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京セラ、車載技術を開発する中山テストフィールドで「自動運転バス」「ナイトビジョン」などのデモ公開
2023年1月23日 11:40
- 2023年1月20日 開催
京セラは1月20日、神奈川県横浜市の京セラ・横浜中山事業所内にある「中山テストフィールド」について紹介する説明会を開催し、合わせてこの場で開発に取り組んでいる車載関連技術のデモンストレーションを報道関係者向けに公開した。
2021年12月から実運用を開始した中山テストフィールドは、約5000m 2 の敷地に3車線直進路と外周路、交差路、傾斜角度±10%の傾斜路、砂利道やタイル貼り凹凸路、オートパーキング機能などを開発する駐車場、夜間環境やトンネル内を再現する環境試験建屋、各種信号機や横断歩道などを用意して、多彩なテストを実施可能としている。
「デバイス」「ユニット」「システム」の3ジャンルで研究開発
説明会では京セラ株式会社 研究開発本部 先進技術研究所 所長 小林正弘氏が中山テストフィールドの概要や開設した理由などについて説明。
京セラでは現在、強みである通信技術、センシング技術を使って「安心感のある新たなモビリティ社会」を切り拓くことを目指し、車載関連製品の開発に注力。実際に車載されるADAS(先進運転支援システム)や自動運転などで必要となる車載センサーなどの「デバイス」、交通環境などに設置される各種路側機などの「ユニット」、路車協調による自動運転などを実現するための「システム」という3ジャンルで研究開発を行なっている。
従来は外部のテスト施設を利用して開発を行なっていたが、ADASや自動運転の社会的需要の高まりでさまざまな企業が開発に取り組むようになり、外部施設を思うように利用できなくなってきたことを受けて自社でテストフィールドを用意することになった。
中山テストフィールドが完成したことで、実環境である公道での実証実験に先立つ「シミュレーション」「ラボ評価」「フィールド検証」という開発サイクルをスムーズに進めることが可能になり、研究開発期間の短縮を実現。さらに実際に公道で起きるシーンを自由に再現できるようになって品質や信頼性が向上し、デモや模擬試験を実施することで新たな事業パートナーを獲得できることもメリットになっている。
このほかにも小林氏は自社でテスト施設を用意する意義について、自社の施設であればテスト中に衝突などが起きても直せば済むが、外部の施設や公道での実証実験中に問題が起きると迷惑を掛けてしまうことになってしまう。また、実証実験に先立って考え得るあらゆる条件で問題が起きないよう信頼性を高めておくことで、実証実験では想定を超えるトラブルが起きた場合の対策だけに集中できることなどを挙げた。実際に中山テストフィールドはほぼ毎日テストで運用され、車載関連技術の開発が進められているという。
自動運転バス「trota(トロタ)」乗車体験
説明会後に行なわれたデモでは、最初に自動運転バス「trota(トロタ)」の乗車体験を実施。道幅の狭い区間も設けられたコース内を自動周回することに加え、スタート直後には右折先に歩行者を模したマネキンを立たせ、歩行者を検知しての自動ブレーキも披露された。
「マルチファンクションミリ波レーダー」で近距離と遠距離を同時検知
続くデモは京セラが車載用、インフラ用にそれぞれ開発を進めている「マルチファンクションミリ波レーダー」の紹介。クルマのADASでは「死角検知」「駐車支援」「後退出庫時の接近車両検知」「空間検知」など多彩な機能にミリ波レーダーが利用されているが、対応するシーンによって求められる検知距離や精度に差があり、現在は多くの機能を実現するためには複数のミリ波レーダーを搭載する必要がある。
これに対してマルチファンクションミリ波レーダーでは、1個のデバイスで遠距離の障害物などを検知できる77GHz帯、近距離を高精度に検知する79GHz帯の両方をサポート。さらに「高速レーダモード」と「ビームフォーミング」の切り替え機能も備え、高い汎用性による機能統合でシステムの低コスト化を実現するものとなっている。
デモでは最初にディスプレイの検知内容をワイド表示に設定。設置したミリ波レーダーの前方近くをスタッフが自由に移動して、三角形のマーカーがしっかりと検知していくシーンを紹介したあと、ディスプレイ表示をロングモードに切り替え、手前を動くスタッフと遠ざかっていくデモカーの両方を検知していることをアピールした。
霧の向こうにいる人物もくっきり映す「車載ナイトビジョンシステム」
環境試験建屋で実施された「車載ナイトビジョンシステム」のデモでは、2022年10月に白色光と近赤外光一体型ヘッドライトを世界初搭載する新技術として発表された製品を改めて紹介。夜間の屋外環境を再現するため、天井や壁に光の反射を抑える特殊な塗料を使っているという環境試験建屋は、照明をOFFにするとGaN(窒化ガリウム)製白色光レーザーを使ったヘッドライトユニットの光が路面以外にはほとんど反射することなく、街灯もない夜間の郊外路のような状況が生み出されていた。
デモは「黒ずくめの服装に身を包んだ歩行者が建屋奥から近付いてくる」「霧を発生させた状況での歩行者検出」の2種類を実施。最初のデモではIR側はスタート地点から歩行者役のスタッフが白く表示され続けているが、RGB側と肉眼では、距離が近くなってくるにしたがって衣服に隠されていない首から上がぼんやりと見えはじめるという感覚。また、続いてのデモではさらに差が明確で、IR画像ではヘッドライトの光が強く当たっている一部を除き、霧の影響を受けず左右に移動する歩行者の姿が示されている。
ただし、京セラではこのようなIR画像をドライバーに提供することだけではなく、RGB画像と組み合わせて独自の「フュージョン認識AI技術」で物体検出することを目指している。色の判別も可能でほかのセンサー類と比較して豊富な情報量を持つRGB画像も併用することにより、ADASや自動運転のさらなる高度化を図っていくという。
独自技術で視差ゼロを実現した「カメラ-LiDARフュージョンセンサ」
最後に行なわれたのは、自動運転向けに開発している「カメラ-LiDARフュージョンセンサ」による落下物検知のデモ。
レーザーの反射を測定して周囲にある物体の位置や形状などを特定するLiDARセンサーは自動運転で多く利用されているが、黒いゴムを素材とするタイヤはレーザー光を反射しにくく、路面に横倒しになっているとLiDARは路面と区別することが困難になる。
こうした問題の解決策として開発されたカメラ-LiDARフュージョンセンサは、名前のとおりカメラとLiDARをワンユニットで構成。MEMSミラーを用いた独自のLiDARとカメラの画像を1つのレンズで取り込むことにより、光軸を一致させて視差ゼロを実現。視差を補正するキャリブレーションが不要となることに加え、死角が発生しないオクルージョンレスも大きな特長となっている。
ルーフ上にカメラ-LiDARフュージョンセンサを搭載した車両によるデモでは、路面に置かれたタイヤから70mほど離れた位置からスタート。最初は小さな障害物としてシステムは認識しているが、接近するにしたがって得られるカメラとLiDARの情報を検知アルゴリズムで処理。正確なサイズや形状が認識され、明確な障害物として危険性を検知していった。
【お詫びと訂正】記事初出時、説明会登壇者の氏名に誤りがありました。お詫びして訂正させていただきます。