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新型「ハリアー」にみる若者のクルマ離れから生き残るヒント グッドデザイン賞ベスト100プレゼン審査
2020年10月21日 11:04
- 2020年10月8日 開催
10月30日に発表される「グッドデザイン大賞」。その候補となる「グッドデザイン・ベスト100」受賞デザイナーによるプレゼンテーション「ベスト100プレゼンテーション審査」が行なわれ、トヨタ自動車の新型「ハリアー」のプロジェクトチーフデザイナー 渡辺義人氏がプレゼンテーションを行なった。
グッドデザイン・ベスト100は、10月1日に発表された2020年のグッドデザイン賞1395件以上の受賞デザインの中から、未来を示唆するデザインとして特に高い評価を受けた100件。グッドデザイン大賞は、その100件の中から10月30日に審査委員と2020年度のグッドデザイン賞受賞者による投票を実施して1件が決定される。
ベスト100プレゼンテーション審査に登壇した渡辺氏は、ハリアーのユーザーは若者の比率が高いことを紹介。そこに、若者のクルマ離れが進む中においてパーソナルモビリティが生き残るヒントがあるのではないかと考えながら、ハリアーの企画を進めてきたという。
渡辺氏は「新型ハリアーはパーソナルモビリティだからできることを改めて見つめ直し、モノ、コト、そしてその先にある価値に着目いたしました。また、若者のクルマ離れが叫ばれる現代でもハリアーは20代、30代のお客さまの比率が非常に高い貴重な存在です。ここに若者のクルマ離れや今後のパーソナルモビリティが生き残るヒントがあるのではないか、そのように考えて企画を取り組んでまいりました」と明かした。
新型ハリアーで目指したものについて、渡辺氏は「華美な高級から、調和なる上質へと価値観をシフトさせ、高級車を他人から憧れられる存在から、より自然で共感を得られる存在にしたいと考えました。言い換えれば付き合ううちにおおらかな大人へと自分を高めてくれるパートナーです。それはこだわりと割り切りにより無駄を研ぎ澄まされたものにこそ、むしろ美しさ豊かさを感じ、惹かれるという若い方が増えてるところにヒントを得ました」と説明した。
具体的なデザインの特徴として、渡辺氏は「走るクルマである以上シンプルではあっても単にスタティックなものでは本来的魅力を訴求できません。そこでエクステリアはスポーツカーにも負けないたくましい足腰を構築し、その上に無駄のない引き締まったキャビンを乗せた新しいタイプのプロポーションとしました。その表面もメッキやキャラクターラインなど装飾に頼らないシンプルな構成でありながらもボディに映り込む景色の移ろいで、さりげなくダイナミックさを表現する挑戦をしてきました。インテリアはスイッチ類が目立ちすぎないように配置し、丁寧なしつらえとパイピングオーナメントでさりげない華やかさを添えました。骨太な骨格とそれを包む表皮は馬の鞍に身を預けるような安心感とダイナミックさを表現いたしました」と紹介した。
また、新型ハリアーのデザインを実現させる取り組みについて、渡辺氏は「今回のデザインは日本の中小企業さまの高い技術力抜きでは成しえませんでした。例えば透明なガラスサンルーフを一瞬で障子のようにしてしまう新技術は、九州の20人ほどの精鋭の方々の技術ですし、パイピングオーナメントは福井県の染色メーカーによる高い印刷成形技術です」と紹介。
さらに、新型ハリアーでは若者でも手の届く価格帯を目指したといい、渡辺氏は「これらを若者でも手の届く価格で実現するという面でもこだわりをもってまいりました。高い日本の技術と美徳感を世界に問いたいという気持ちと、国内生産300万台維持により日本の雇用確保、技術の伝承をしたいという社長の豊田の想いの具現化でもあります」と話した。
このようにして誕生した新型ハリアーは、6月17日の発売後1か月で約4万5000台を受注、月販目標の14倍以上の販売台数を記録した。
渡辺氏は「今回の発売はコロナ禍で先が見通せない不安な時期ではありました。しかし1か月で目標台数の15倍、4万5000台ものご注文をいただきました。それにより全国の販売店、工場、地方関連メーカーは活気を取り戻しております。また狙い通り30代下の方が30%を超える高い販売比率を示しております。これらがもし現代版の“Less is More”というわれわれのメッセージが今の世相を通してお客さまの心にぴったりマッチした結果であるならばと願っております」とプレゼンテーションを締めくくった。