサポートする2台も、特にQ1で大活躍を見せた。GT500に参戦する64号車 Modulo Epson NSX-GT(ナレイン・カーティケヤン/牧野任祐組、DL:ダンロップ)は、牧野任祐選手がドライブしたQ1で2位のタイムをマークして注目を集めた。Q2では6位に終わったが、決勝日の天気次第ではレースの行方に結果を与えそうな“ジョーカー”的な存在の1台になりつつある。
GT300の34号車 Modulo KENWOOD NSX GT3(道上龍/大津弘樹組、YH:ヨコハマ)は大津弘樹選手がドライブしたQ1ではB組のトップタイムをマークして、大津選手はSUPER GTにステップアップして以降初めての公式セッションでトップタイムをマークした。その一方で、道上選手がドライブしたQ2では、他のチームがセッティングなどの変更によりQ1に比べてタイムアップする中で、タイムを伸ばす事ができず、次戦に向けて課題が残ることになった。
Q1で2位のタイムをマークした64号車 Modulo Epson NSX-GT、決勝レースは「雨量次第」
64号車 Modulo Epson NSX-GT(ナレイン・カーティケヤン/牧野任祐組、DL)は、5台のホンダNSX-GT勢の中で、そしてGT500車両全体としても唯一のダンロップタイヤを履く車両としてユニークな存在だ。GT500でダンロップを履く唯一の車両であることはよい面とわるい面の両面がある。わるい方から先に言うと、レースやテストでのデータの量が他のタイヤメーカーに比べてどうしても少なくなる。逆によい面としては、1台だけに集中していることで、車両の特性に適したタイヤを作りこむことができるので、それがはまると無敵の強さを示すことになる。それがバッチリはまった例は、2017年の鈴鹿1000kmレースで、当時の64号車は見事に優勝を果たした(その時のレポートはこちら)。
タイヤメーカーによる激しい競争が行なわれており、タイヤが性能の鍵になるSUPER GT/GT500では、週末の天気を(特に気温)を正確に分析し、土日の持ちこむタイヤを決定する必要がある。というのも、タイヤには作動温度レンジと呼ばれる最適な性能で動くレンジが設定されており、気温が低く路面温度が低いと予想されるなら、それに合わせた低い温度に最適なレンジのタイヤ、そしてその逆に気温が高くて路面温度も高いと予想されるなら高い温度に最適なレンジのタイヤを持ち込む必要がある。
Q1を担当した牧野任祐選手によれば「朝の練習走行ではかなり気温も路面温度も低かったが、その状態ではあまりよくなかった。しかし最後のGT500の占有走行の時間帯では(路面温度が)上がってきてだんだんとよくなっていった。予選で乗った時には温度が上がっていっていい方向に働いた」とのことで、午前9時からのフリー走行では路面温度が低すぎたが、午後の14時からの予選では気温と路面温度がチームとダンロップが想定したところにはまり、いいタイムを出すことができたと説明した。これにより、64号車は牧野選手がQ1で2位、ナレイン・カーティケヤン選手が担当したQ2では6位となった。この結果は64号車にとっては今シーズン最上位の結果で、まずまずの結果と言える。
今回の第7戦は、SUPER GTにとって戦力図が大きく変わるレースと言っていい。というのも、全員ノーハンデの開幕戦を別にして、第2戦以降はポイント×2kgのハンデウェイトを搭載される。それが、この第7戦はポイント×1kgに軽減され、最終戦は0になる。従って、このレースでは上位陣がウェイトを降ろした状態になるのだ。その中で、あまりポイントを重ねられなかった64号車にとっては降ろすウェイトも少ないのが現状で、そうした中で牧野選手がQ1で、2位のタイムをマークしたのは、それだけ今回の64号車の戦闘力が高いということを意味している。実際、Q2を担当したカーティケヤン選手も「予選2回目で乗った時にはフリー走行とは全く違う性能で、いい意味で驚いた」と説明しており、今回の64号車 Modulo Epson NSX-GTはタイヤを含めたパフォーマンスが高い状態になっていることが見て取れる。
ただ、9月22日に行なわれる決勝レースでは、雨の予報が出ており、牧野選手も「レインの性能がどうかは走ってみないと分からない。前戦のオートポリスもそうだったが、レインでは雨量に左右される面がある」と述べ、雨になる見通しの決勝レースでどうなるかは慎重な姿勢を見せた。ダンロップに限らず、今シーズンのウェットレースでは、各社のレインタイヤの性能は、雨量次第になっており、このぐらいの雨量ならダンロップ、逆にこれぐらいならヨコハマ……、といった状況になっており、それが見えない現状ではどうなるか予想もできないというのが現状だからだ。
その意味では、決勝レース、64号車はGT500をかき回してくれる存在になりそうだ。現状64号車はチャンピオンシップ争いに関係がないので、逆に言えばひたすら上位を目指せばよい訳で、牧野選手のいう「雨量」次第では、冒頭で紹介した鈴鹿1000km以来の優勝というのも狙える位置だと言っていいだろう。GT500の他のチームにとっては64号車はチャンピオンシップを左右しかねない「ジョーカー」(どうなるかが読めない)的な存在と言えるだろう。今日のレースでは64号車がどんなところにいるか、注目しながら見ると面白いレースになるのではないだろうか。
チーム創設以来、そしてSUPER GTデビュー以来初めての公式セッショントップとなった大津選手
34号車 Modulo KENWOOD NSX GT3(道上龍/大津弘樹組、YH)にとってスポーツランドSUGOでの予選は、チームにとって、そして大津選手にとって初めての公式セッショントップタイムという歓喜もありつつ、Q2に関してはやや納得いかない結果に終わったという予選になった。
今回の予選は、コースが3kmと短いこともあり、28台のGT300が全車一斉に走るのは無理があるとして2つのグループに分かれて走行した。34号車 Modulo KENWOOD NSX GT3は、第6戦オートポリス大会終了時の成績に基づいて決定されるグループ分けの結果Bグループに入ったが、今回はBグループの方がより熾烈になっていると、現地では話題になったほどより上位に来そうな車両がいるグループで走ることになった。
そうした中でQ1を担当した大津選手は、チーム創設以来、そして昨年SUPER GTに昇格して以来自身として初めて、公式セッションでトップタイムをマークした。大津選手によると「公式テストの時も、そしてフリー走行の時も走り始めからいい感触で、持ち込みセットから大きく変える必要が無いほどだった」とのことで、かなり調子よく走り込みができたそうだ。
なお、今回のレースでは同チームとして、そして大津選手にとっての新しい取り組みとして、フリー走行でまず大津選手が走り、それの感触をチームにフィードバックするという重大な役割を任されている。これまでその役割はチームリーダーであり、大ベテランの道上龍選手の役割だった訳だが、今回からそれが大津選手に任されることになったのだ。チームとしてはホンダの若手ドライバーである大津選手を育成する役割も兼ねているレース参戦であり、それも最終段階に入ってきたということだろう。そうした中で、フリー走行で6位に相当するタイムをマークし、2つのグループに分かれたQ1だったとはいえ、トップタイムをマークした大津選手、名実ともにエースへの“昇格試験”はまずは高得点で合格というところではないだろうか。
ただ、チームにとっては、チームリーダーの道上選手に替わって上位を目指したQ2はやや物足りない結果に終わってしまった。結果から言えば9位と、もっと上位を目指していたチームとしては納得のいかない結果に終わってしまったのだ。道上選手は「周りが自分達の予想を超えた上がり幅を見せた中、自分達はタイムアップできなかった。つまり自分達に上がり幅がなかったということで、納得がいっていない」と説明する。
実はQ2では多くのチームはややセッティングなどを変えて臨んでいた。例えばポールポジションを獲得した61号車 SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝組、DL)は、Q2にQ1のドライバーの助言に基づいてセットアップを若干変えて臨んだと予選後の会見で説明している。実際、34号車と同じようにQ2に進んだ他の横浜ゴム勢ではタイムアップしているチームもあり、そうしたセットアップの変更などが功を奏したと考えることができる。チームリーダーを兼ねる道上選手は「その点は次のレースへの課題だ」と述べ、なぜ他のチームのようにQ1からQ2でタイムをあげることができなかったのかを分析して次のレースで生かしたいと説明した。
ただ、22日の決勝レースは既に何度も言及してきたとおり、雨のレースになることが予想されており、決勝レースに関しては「ヨコハマのウェットタイヤが作動するのかそれが鍵になるが、明日の路面温度などが読めない」と、慎重な姿勢を見せる道上選手だが、逆に言えばクルマに関しては決まっており、レースではウェットタイヤが作動レンジに入りさえすれば、充分戦える手応えを感じているということだろう。