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茨城県の境町で自律走行バスを定時・定路線運行へ。国内初の実用化

境町、SBドライブ、マクニカが連携協定。自律走行バス導入のモデルケースに

2020年1月27日 開催

東京都内で開催された記者会見で自律走行バスとなる仏Navya製「NAVYA ARMA(ナビヤ アルマ)」が公開された

 茨城県の境町は1月27日、ソフトバンクの子会社SBドライブ、マクニカの協力の下、公道において自律走行バスを実用化すると発表した。4月をめどに、境町で自律走行バスとなる仏Navya製「NAVYA ARMA(ナビヤ アルマ)」を町内の移動手段として定時・定路線で運行を開始する。

 境町が発表した計画では、自律走行バスNAVYA ARMAを3台購入して、町内の医療施設や郵便局、学校、銀行などをつなぐ海岸の駅さかい~勤労青少年ホームの片道2.5km、往復5kmを走行するルートで自律走行バスの運行を開始する。

 定時・定路線として自律走行バスを運行するプロジェクトは5年計画で、予算は5億2000万円。定員11人以上の車両が一般利用者の移動手段として、特定の期間を限定せずに大半の区間を自律走行するのは国内では初めてという。

NAVYA ARMA
左からゲストの仏NAVYA Chief Business Development OfficerのHenri Coron氏、株式会社マクニカ イノベーション戦略事業本部長 佐藤篤志氏、境町長 橋本正裕氏、SBドライブ株式会社 代表取締役社長 兼 CEO 佐治友基氏

プロジェクト発表まで2か月間でのスピード決断

 同日開催された記者会見には、境町長 橋本正裕氏、SBドライブ 代表取締役社長 兼 CEO 佐治友基氏、マクニカ イノベーション戦略事業本部長 佐藤篤志氏のほか、ゲストとして仏NAVYA Chief Business Development OfficerのHenri Coron氏が出席した。

 会見冒頭の橋本町長によるプレゼンテーションでは、境町は高齢化に伴う免許返納者の増加や鉄道の駅の不足、バスやタクシーのドライバー不足などの課題を抱えており、移動手段の拡充が喫緊の課題になっているという。

 橋本町長は「11月26日にヤフーの記事でSBドライブの記事を発見しました。そして12月26日に佐治社長に会って、1月9日には議会で承認をいただきました。そして1月15日にテストドライブをさせていただいて、本日の発表という、実は2か月間での境町での決断であります。実質、(佐治社長に)会っていただいたのが12月26日ですので、1か月ほどでこのプロジェクトをまとめてまいりました」と、スピード決断であったことを明かした。

ニュース記事の発見から記者会見までの流れを紹介

 今後の具体的な動きとして、まずはSBドライブが保有するナンバー取得済みのNAVYA ARMAを使用して、自律走行バスの運行を開始。夏ごろをめどに、仏Navyaとの販売代理店契約を結ぶマクニカから購入した3台の車両を使用する運行に切り替える予定。

自律走行バスの走行ルート
境町における定時・定路線での運行をモデルケースとして全国の地方自治体での横展開を目指す
境町の紹介や、地域公共交通の維持確保の難しさを紹介するスライド

 記者会見場では、境町、SBドライブ、マクニカの3者が、新しいモビリティサービスを通して、地域や産業の活性化と町民サービスの向上に取り組むための連携協定が締結された。今後3者で境町の発展に取り組んでいくとともに、今回の自律走行バスの導入事例を全国へ横展開することに取り組む計画。

記者会見場で、境町、SBドライブ、マクニカの3者は、新しいモビリティサービスを通して、地域や産業の活性化と町民サービスの向上に取り組むための連携協定を締結した

国内初の自律走行バス実用化をモデルケースにするSBドライブ

「実用化」を強調したSBドライブ株式会社 代表取締役社長 兼 CEOの佐治友基氏

 自律走行バスの実用化に向けて、SBドライブでは自律走行バスに必要な安全管理や運行管理に活用するシステム「Dispatcher」を提供。Dispatcherは車内での転倒事故につながりやすい乗客の着座前発進や走行中の車内移動などを、AI(人工知能)で検知して遠隔監視者に注意喚起を行なう機能や、運行ルートや車両設定の改善のためにそれらの事象が過去に発生した箇所や回数を地図上で確認できる機能、出発地と目的地を指定して遠隔地から車両に走行指示を出す機能などを備える。

 境町との取り組みでSBドライブは、町内のシェアオフィスにサテライトオフィスを開設して、初期の段階ではSBドライブの社員がバスの運行を請け負う事業者のドライバーにサテライトオフィス内でトレーニングを行ない、Dispatcherを活用したバスの運行管理などのサポートを行なうとしている。

これまでの取り組みの紹介
境町での取り組みを示すスライド

 国内初の実用化ということについて、SBドライブの佐治氏は「町長にお会いしてから1か月ということでしたけども、十分な検討。町民の方の試乗であったり議会での議論を経て、われわれも実際に何度も足を運んで現場を見て、いよいよやってみようという話になったら、たまたま日本初だったということになります」と話し、あくまでも普段の生活で実際に役立つことが“実用化”であるとの考えを示した。

 プロジェクトにおいて、SBドライブは自律走行バスの実用化をプロデュースする役割との位置付けで、佐治氏は「われわれはここで徹底的に実用化をしていくために境町にオフィスを開設いたします。dispatcherという運行管理システムを実際に見ることができる、触ることができる、そして自動運転車が動いているところを実感できるdispatcherルームを設置して、われわれもそこに常駐する。そして運転手も配置して、ゆくゆくは地元の交通事業者の方々ともコラボレーションをするわけですけれども、われわれが責任を持ってその立て付けを行なう」との考えを示した。

 SBドライブでは、境町をモデルにして境町と類似した環境や条件における自動運転サービス導入のモデルケースを作り、他自治体の参考となることを目指すとしている。

全国における類似地域への横展開に向けたモデルケースを目指す

自律走行車両のNAVYA ARMAを境町に提供するマクニカ

株式会社マクニカ イノベーション戦略事業本部長 佐藤篤志氏

 自律走行車両NAVYA ARMAを境町に提供するマクニカは、境町が車両を購入後も安定的にバスを運行できるよう、ソフトウェアのサポートを行なうほか、各種センサーのメンテナンス、車両本体については地元の車両整備工場と連携しながら、境町での自律走行バスの運行を支援していくとしている。

 マクニカの佐藤氏は「(佐治社長から)横に動くエレベーターという紹介がありましたが、障害物があったり、子供が通行したり、それを避けて走行することになります。ここで重要になってくるのが自律走行バスに設置されておりますテクノロジーです。自動運転のソフトウェア技術に関しては、一般的に認知、判断、制御ということが必要になります。また、デバイスの方ではクルマが障害物を検知して避けたりするためのセンサーがあり。また、集めたデータを基にマップを作って実走行が安定的に走行できるようにするなど、これらをサポートしていきたい」などと話した。

マクニカによる自律走行バスの技術支援領域
マクニカの事業説明
境町でのプロジェクトでマクニカの役割を示すスライド