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日産、新EV補助金のWeb勉強会開催 V2H同時購入で最大117万9000円になる環境省新補助金のモデルケース紹介
3種類に増えた補助金からライフスタイルなどに合わせて選択可能
2021年3月10日 10:29
- 2021年3月9日 開催
日産自動車は、1月28日に成立した「令和2年度第3次補正予算」に盛り込まれた2つの新しい補助金について解説する報道関係者向けWeb勉強会を3月9日に開催した。
新たにスタートしたのは、経済産業省の「災害時にも活用可能なクリーンエネルギー自動車導入事業費補助金」、環境省の「再エネ電力と電気自動車や燃料電池自動車等を活用したゼロカーボンライフ・ワークスタイル先行導入モデル事業」の2種類。
オンライン開催された勉強会では、日産自動車 日本マーケティング本部 チーフマーケティングマネージャーオフィス マーケティングマネージャー(EV担当)島村盛幸氏が解説を行なった。
日本政府は2050年までに「カーボンニュートラル」を実現する目標を掲げ、温室効果ガスの排出を実質ゼロする方針。自動車では2035年までに新車販売をEV(電気自動車)やPHEV(プラグインハイブリッドカー)といった電動車だけにするとしており、今回追加された補助金もこの施策を後押しするものとなる。
日産もカーボンニュートラルに向けた独自の目標を用意しており、2050年までに事業活動を含めてクルマのライフサイクル全体でカーボンニュートラルを実現すると定め、2030年代の早期に主要市場に投入する新型車をすべて電動車にすることを目指している。島村氏は「カーボンニュートラルの取り組みにおいても、弊社が展開している電気自動車は非常に重要になります」とした。
また、EVが持つ機能の再確認として、災害時の電力供給についても解説。EVを移動手段だけでなく、停電が発生したときに蓄電池として利用する機能で、EVが搭載する駆動用バッテリーに充電した電気を、自宅や事業所などの駐車場に設置した定置型パワーコンディショナー(V2H)を介して建物の非常用電源として活用できる。例として、日産のEV「リーフ e+」が搭載する62kWhバッテリーの場合、4人家族の一般家庭4日分(エアコン4時間使用)の電気をまかなうことができるとした。
これに加え、可搬型パワーコンディショナー(V2L)が備えるコンセントから充電した電気を取り出すこともでき、最大1500Wのコンセント3個で計4500Wまで出力可能。災害時に避難所などで電力供給して家電製品を使えるようにする。島村氏は「EVは環境に優しいだけではなく、災害時に人々の生活を守れるという機能があることを知っていただきたい」と説明した。
本題である新しい補助金について、これまではEVなどの“クリーンエネルギー自動車”を新車購入するときに、経産省の「クリーンエネルギー自動車等導入補助金」(CEV補助金)が支給されてきたが、1月末の補正予算成立により、新たに上記2種類の補助金が登場。新車購入者は自分の状況に合わせて3種類のいずれかを選んで申請できるようになった。
具体的な内容では、既存のCEV補助金は個人、地方公共団体、その他の法人が対象となり、定められたクリーンエネルギー自動車を購入する場合に誰でも受給可能。支給額は車両によって異なるが、リーフの場合では32万円~42万円となっている。
環境省の新補助金では個人、民間事業者(中小企業のみ)、地方公共団体が対象となり、クリーンエネルギー自動車の新車購入に加え、自宅や事業所の電力として「100%再生可能エネルギー由来の電力」を調達すること、政府が実施する調査にモニターとして参加することの2つが条件となる。支給額はリーフの場合、48万2000円~80万円となり、さらにV2H機器やV2L機器を合わせて購入すると、V2Hの場合は本体価格の2分の1と設置する工事費用の最大40万円(法人などは最大95万円)が補助される。また、V2Lの場合は本体価格の3分の1が補助される。なお、再エネ電力の調達に関して、すでに導入済みの場合は契約していることを証明すれば受給対象となる。
経産省の新補助金は個人のみが対象となり、クリーンエネルギー自動車の新車購入に加え、V2H機器かV2L機器を導入し、政府が実施するアンケートへの回答、災害発生時に可能な範囲で自治体に協力することなどが受給条件となる。支給額はリーフの場合、36万1000円~60万円となり、これに加えてV2H本体価格の2分の1と設置する工事費用の最大40万円、V2L本体価格の3分の1のいずれかが補助される。
要素が入り組んでいるところを島村氏が整理。購入者が電力を再エネプランに切り替えてもいい場合には環境省による新補助金の対象となり、車両購入で最大80万円が支給される。さらにV2Hを導入すると、ニチコン製の「EVパワー・ステーション プレミアムモデル」(87万7800円)の場合は本体補助の39万9000円と工事費補助の最大40万円が支給される。
再エネプランに切り替えない場合でも、V2HかV2Lを導入すると経産省の新補助金が対象になり、上記と同じ補助を受けられる。どちらも必要ない人は従来から行なわれているCEV補助金で、リーフの場合は最大42万円が支給される。
購入のモデルケースも示され、環境省の新補助金を受けてV2Hを導入しない場合、62kWhバッテリーを搭載するリーフ e+ Xグレード(441万1000円)は80万円の補助金で実質361万1000円。40kWhバッテリーを搭載するリーフで一番安いSグレード(332万6400円)では73万7000円の補助金で実質258万9400円で購入できると紹介した。
また、V2Hを導入する場合、経産省の新補助金で最大97万9000円が補助されるほか、合わせて再エネプランに切り替えると環境省の新補助金の支給対象となり、最大117万9000円が補助される。島村氏は「118万円ほどの支給額があるので、ほぼV2Hの導入費用をただでまかなえる可能性がある点がこの補助金のミソかなと思います」と語った。
環境省の新補助金でキーになる再エネ由来の電力プランについても説明。太陽光、水力、風力などの再生可能エネルギーで発電した電気を電力会社が提供する契約プランとなり、従来からある電力よりも調達コストが割高になって価格が高めなケースも多いが、今回の補助金制度のスタートと合わせて新電力各社で対応プランを拡充。従来からある電力会社と比較して新電力各社の電気料金自体が割安になっていることも多く、再エネ由来の電力プランを選んでもそれほど変わらず導入できるのではないかと島村氏は分析した。
この申し込みはインターネットや電話などで簡単に手続き可能なほか、一部の日産ディーラーでは新電力5社による「日産お薦めの電力プラン」を取り扱っており、リーフの購入と合わせて切り替えをワンストップで行なえるという。
V2Hについては再度解説が行なわれ、販売されている定置型蓄電池よりV2Hでリーフを利用するメリットについて「定置型蓄電池よりも大容量」「圧倒的なコストパフォーマンス」「家全体で電気を利用可能」という3点があると紹介された。
容量については、定置型蓄電池の場合は消防法との関係でリチウムイオン電池は17.76kWhの上限があるが、リーフはより大容量の40kWh、62kWhの駆動用バッテリーを搭載する。コストパフォーマンスでは定置型蓄電池は容量7.2kWhの製品でも約200万円となっており、28万円/kWhの換算になる。これがリーフ(40kWh)の場合、車両本体とV2H機器を合わせても12万円/kWhと大きなアドバンテージがあるという。このほか、一般的に定置型蓄電池は100Vのコンセントにしか給電できないが、リーフ+V2Hは200Vまで対応してすべてのコンセントに給電できるとアピールした。
また、ニチコン製のV2H機器の販売状況も合わせて紹介。累計出荷台数は約8500台となっており、とくに201年度以降に“卒FIT”と呼ばれる再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度が満了した人がV2Hに切り替え、自宅などで発電した電気をEVに充電して夜間利用するケースが増えてきているという。また、ここ数年の災害発生による停電に対応する防災需要もV2Hに追い風になって、販売が加速度的に増えているという。
このほか、リーフは初代モデルが2010年12月に発売されてから10年が経過。累計で50万台以上を販売し、バッテリーは1台あたり192セルで9600万セル以上を世に送り出しているが発火などの重大不具合は1件も起きておらず、日産はEVの品質と信頼性に絶対の自信を持っているとした。
解説終了後には質疑応答を実施。日産でのEV購入者におけるV2Hの認知度についての質問では、「ニチコンが2020年度に出荷したV2H機器が約1800台で、同じく2020年度のリーフ販売台数が1万台弱になることから、単純計算では18%の人がV2Hを認知してリーフで利用しているかと思います。初期のころはV2Hの認知度は限定的だったと思いますが、“卒FIT”や災害対策などで多くのお客さまに認知が進んでいるかと考えております」と島村氏は回答。
マンション居住者が新しい補助金を利用できるかという点に対しては、マンションではV2H機器の導入はハードルが高いが、環境省の新補助金については、住んでいるマンションで電力契約を個別に結んでいる場合、契約を切り替えて受給可能になると答えている。
日産では防災関連に積極的に取り組んでいるが、これを事業化するような予定があるかという問いかけに対しては、経済的なメリットを得るという想定ではなく、EVの普及によって住む人の生活をエネルギーマネージメントによって安定させたいという思いから「ブルースイッチ」の活動を続けているとした。