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ボッシュ、「水電解装置」の中核コンポーネントの開発に着手 水素の生産は2025年開始予定

2022年5月4日(現地時間)発表

ボッシュが「水電解装置」の中核コンポーネントの開発着手を発表した

 ボッシュは5月4日(現地時間)、地球温暖化対策のひとつとして、電気分解によって水を水素と酸素に分離する「水電解装置」の中核コンポーネントである「スタック」の開発に着手したことを発表。この装置では、風力や太陽光発電など再生可能エネルギーを活用した「グリーン水素」と呼ばれる理想的な水素を生成するという。

 エネルギーが多様化し、脱化石燃料、CO2排出量削減の必要性から、鉄鋼、化学、大型貨物などのエネルギー消費量の多い産業だけでなく、幅広い産業でもグリーン水素の需要が急速に増大する今、EU(ヨーロッパ連合)によると、需要は2030年までに年間約1000万tまで膨れ上がるという。

 そこでボッシュでは、水電解装置市場は2030年には全世界で約140億ユーロ規模に拡大し、なかでも欧州はもっとも高い成長率を示すものと予測。企業や社会が化石燃料への依存を減らし、新しい形態のエネルギーを活用できるように、今後3年間で約30億ユーロを電動化や水素などのクライメートニュートラル技術に投資する意向を表明。また、水電解装置の開発をモビリティソリューションズ事業セクターにゆだね、2020年代末までに最大5億ユーロを投資する計画を明かした。

 ボッシュGmbH取締役会会長シュテファン・ハルトゥング氏は年次記者会見で、「地球温暖化対策をこれ以上遅らせることはできません。私たちが目指すのは、ボッシュの技術を用いて欧州での水素製造が急拡大するように支援することです」と述べている。また、ボッシュのモビリティソリューションズ事業セクター統括部門長であるマルクス・ハイン氏は「私たちは、この開発に燃料電池技術のノウハウを活用します」と語っている。

水電解の中核コンポーネントであるスタックを開発

 燃料電池と同様に、水電解の重要なコンポーネントとなるのがスタックで、これは直列に接続された数百の個別セルから構成されるという。各セルでは、電気を用いて水が水素と酸素に分解されるが、これは水素と酸素を結合することで電気が生成される燃料電池とは逆反応で、両方のケースで「プロトン交換膜(PEM)」によって化学反応が促進される。

 ボッシュは多くのパートナーとともに、水電解システムのスタックにコントロールユニット、パワーエレクトロニクスおよび各種センサーを組み合わせた「スマートモジュール」を開発中で、2023年にはパイロットプラントの稼働を予定していて、2025年以降にこれらのスマートモジュールを電解プラントメーカーや産業サービス事業者に供給する予定としている。

 これらのモジュールは、10MW(メガワット)以下の容量の小型装置からGW(ギガワット)レベルの陸上および洋上プラントまで、また、新設プロジェクトだけでなく既存プラントでグリーン水素製造に転換する場合にも使用することが可能という。

 さらに、水素製造の効率を最大化し、スタックの耐用年数を延ばすために、スマートモジュールはボッシュのクラウドに接続する予定で、同時に水電解装置にはモジュラーデザインを採用し、例えば定期的なメンテナンス作業では、施設全体ではなくプラントの一部区画のみの停止で済ませるなど、メンテナンスにおける柔軟性の向上も図られている。また、コンポーネントのリサイクルを含めたサービスコンセプトにも取り組んでいるという。