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ヒョンデ、「迷途知返」を基本姿勢として日本市場に再参入 BEV「アイオニック ファイブ」とFCEV「ネッソ」公開
2022年2月9日 10:49
- 2022年2月8日 開催
ヒョンデ モビリティ ジャパンは2月8日、日本参入戦略について説明し、5月からオーダー受付を開始する「IONIQ 5(アイオニック ファイブ)」「NEXO(ネッソ)」の2モデルを実車展示する記者発表会を都内で開催した。
韓国の自動車メーカーであるヒョンデは2001年から日本市場での新車販売をスタートさせ、独自の魅力でファンを獲得したが、設定した販売目標をクリアできなかったことなどの理由から2009年12月に乗用車販売を停止。以降は観光バスなどを販売してきた。
今回の日本市場再参入では販売店の展開を行なわず、車両の紹介や見積もり、注文、決済、配送手配までをすべてWebサイトやアプリで完結する新しいビジネスモデルを採用する。すでに新しいWebサイトが公開されており、BEV(バッテリEV)であるアイオニック ファイブ、FCEV(燃料電池車)であるネッソの車両概要も掲載されている。5月からオーダー受付を開始して、7月からのデリバリーを予定。価格はアイオニック ファイブが479万円~589万円、ネッソが776万8300円。
このほか、2モデルの車両概要や販売体制などについては関連記事「ヒョンデ、ZEVで日本市場に参入 479万円のBEV『IONIQ 5』とFCEV『NEXO』2車種導入」を参照していただきたい。
「迷途知返」を基本姿勢として日本市場に再参入
発表会では冒頭のイメージムービーに続き、新型コロナウイルスの感染拡大といった社会情勢を受けて来日の叶わなかったHyundai Motor Company 社長兼最高経営責任者(CEO)張在勲氏によるビデオメッセージを紹介。
張氏は以前の撤退は自分たちがユーザー1人ひとりの声にしっかりと耳を傾けることができなかったことが原因だと分析。それからの12年間でこの失敗と向き合い、「1度道を間違った後に、正しい道に戻って改める」という意味を持つ「迷途知返」ということわざを基本姿勢として日本市場に再参入すると語った。
また、今回の参入では「LIFE MOVES」と名付けた新しいライフスタイルを日本のユーザーに提供。「LIFE MOVES with Smart Experience of Mobility」「LIFE MOVES with Sustainable Mobility」「LIFE MOVES with Freedom in Mobility」という3つのモビリティ戦略でLIFE MOVESを具現化すると述べ、こういったモビリティ戦略を通じてカーボンニュートラル社会の実現に貢献しながら、ユーザーに新しい価値を提供し続けていくとコメントしている。
ネッソは“リバーストーン”からインスピレーションを得たデザイン
車両の解説は、ヒョンデ モビリティ ジャパン R&D center デザインチーム チーム長 占部貴生氏と、ヒョンデ モビリティ ジャパン シニアプロダクトスペシャリスト 佐藤健氏の2人から行なわれた。
車両説明に先立ち、佐藤氏は2020年10月に、日本政府が「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」というカーボンニュートラルを宣言したこと、さらに子供たちの世代に受け継いでいく未来に対する責任、自然と人間の共存といった目的から、ZEV(Zero Emission Vehicle)である2モデルを今回の導入車両に決定したと紹介。ヒョンデが提唱するカーボンニュートラルソリューションの1つが水素エネルギーの利用であり、20年にわたって水素基盤の技術開発を続けており、この成果の1つがFCEVのネッソだとした。
また、発電のために取り込んだ外気は内部に設置された3つの空気浄化システムによって汚染物質を除去するため、まるで「走る空気清浄機」として機能して環境貢献を果たしていくと解説した。
占部氏はネッソのデザインについて「本質的で完璧な形をしている“リバーストーン”からインスピレーションを得ています」と説明。長い時間をかけて自然の力で磨かれた石は、自然がもたらした最も理想的な形だと述べ、ネッソのフロントマスクではカスケーディンググリルとホリゾンタルLEDポジショニングランプを使った未来志向のデザインとなっており、リバーストーンのナチュラルな曲面をモチーフとしたサイドビューと組み合わせたものとなっているという。
内装には環境に優しい素材を積極的に導入。パワートレーンだけではなく、インテリアを含めてすべての面で環境に優しいクルマであってこそ真のエコカーであるとの考えから、サンバイザーカバー、ヘッドライニングなどには大豆、竹、サトウキビから抽出した繊維を使い、ダッシュボードにはバイオペイントを使用しているとアピールした。
BEVであるアイオニック ファイブのデザインについて占部氏は、「ヒョンデのアイデンティティを守りながら未来にも残る価値観を見据えて作り出されたもの」と説明。独創的なデザインのキーポイントとして「パラメトリックピクセル」という言葉を紹介し、デジタル画像の最小単位であるピクセルにアナログの感性を加えるという考え方によって独創的なビジュアルを生み出しているとした。このパラメトリックピクセルは、具体的にはヘッドライトやリアコンビネーションランプ、ホイール、内装などに採用されて先進的なイメージを表現している。
佐藤氏はBEVならではのフラットで広々としたフロアが生み出す車内空間について「クオリティタイムを過ごせるリビングのような空間」と表現。「スライドコンソール」「リラクセーションコンフォートシート」「後部座席まで含めた電動スライドシート」という3つの装備により、長いホイールベースの恩恵であるフラットフロアに自由な空間作りが可能になると述べた。
また、インフォテイメントシステムではコネクテッドカーサービスである「Bluelink」は5年間無償提供され、カーナビの地図データを通信を使ったOTA(Over The Air)でアップデートでき、今後も機能追加を続けていくという。
試乗もできるポップアップストア「Hyundai House Harajyuku」開設
このほかに発表会では、ヒョンデ モビリティ ジャパン マネージングダイレクター 加藤成昭氏から、張氏から紹介されたモビリティ戦略の1つであるLIFE MOVES with Smart Experience of Mobilityについての解説も行なわれた。
加藤氏は今回の日本参入では時間や空間の制約を受けない「スマートな経験」をユーザーに提供するため、ヒョンデとユーザーをオンラインでダイレクトに結ぶため、新たなプラットフォームを独自開発。1つのIDを使った「オンラインワンストップ」で新車の情報チェックから購入後のサポートまでシームレスに利用できると語った。
実際の車両を体験できる試乗施設として、神奈川県横浜市に2022年夏の開業を予定する「Hyundaiカスタマーエクスペリエンスセンター」を用意するほか、2月19日~5月28日の期間限定で、東京都渋谷区にある商業施設「Jing」にポップアップストア「Hyundai House Harajyuku」を開設。実車の展示や事前予約制での試乗などを実施する。
Hyundai House Harajuku
所在地 東京都渋谷区神宮前 6丁目 35-6
開業期間 2月19日~5月28日
営業時間 平日11時~20時 休祝日10時~20時
入場料 無料
これに加え、昨今の世界的なシェアリングエコノミー普及を念頭に、パートナー企業であるDeNA SOMPO Mobility、DeNA SOMPO Carlifeの2社と協業してカーシェアビジネスへの展開、サブスクリプション販売などを実施する。
カーシェアでは、DeNA SOMPO Mobilityが展開しているレンタカー型カーシェア「Anyca Officialシェアカー」にアイオニック ファイブ100台、ネッソ20台を2022年内に登録。ネッソについてはすでにサービスがスタートしており、アイオニック ファイブも2月下旬からのサービス開始を予定している。5月31日までは初回の1時間まで無料で利用できるキャンペーンが行なわれ、両モデルに興味がある人が気軽に試乗できる機会にもなる。
また、ユーザー間カーシェアの「Anyca」でも展開を予定しており、アイオニック ファイブやネッソを購入した人が自分のクルマをAnycaに登録し、カーシェアで利用した人がその後車両を購入した場合、双方にインセンティブが支払われるシステムになるという。
サブスクリプションでは、DeNA SOMPO Carlifeのマイカーリースサービス「SOMPOで乗ーる」でアイオニック ファイブ、ネッソの取り扱いを実施。車両価格が高いイメージを持たれているZEVを、Anycaとの連携によって実質負担額を減らして利用しやすくするという。
また、発表会で登壇したDeNA SOMPO Carlife 代表取締役社長 久保田和史氏は、今後もSOMPOホールディングスのネットワークを活用し、購入ハードルを下げるファイナンスプランの開発にチャレンジしていくと意気込みを語った。
加藤氏は3社の協業により、短期利用サービスのレンタカー型カーシェアリング、中期利用サービスのサブスクリプション、長期所有のオンライン購入と選択肢を充実させ、トータルソリューションによってユーザーに移動の自由を提供したいと締めくくった。
バッテリは「8年間、もしくは16万km以内で、当初性能の70%を下まわる場合は補償」
発表会の後半に行なわれた質疑応答では、オンラインのみとなる販売体制に関する販売戦略について質問され、加藤氏は「冒頭でCEOからもあったように、われわれは過去に撤退を経験しています。それからの年月で日本のお客さまについて調査やヒアリングを続けてきました。この10年以上に起きた変化で、時間と場所に制約を受けないクルマの購入体験を求める人が多いと分かりましたので、お客さま本位の販売体制を組んでいくことを決めました」。
「また、われわれは新しいブランドになりますので、販売による目先のゴールだけではなく、お客さまに体験していただく、経験していただくということで、先ほどご紹介させていただいたDeNA SOMPO Mobilityさま、DeNA SOMPO Carlifeさまとの協業において試乗機会の拡大などを目指すといったところで、お客さまになじんでいただくところを第一に進めていきたいと考えております」と説明した。
なお、販売台数の目標については、5月のオーダー受付開始の時点である程度の計画を発表するつもりだと加藤氏は述べている。
バッテリの保証については佐藤氏が回答し、アイオニック ファイブのバッテリは「8年間、もしくは16万km以内で、当初性能の70%を下まわる場合は補償を行なう」という形になっていることを紹介した。