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トヨタ、2023年3月期第2四半期決算 資材高騰の影響や半導体が生産リスクで営業利益は1兆1414億円の増収減益

2022年11月1日 開催

自動車で使われている半導体の例。半導体が生産リスクとなり、年間生産台数を970万台から950万台へ引き下げる

2023年3月期第2四半期決算

 トヨタ自動車は11月1日、2023年3月期第2四半期決算(2022年4月~9月)の決算説明会をオンラインで行なった。登壇者は、Chief Financial Officer 取締役 副社長 近健太氏、Chief Communication Officer 執行役員 長田准氏、経理本部 本部長 山本正裕氏、調達本部 本部長 熊倉和生氏、生産本部 副本部長 中村好男氏の5名。2022年3月第2四半期の際は2名の出席だったことを考えると、生産・調達系の質疑に分厚く対応する布陣といえる。

 2023年3月期第2四半期の決算は、営業収益が17兆7093億円(前期比2兆2280億円増)、営業利益が1兆1414億円(6060億円減)、税引前利益が1兆8342億円(3097億円減)、四半期利益が1兆1710億円(3534億円減)。売上高は増加したものの、営業利益は前期に比べて減益となった。

 その理由として挙げられているのが、経営環境の大きな変化。山本正裕経理本部長は、すべての地域で資材高騰が減益要因、欧州はロシア事業の終了が赤字要因としており、為替変動の影響で5650億円増益となったものの、資材高騰などで7650億円減益。原価改善の努力などはあったものの、営業利益は前述したとおり、6060億円の減益となった。

2022年3月期第2四半期決算を発表するトヨタ自動車株式会社 Chief Financial Officer 取締役 副社長 近健太氏(上中央)と、Chief Communication Officer 執行役員 長田准氏(上左)、経理本部 本部長 山本正裕氏(上右)、調達本部 本部長 熊倉和生氏(下左)、生産本部 副本部長 中村好男氏(下右)

 通期においては、トヨタ・レクサスで生産台数を970万台から920万台へ50万台引き下げる。しかしながら、通期おいての営業利益は2兆4000億円と据え置きを見通す。

2023年3月期 第2四半期決算サマリ
2023年3月期第2四半期、連結販売台数
2023年3月期第2四半期決算連結決算
連結営業利益増減要因
所在地別営業利益
中国事業
株主還元
自己株式取得
生産台数見通し、トヨタ・レクサス
通期連結販売台数見通し
通期決算見通し
連結営業利益増減要因 前回見通し差
連結営業利益増減要因 前年同期差
連結営業利益増減要因 後半期 前年同期差
連結販売台数(3か月)
連結決算(3か月)
連結営業利益増減要因(3か月)
所在地別営業利益(3か月)
中国事業(3か月)
業績推移
台数見通し
販売台数について

自動車産業の成長と分配の好循環に向けた取り組み

急激な環境変化
生産台数の変化

 近健太副社長は、現在は急激な変化が起きているという。その中で、このような決算を確保できた背景としてリーマンショック(2008年)以来の取り組みがあるという。

損益分岐台数の推移
自動車産業の成長と分配の好循環に向けた取り組み

 近健太副社長は、「これまでもリーマンショックをはじめ、先を見通すことが難しいことは何度もありました。その度ごとに大きな影響を受けてきました。今回は、それまでを超えるような変化が起こっていますが、なんとか生産レベルを維持できているのは、一朝一夕の成果ではないと思っております。リーマンショック以降の商品軸の経営では、商品力の強化もさることながら、仕入れ先や生産現場でのクルマ作りも鍛えてきました。開発・販売・生産の効率の向上にも大きくつながり、リーマンショック前と比べて、損益分岐点を30%以上引き下げることができました。長い時間をかけて多くのステークホルダーとともに、地道な体質改善に取り組んできた成果だと思っております」と、体質改善が今回の決算につながったと説明した。

 その上で、「2009年以降、日本の自動車産業と部品産業は累計で研究開発に28兆円、設備投資に23兆円を行ない、魅力的な商品をお客さまにお届けし、多くの雇用を生み、国や自治体へ納税をし、外貨を獲得して輸入エネルギーの原資を確保するなど、モビリティが創造する価値を多くの方々と共有することで成長してまいりました。そのことが今、この大きな変化の時代にあっても自工会や部工会など、自動車産業全体がワンチームで進んでいける大きな力になっていると思います。以前は、なかったことだと思っております」と、自動車業界が長期的に果たしてきた役割を語った。

半導体リスクが生産台数引き下げの要因

半導体振り返り
半導体の工程

 台数における引き下げの要因は、大きくは半導体の調達リスクを挙げた。この半導体関連については、熊倉和生 調達本部 本部長、中村好男 生産本部 副本部長が質問に答えた。

 前提として、自動車で使われる半導体はさまざまなものがあるとし、半導体のリードタイムが長いことが影響しているという。

 半導体の全体市場における車載需要は10%程度であるとのこと。半導体の大部分は通信やデータ関連など民生向けで、ここの部分の受給は緩和しているものの、設備投資がされにくい古いタイプの半導体、車載向けが増えているものなどは受給が逼迫しているとのこと。

 そのため、半導体のティア1を話をすることで解決に取り組んでいるものの、半導体のリードタイムが数か月あるため、依然生産へのリスクは続くという。そのため、リスクのある品目の見える化、ティア1との関係強化をここ2年半くらい取り組んでおり、毎日供給の対策会議を続けているという。

 緊急対策会議を毎日2年半続けて(緊急になっていないがといいつつ)、車両生産の最大化に努めている。熊倉氏は、「お客さまに極力ご迷惑をかけないよう、設計も代替品をいかに変えていけるかと努力を続けている」「減産の影響で仕入れ先様にご迷惑をかけている」「一台でも多く作りたいと思っている、販売店も一生懸命説明していただいている」と語り、「申し訳ない気持ちと、みんながんばってくれてありがとうという気持ちで取り組んでいる」と、2つの気持ちが自分の心の中にあると語った。

バッテリEVについて

 バッテリEVに関する質問があり、バッテリEVについては長田准CCOが回答。長田氏は、先日中国で発表されたBYDと競合のbZ3などを例に挙げ、地域地域の事情に対応して進めていくという。

 2022年12月に、350万台のEVを生産していくと発表したことに変わりはなく、内100万台程度がレクサスであることにも変わりないとした。