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【SUPER GT 第6戦 オートポリス】「GT500では普通しないようなセット変更をした」。GT500&GT300クラス、優勝2チームの記者会見

大逆転勝利の60号車はピットインを遅らせて「ここはスリックや」

2019年9月8日 開催

GT500クラス、GT300クラスの優勝チーム4選手による記者会見

 オートポリスインターナショナルレーシングコース(大分県日田市)で9月8日、SUPER GT 第6戦「AUTOPOLIS GT 300km RACE」の決勝レースは、既報(GT500優勝は39号車 DENSO KOBELCO SARD LC500。中山雄一選手初勝利)のとおり、GT500クラスは39号車 DENSO KOBELCO SARD LC500が、GT300クラスは60号車 SYNTIUM LMcorsa RC F GT3がそれぞれ優勝を果たした。

 路面コンディションがめまぐるしく変わり、セーフティカーがたびたび導入される荒れた展開のなか、2チームとも絶妙なピットインタイミングとタイヤ選択が決め手となり、終盤のリードや追い上げにつながった。そんなレースの裏側で何が起きていたのか。本稿では優勝した2チームによるレース後の記者会見の模様をお伝えする。

2チームともレース終盤で逆転しての勝利。荒れる展開でとった作戦とは?

GT500 39号車 DENSO KOBELCO SARD LC500

ヘイキ・コバライネン選手

 1年ぶりの優勝は非常にうれしい。今シーズンを振り返るとタフなシーズンで、ポディウムに上がることがなかなかできなかった。前戦の富士スピードウェイでは自分のミスで残念な結果に終わったが、取り返すことができた。

 今週末は最初からクルマの調子がよく、予選でもいいフィーリングをつかんでいて、いい結果が得られると思っていた。今日の天候は2016年のSUGOを思い出す難しいレース。スタートはよかったが、雨が降るということで注意深く走っていた。注意しすぎだったかもしれない。でも、ドライではクルマのパフォーマンスが非常によく、自分のスティントはエンジョイできた。

 中山選手は素晴らしい走りを見せてくれた。途中でホンダのクルマが近づいてきて、気を付けろと無線で連絡した時には「まったく問題ないから安心して」と余裕を持って話をしていたので、彼はプロだなと思った。SARDはみんな1人ひとりが一生懸命頑張っている。僕自身ももちろんベストを尽くしているが、さらに努力したい。中山選手の頑張りは目に付かないかもしれないが、彼は本当に素晴らしいドライバーだと思う。GT500の最初のシーズンにも関わらず、彼のスティントは必ずいい走りをしている。

(次のレースに向けては)期待できる。まだまだ改善の余地はあると思うが、今回のレースで前向きなステップを踏むことができた。SUPER GTでは何があるか分からないのは今週末のことでもよく分かる。僕たちは昨日まではチャンピオンシップを諦めるべきと思っていたけれど、現時点でチャンピオンシップのトップ3に入っている。次のSUGOともてぎも最後まで諦めず、優勝を目指して頑張りたい。

中山雄一選手

 今シーズン、(他のチームの)レクサスが調子がすごくいい中で思うような結果が得られなくて、あと1つ何が足りないんだろう、というところで難しいシーズンを送ってきました。

 ヘイキさんとしっかりコミュニケーションを取り、クルマの方向性をしっかり話し合って、今回のレースウィークではGT500だったら普通はしないような数値のセット変更をして、その変更がバッチリオートポリスに合った。予選では第2戦以来でQ1を通過でき、クルマのパフォーマンスもすごく上がってきて、(昨日までは)やってきたことが全部うまくいってるなと思いました。

 スリックで雨の中を走らなきゃいけない今日のファーストスティントでも、ヘイキさんはすごい力を発揮してくれました。攻めた作戦ができる位置までヘイキさんの力でどんどん順位を上げてくれて、ピットにはこれ以上ないタイミングで入れてレインタイヤに交換できました。

(ピットレーンは)すごく混雑していて、何年か前のSUGOみたいな雰囲気。それもなんとか切り抜けて、混乱した状況でもSARDのメカニックたちがコースに送り届けてくれました。最後は難しいコンディションだったんですけど、今までGT300でブリヂストンタイヤを使ってレースをしていて、同様のコンディションは何度も経験済み。ブリヂストンタイヤがどんなフィーリングだったらどれくらい持つか、というのは経験があったので、それをGT500でもしっかり生かせました。今まで下積みが長かったですけど、それが今回生きたなと感じています。

 ヘイキさんが言ったとおり、ここで優勝したことでチャンピオンシップに手が届く位置まで来ています。SARDが2016年にチャンピオンを獲ったときも、最後の2戦で逆転していたと思う。SARDが持っている“ここぞというときの爆発力”はすごいものがあるというのを今年感じていて、それがしっかり結果につながっています。難しいコンディションであればあるほど、自分たちの力を発揮できるという強みがある。

 今回のセットアップがいい方向にいっているので、これがさらに進めばSUGO、もてぎとシンプルにマシンの強さで戦っていけるんじゃないか、そういうポジティブな1週間を過ごすことができました。デビューイヤーで優勝できてうれしいですし、今後もチャンピオンに向けて強気で頑張っていきたいと思います。

GT300 60号車 SYNTIUM LMcorsa RC F GT3

吉本大樹選手

 この展開は正直あまり想像できていませんでした。昨日の走り始めはコースがすごくダスティなこともあって、持ち込んだタイヤのどちらをどのように使うかの選択が非常に難しかった。そんな中でロング(スティントのテスト)をかけようということで、柔らかめのタイヤで走っていたらデブリを踏んでしまって、タイヤがバーストして、結局ロングがかけられなかった。実際にレースがドライのまま進んだ場合、どういう結果になるのかが未知数な状態でした。

 予選は(チームメイトの宮田)莉朋がいいタイムを出してくれた。自分がミスってしまって12番手からのスタートだったんですけど、今日のレースは途中から雨が降るという予報もあったので、それを絶対にチャンスに変えようと思っていました。

 莉朋は前さえいなければもっと速く走れるぐらい順調に走ってくれてたんですけど、われわれのクルマはあまり直線が速くないので、前にいるGT-Rを抜くには至らず。その後に雨が降ってきて、スリックで行くのかウェットで行くのかというやりとりをずっとしていたので、(ピットインのタイミングを後ろまで)引っ張ってもらいました。

 莉朋が走っているタイミングでは(変えるなら)絶対にレインタイヤだったんですけど、監督は「ここはスリックや」という判断。僕の中ではクエスチョンだったけれど、乗り替わる寸前にコースから湯気が出ているのを確認したので、“これは序盤はしんどいけど必ず乾いてくるだろう”ということで、スリックをチョイスしました。

 ただ、その後すぐにセーフティカーが出てまた雨がたくさん降ってきたので、これは終わったなと(笑)。そう思ったんですけど、意外と路面温度が高かったこともあって(問題なく走れた)。本当にすべてがかみ合って、何か1つが欠けても勝てなかったと思います。

(宮田選手という)トヨタの若手のホープを預かっているにも関わらず、結果が出せないっていうのはやっぱりチームとしても僕としても心苦しかったので、今回、莉朋にまず最初の1勝をプレゼントすることができて本当によかったと思います。ダンロップさんを含めてチームのみんなに、ありがとうじゃなくて、おめでとうと言いたいです。

 日本では鈴鹿とSUGO、そして海外のタイ。この3コースがRC F的に得意とするコースではあるんですが、今回、得意ではないコースでも条件によっては結果が出せることを証明したので、得意なSUGOはもちろんこの勢いのまま結果を出しにいきたいですし、一番苦手としているもてぎも、雨か雹が降ってくれたらまた結果につながるんじゃないかなと思います(笑)。そういう運も味方につけて、残りを悔いなく思いっきり気持ちよくレースしたいと思います。

宮田莉朋選手

 今回はスタートドライバーを担当して、作戦的には(ピットインタイミングを後ろまで)引っ張る方向でした。今年はダンロップタイヤに変えてから全サーキットで挑戦するという形。ダンロップタイヤでのオートポリスのレースは初めてで、12番手スタートからどのように追い上げるか、昨年速かったクルマの決勝の映像とかを見て、その戦い方を真似て挑みました。

 周囲がコースアウトしたりピットインする中で、チームとの(ピットインタイミングについての)無線のやりとりでステイを選びました。(タイミングを遅らせた上でスリックタイヤからスリックタイヤに変えるという)賭けの作戦になってしまったんですけど、クルマもタイヤも今週はすごく自信があったので信頼しました。

 それがうまくいった。最初、吉本選手はけっこうつらい思いをしたと思うんですけど、でも、最終的には勝てた。LMcorsaやTRD、チームの皆さんと一緒に僕も努力したつもりですけど、それ以前の開発時期を含めて、吉本選手、飯田章監督におめでとうと言いたいし、皆さんに感謝してます。

 まさかこのオートポリスで優勝できるなんてレースウィークに入ってからは予想していなかったので、だからこそSUPER GTの面白さ、難しさっていう部分を体感できました。残りの2レース、SUGOに関しては、RC F自体が苦手という感じはないし、前回のテストでもいいものが見つかった感じがあるので、ここで満足せず次も優勝を目指して、吉本選手、チームの皆さんと協力して臨んでいきたいと思います。