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ヒョンデ、「迷途知返」を基本姿勢として日本市場に再参入 BEV「アイオニック ファイブ」とFCEV「ネッソ」公開

2022年2月8日 開催

5月からオーダー受付を開始するFCEV(燃料電池車)「NEXO(ネッソ)」

 ヒョンデ モビリティ ジャパンは2月8日、日本参入戦略について説明し、5月からオーダー受付を開始する「IONIQ 5(アイオニック ファイブ)」「NEXO(ネッソ)」の2モデルを実車展示する記者発表会を都内で開催した。

 韓国の自動車メーカーであるヒョンデは2001年から日本市場での新車販売をスタートさせ、独自の魅力でファンを獲得したが、設定した販売目標をクリアできなかったことなどの理由から2009年12月に乗用車販売を停止。以降は観光バスなどを販売してきた。

 今回の日本市場再参入では販売店の展開を行なわず、車両の紹介や見積もり、注文、決済、配送手配までをすべてWebサイトやアプリで完結する新しいビジネスモデルを採用する。すでに新しいWebサイトが公開されており、BEV(バッテリEV)であるアイオニック ファイブ、FCEV(燃料電池車)であるネッソの車両概要も掲載されている。5月からオーダー受付を開始して、7月からのデリバリーを予定。価格はアイオニック ファイブが479万円~589万円、ネッソが776万8300円。

 このほか、2モデルの車両概要や販売体制などについては関連記事「ヒョンデ、ZEVで日本市場に参入 479万円のBEV『IONIQ 5』とFCEV『NEXO』2車種導入」を参照していただきたい。

アイオニック ファイブ

BEV(バッテリEV)「IONIQ 5(アイオニック ファイブ)」。展示車は72.6kWhバッテリを搭載して前後で計2個のモータによって4輪を駆動する「Lounge AWD」
BEV専用となるミシュランの「パイロットスポーツ EV」を装着。タイヤサイズは前後255/45R20
ドアミラーにはサラウンドビューモニター用のカメラやLEDウインカーなどを装備
BEVならではのフラットなフロア下やポップアップ式の「オートフラッシュドアハンドル」などの採用で優れた空力性能を実現
車両の右側後方に充電ポートを設定。充電では急速充電システムの「CHAdeMO」に対応するほか、最大1.6kWの消費電力を提供する「室外V2L」機能を用意する
ラゲッジスペース容量は527L
多彩な先進運転支援技術を備える「Hyundai Smartsense」用の単眼カメラをフロントウィンドウに設置。注目度が高まっているドライブレコーダーも日本向け装備の「ビルトインドラレコ」として採用
ボンネット下にはサブトランクとなる「フランク」を設置。容量は写真の4WDモデルが24L、後輪駆動の2WDモデルが57Lとなる
センターコンソールを廃してサイドウォークスルーも可能なフロントシート。シフトセレクターとしてステアリングコラム右側から出ている「電動式シフトダイヤル」でDレンジ、Rレンジなどを選択する
メーターフード前方のプロジェクターでフロントウィンドウに車速やナビ情報などを投影する「ARヘッドアップディスプレイ」を装備
「運転席シートポジションメモリーシステム」を全車標準装備。Lounge AWDのシート表皮は本革仕様
電動オットマンを備える「運転席リラクセーションコンフォートシート」も全車で採用。充電時間にくつろいだ姿勢で待つことができ、充電完了も知らせてくれるという
メタルペダルとメタルフットレストはLounge AWD専用装備
後席まで連続する大型の「ビジョンルーフ」はLounge、Lounge AWDで標準装備
グローブボックスはスライド式。前方のボンネット下にエンジンがなく、スペース的に余裕があるため実現できた装備で、「自宅のリビングにいるような雰囲気でくつろいでほしい」との想いが込められているという
運転席と助手席の間にある「スライドコンソール」は最大140mmの前後スライドが可能。2つのUSBポートに加え、qi規格のワイヤレス充電機能も備える
スライドコンソール後方にも2つのUSBポートや収納スペースを設定
6:4分割式のリアシートは左右別々に電動スライド可能。フロアがフラットなBEVならではの装備となっている
背もたれのリクライニング調節はレバーによる手動式。ラゲッジスペースに設置された「ラゲッジスクリーン」と干渉して問題にならないための配慮とのこと
後席の座面下に「室内V2L」用のAC100Vコンセントを設置。こちらの消費電力も最大1.6kWに対応する

ネッソ

ネッソはモノグレード展開。ボディカラーは「カッパー メタリック」
タイヤはハンコックの「Ventus S1 evo2 SUV」を採用。タイヤサイズは前後245/45R19
ドアミラーにサラウンドビューモニター用のカメラやLEDウインカーなどを装備
車体下部にフルフロアアンダーカバーを設置し、オートフラッシュドアハンドル、「Dピラーエアトンネル」などの技術を採用してエアロダイナミクスを追求。Cd値は0.32となっている
ラゲッジスペース容量は461L
ネッソでもフロントウィンドウにHyundai Smartsense用の単眼カメラを設定
ボンネット下にあるFCスタックは95kW(129PS)を発生。「FM12」型モータで前輪を駆動する
公称使用圧力70MPaで容量52.2Lの水素タンク3本を使用。100%充填基準走行可能距離は820km
内装色は写真の「ストーングレー・ツートン」に加え、「メテオブルー・ワントーン」も用意。ネッソもウインカーレバーは日本仕様として右側に設置する
アクセルペダルはオルガン式を採用する
2本スポークタイプのレザーステアリングの奥に、10.25インチクラスターのデジタルメーター、12.3インチの高解像度ワイドマルチメディアスクリーンをレイアウト
センターコンソールに「電動式シフトボタン」や「左右独立温度コントロールフルオートエアコン」などのスイッチ類を設定
センターコンソールの下は大型コンソールトレーとなっており、2つのUSBポートとqi規格のワイヤレス充電機能を備える
アウタースライディング方式のワイドサンルーフを標準装備
ネッソのグローブボックスは一般的なスタイルとなっている
センターコンソール後方に最大150Wの「AC100Vパワーアウトレット」を設置
シートやドアトリムなどにはトウモロコシとサトウキビから生み出されたバイオプラスチックが使用されており、全席でシートヒーターを内蔵

「迷途知返」を基本姿勢として日本市場に再参入

Hyundai Motor Company 社長兼最高経営責任者(CEO)張在勲氏

 発表会では冒頭のイメージムービーに続き、新型コロナウイルスの感染拡大といった社会情勢を受けて来日の叶わなかったHyundai Motor Company 社長兼最高経営責任者(CEO)張在勲氏によるビデオメッセージを紹介。

 張氏は以前の撤退は自分たちがユーザー1人ひとりの声にしっかりと耳を傾けることができなかったことが原因だと分析。それからの12年間でこの失敗と向き合い、「1度道を間違った後に、正しい道に戻って改める」という意味を持つ「迷途知返」ということわざを基本姿勢として日本市場に再参入すると語った。

 また、今回の参入では「LIFE MOVES」と名付けた新しいライフスタイルを日本のユーザーに提供。「LIFE MOVES with Smart Experience of Mobility」「LIFE MOVES with Sustainable Mobility」「LIFE MOVES with Freedom in Mobility」という3つのモビリティ戦略でLIFE MOVESを具現化すると述べ、こういったモビリティ戦略を通じてカーボンニュートラル社会の実現に貢献しながら、ユーザーに新しい価値を提供し続けていくとコメントしている。

張氏はビデオメッセージで日本市場参入の意義などを語った

ネッソは“リバーストーン”からインスピレーションを得たデザイン

暗転したステージ上のモニター画面が上にスライドし、後方からアイオニック ファイブとネッソがゆっくりと前進してステージ上に姿を現わすスタイルで車両アンベールが行なわれた
アンベールで車両を運転した2人の担当者が車両解説などを実施

 車両の解説は、ヒョンデ モビリティ ジャパン R&D center デザインチーム チーム長 占部貴生氏と、ヒョンデ モビリティ ジャパン シニアプロダクトスペシャリスト 佐藤健氏の2人から行なわれた。

 車両説明に先立ち、佐藤氏は2020年10月に、日本政府が「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」というカーボンニュートラルを宣言したこと、さらに子供たちの世代に受け継いでいく未来に対する責任、自然と人間の共存といった目的から、ZEV(Zero Emission Vehicle)である2モデルを今回の導入車両に決定したと紹介。ヒョンデが提唱するカーボンニュートラルソリューションの1つが水素エネルギーの利用であり、20年にわたって水素基盤の技術開発を続けており、この成果の1つがFCEVのネッソだとした。

 また、発電のために取り込んだ外気は内部に設置された3つの空気浄化システムによって汚染物質を除去するため、まるで「走る空気清浄機」として機能して環境貢献を果たしていくと解説した。

ヒョンデ モビリティ ジャパン株式会社 シニアプロダクトスペシャリスト 佐藤健氏

 占部氏はネッソのデザインについて「本質的で完璧な形をしている“リバーストーン”からインスピレーションを得ています」と説明。長い時間をかけて自然の力で磨かれた石は、自然がもたらした最も理想的な形だと述べ、ネッソのフロントマスクではカスケーディンググリルとホリゾンタルLEDポジショニングランプを使った未来志向のデザインとなっており、リバーストーンのナチュラルな曲面をモチーフとしたサイドビューと組み合わせたものとなっているという。

 内装には環境に優しい素材を積極的に導入。パワートレーンだけではなく、インテリアを含めてすべての面で環境に優しいクルマであってこそ真のエコカーであるとの考えから、サンバイザーカバー、ヘッドライニングなどには大豆、竹、サトウキビから抽出した繊維を使い、ダッシュボードにはバイオペイントを使用しているとアピールした。

ヒョンデ モビリティ ジャパン R&D center株式会社 デザインチーム チーム長 占部貴生氏

 BEVであるアイオニック ファイブのデザインについて占部氏は、「ヒョンデのアイデンティティを守りながら未来にも残る価値観を見据えて作り出されたもの」と説明。独創的なデザインのキーポイントとして「パラメトリックピクセル」という言葉を紹介し、デジタル画像の最小単位であるピクセルにアナログの感性を加えるという考え方によって独創的なビジュアルを生み出しているとした。このパラメトリックピクセルは、具体的にはヘッドライトやリアコンビネーションランプ、ホイール、内装などに採用されて先進的なイメージを表現している。

アイオニック ファイブのデザインでは「パラメトリックピクセル」という言葉がキーポイントとなっていると占部氏

 佐藤氏はBEVならではのフラットで広々としたフロアが生み出す車内空間について「クオリティタイムを過ごせるリビングのような空間」と表現。「スライドコンソール」「リラクセーションコンフォートシート」「後部座席まで含めた電動スライドシート」という3つの装備により、長いホイールベースの恩恵であるフラットフロアに自由な空間作りが可能になると述べた。

 また、インフォテイメントシステムではコネクテッドカーサービスである「Bluelink」は5年間無償提供され、カーナビの地図データを通信を使ったOTA(Over The Air)でアップデートでき、今後も機能追加を続けていくという。

コネクテッドカーサービスの「Bluelink」で、カーナビの地図データをOTAアップデート

試乗もできるポップアップストア「Hyundai House Harajyuku」開設

ヒョンデ モビリティ ジャパン株式会社 マネージングダイレクター 加藤成昭氏

 このほかに発表会では、ヒョンデ モビリティ ジャパン マネージングダイレクター 加藤成昭氏から、張氏から紹介されたモビリティ戦略の1つであるLIFE MOVES with Smart Experience of Mobilityについての解説も行なわれた。

 加藤氏は今回の日本参入では時間や空間の制約を受けない「スマートな経験」をユーザーに提供するため、ヒョンデとユーザーをオンラインでダイレクトに結ぶため、新たなプラットフォームを独自開発。1つのIDを使った「オンラインワンストップ」で新車の情報チェックから購入後のサポートまでシームレスに利用できると語った。

 実際の車両を体験できる試乗施設として、神奈川県横浜市に2022年夏の開業を予定する「Hyundaiカスタマーエクスペリエンスセンター」を用意するほか、2月19日~5月28日の期間限定で、東京都渋谷区にある商業施設「Jing」にポップアップストア「Hyundai House Harajyuku」を開設。実車の展示や事前予約制での試乗などを実施する。

Hyundai House Harajuku

所在地 東京都渋谷区神宮前 6丁目 35-6
開業期間 2月19日~5月28日
営業時間 平日11時~20時 休祝日10時~20時
入場料 無料

ヒョンデとユーザーをオンラインで結ぶ新たなプラットフォームを独自開発
神奈川県横浜市に開業予定となっている「Hyundaiカスタマーエクスペリエンスセンター」の外観イメージ
期間限定のポップアップストア「Hyundai House Harajyuku」では、実車展示や事前予約制での試乗などを実施

 これに加え、昨今の世界的なシェアリングエコノミー普及を念頭に、パートナー企業であるDeNA SOMPO Mobility、DeNA SOMPO Carlifeの2社と協業してカーシェアビジネスへの展開、サブスクリプション販売などを実施する。

 カーシェアでは、DeNA SOMPO Mobilityが展開しているレンタカー型カーシェア「Anyca Officialシェアカー」にアイオニック ファイブ100台、ネッソ20台を2022年内に登録。ネッソについてはすでにサービスがスタートしており、アイオニック ファイブも2月下旬からのサービス開始を予定している。5月31日までは初回の1時間まで無料で利用できるキャンペーンが行なわれ、両モデルに興味がある人が気軽に試乗できる機会にもなる。

 また、ユーザー間カーシェアの「Anyca」でも展開を予定しており、アイオニック ファイブやネッソを購入した人が自分のクルマをAnycaに登録し、カーシェアで利用した人がその後車両を購入した場合、双方にインセンティブが支払われるシステムになるという。

株式会社DeNA SOMPO Mobility 代表取締役社長 馬場光氏
レンタカー型カーシェア「Anyca Officialシェアカー」でアイオニック ファイブとネッソを導入
購入したヒョンデ車をユーザー間カーシェア「Anyca」に登録してほかのユーザーに積極的にアピールし、利用者から次の購入者が出ると貸した人、借りた人の双方にインセンティブが支給される仕組み

 サブスクリプションでは、DeNA SOMPO Carlifeのマイカーリースサービス「SOMPOで乗ーる」でアイオニック ファイブ、ネッソの取り扱いを実施。車両価格が高いイメージを持たれているZEVを、Anycaとの連携によって実質負担額を減らして利用しやすくするという。

 また、発表会で登壇したDeNA SOMPO Carlife 代表取締役社長 久保田和史氏は、今後もSOMPOホールディングスのネットワークを活用し、購入ハードルを下げるファイナンスプランの開発にチャレンジしていくと意気込みを語った。

株式会社DeNA SOMPO Carlife 代表取締役社長 久保田和史氏
マイカーリースサービス「SOMPOで乗ーる」でアイオニック ファイブ、ネッソを取り扱い、ZEVの実質負担額を減らす取り組みとなる

 加藤氏は3社の協業により、短期利用サービスのレンタカー型カーシェアリング、中期利用サービスのサブスクリプション、長期所有のオンライン購入と選択肢を充実させ、トータルソリューションによってユーザーに移動の自由を提供したいと締めくくった。

発表会内で行なわれたフォトセッション

バッテリは「8年間、もしくは16万km以内で、当初性能の70%を下まわる場合は補償」

質疑応答で質問に答える加藤氏

 発表会の後半に行なわれた質疑応答では、オンラインのみとなる販売体制に関する販売戦略について質問され、加藤氏は「冒頭でCEOからもあったように、われわれは過去に撤退を経験しています。それからの年月で日本のお客さまについて調査やヒアリングを続けてきました。この10年以上に起きた変化で、時間と場所に制約を受けないクルマの購入体験を求める人が多いと分かりましたので、お客さま本位の販売体制を組んでいくことを決めました」。

「また、われわれは新しいブランドになりますので、販売による目先のゴールだけではなく、お客さまに体験していただく、経験していただくということで、先ほどご紹介させていただいたDeNA SOMPO Mobilityさま、DeNA SOMPO Carlifeさまとの協業において試乗機会の拡大などを目指すといったところで、お客さまになじんでいただくところを第一に進めていきたいと考えております」と説明した。

 なお、販売台数の目標については、5月のオーダー受付開始の時点である程度の計画を発表するつもりだと加藤氏は述べている。

バッテリの保証について回答する佐藤氏

 バッテリの保証については佐藤氏が回答し、アイオニック ファイブのバッテリは「8年間、もしくは16万km以内で、当初性能の70%を下まわる場合は補償を行なう」という形になっていることを紹介した。