ニュース

室屋選手、「空をお昼時間に見上げてもらってありがとうございました。地上でよろこんでもらえてたらいいな」とフライト直後に語る

2022年4月22日 実施

神奈川・東京の上空にニコちゃんマークを描いたエアレース・パイロット室屋義秀選手。福島スカイパークでフライト直後にオンライン会見

神奈川・東京の上空10か所に大きなニコちゃんマーク

 エアレース・パイロットの室屋義秀選手は4月22日、神奈川・東京の上空10か所に大きなニコちゃんマークを描く「Fly for ALL #大空を見上げよう」フライトを実施した。前日の雨によって視程は大きく改善したほか、フライト当日は空は晴れわたり、相模原、大和、平塚、藤沢、鎌倉、横浜、川崎、東京タワー、東京スカイツリー、表参道の上空に美しいニコちゃんマークを描くことができた。

 大空を見上げようタグにより、多くの人が空に描かれたニコちゃんマークの写真を投稿しており、お昼時のイベントとして大きなインパクトがあった。

 室屋選手はフライト後、活動ベースとしている福島スカイパークからオンライン会見を実施。フライトを終えた気持ちを語るとともに、今シーズン参戦するエアレース・ワールドチャンピオンシップへの抱負を述べた。

 室屋選手は、この活動のきっかけをコロナ禍により大規模な航空祭など各種のイベントがなくなり、大空を見上げる機会がなくなったことにあると語る。上を向いて空を見上げる、空を見上げて探し回ってもらうことにより、気持ちが少しでも上向きになってほしいという。

 今回のニコちゃんマークは、予定している10か所で描くことができ、天候に恵まれたことをよろこんでいた。とくに今日のような天候だと、富士山から羽田空港など、関東一円をコクピットから見ることができ、大空を飛ぶパイロットとでよかったと語ってくれた。

ニコちゃんマークを東京タワーととともに

エアレース・ワールドチャンピオンシップにレクサスとともに挑む

 室屋選手の職業はパイロットではあるものの、旅客機のパイロットではなく、世界でも一握りしか存在しないエアレースのパイロットであるのはよく知られている。2017年には最終戦で逆転優勝して世界チャンピオンとなり、2019年は4戦して3勝、1ポイント差でチャンピオンを逃すなど世界トップを争う位置に立ち続けるパイロットだ。

 コロナ禍などの問題もあり、ここ数年開催されていなかったエアレース・ワールドチャンピオンシップだが、2022年は7月8日~10日にイギリスのグッドウッドで開幕することが決まっている。

 室屋選手は、そこに新チーム「LEXUS/PATHFINDER AIR RACING」として参戦。レクサスのサポート受ける形で今シーズンは戦っていくことになる。今シーズンの体制について室屋選手は、「レクサスが完全なパートナーを組んでもらうということで、ワークスチームのような体制で活動できる」と語り、これまでの自身のチャンピオンシップ獲得の経験と、レクサスのサポートでチャンピオンシップを目指していくという。

 レクサスとは2016年から技術交流会を実施。クルマ側からの知見、航空機側からの知見など、意見交換をしている。以前、Lexus International Presidentの佐藤恒治氏から聞いたことがあるのだが、室屋さんとの意見交換は楽しいという。室屋さんはエアレースパイロットであるため、「マイナスGの世界で普通に飛んでおり、プラスGの世界がほとんどのクルマとは異なる観点からシートなどを捉えている」(佐藤プレジデント)と語っていた。

 この技術交流会が発展して、LEXUS/PATHFINDER AIR RACINGとなっていったのだが、レクサスはこのチームとメカニックなどの交流を図り、空力、軽量化、冷却などの技術的知見を交換しているとのことだ。この技術交流から得た知見などを、エアレースに用いる機体へ採り入れているとのことだが、エアレーズではライバルもいるため詳細については、あまり語りたくないとのこと。シーズンを終えた段階で、語ってくれる部分かもしれない。

小さな、小さな数字を積み重ねて。そこには大きな大きな努力がある

 ただ、角度を変えて質問をしてみたら、室屋選手はクルマから得た知見などを語ってくれた。室屋選手自身もクルマの運転が好きで、クルマでのドリフト走行を例に挙げる。クルマのドリフト走行では、リアタイヤがグリップを失うギリギリのところで走行しており、それによって向き換えが自在になっている領域がある。

 飛行機も同様に、コントロールを失う失速ギリギリのところにタイムを詰めるポイントがあるという。一般に飛行機は。ラダーやエルロンなどで3次元的に向きを変えているが、急速に向きを変えるために墜落につながりかねない失速状態直前を使っているのかと思われる。そこの領域をレクサスと一緒に解析をしてある知見を得られたというのだ。その領域を使えるパイロットもすごいのだが、層流や乱流の入り乱れる計算の難しい領域を解析できるのもすごいと思える話だった。

 室屋選手は、「小さな小さな数字を積み重ねて、そのためにはそこに大きな大きな努力があるのですけど」といい、コンマ数秒違うだけで大きく順位の変動する世界をかいま見せてくれた。今シーズンのレクサスとのパートナーでは、その小さな小さな数字の積み重ねができ、「レースは常に開発競争なので、その中で成長負けをしないこと」を実現していきたいと語ってくれた。

 エアレースは7月に開幕するが、室屋選手の活動は自身とLEXUS/PATHFINDER AIR RACINGのWebサイトやSNSで伝えていくという。

 今日のフライトに関しても、「空をお昼時間に見上げてもらってありがとうございました。上を飛んでいて僕一人なんですけど、地上で何かよろこんでもらえていたらいいなぁと思っていて。そういう様子が後で、YouTubeや中継を通して見られるととってもうれしいし、いろいろなコメントをいただけると。われわれスタッフ一同もなるべく笑顔を届けたいと思っているし、それがいろいろな形で帰ってくると、お互いいいエネルギーが生まれるなぁと。本当に見ていただいてありがとうございます」と語ってくれた。大空を見上げようタグなどで飛行を見た感想を室屋選手に伝えていただきたい。

P.S. このオンライン会見後、5月3日~4日に富士スピードウェイで開催されるSUPER GT第2戦富士でデモフライト「Yoshi MUROYA × LEXUS Special Flight@ FUJI SPEEDWAY」が発表された。