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東京国際消防防災展 2023が開幕 EVコンセプトや海外、米軍の消防車など東京ビッグサイトに集結
2023年6月16日 14:16
- 2023年6月15日~18日 開催
- 入場無料(登録制)
東京ビッグサイトにて「東京国際消防防災展2023(FIRE-SAFETY TOKYO)」が6月15日に開幕した。消防車をはじめとして消防や防災用品を一同に集めた展示会で、業者だけでなく広く一般も来場でき、楽しめる展示会。期間は6月18日までで入場は無料(登録制)。
前回より多い出展者数。子供から大人まで楽しみながら学べる
東京消防庁、東京ビッグサイト、東京国際消防防災展 2023実行委員会が主催する展示会で、これまでも5年に一度開催され今回が11回目となる。325社・団体が出展し、出展者数は前回を上回る。展示のほかに災害対策などを学ぶことのできるセミナーを合計5つ開催するほか、起震車などの体験エリアも設置し、子供から大人まで消防や防災について学べるコンテンツを用意している。
開会式では、東京消防庁消防総監の吉田義美氏が今回関東大震災から100年の展示が多いことにあり「関東大震災から100年を迎える本年、東京国際消防防災展 2023を契機に、いま一度、防火防災について考えていただきたい」とあいさつした。
東京都知事の小池百合子氏は、開催が5年ぶりということで「この5年間は本当に激しい変化の5年間。コロナ禍があり、そして、災害に対する国土強靭化、これらはこの5年間で本当に世の中が変わった、そのことをみんなで体感した5年ではなかったでしょうか」と振り返り、「今年はちょうど関東大震災から100年という節目。だからこそ私たち1人ひとりが多様な切り口からのアプローチが必要であり、備えておく。この展示会がまさにその好機でありチャンスとなることを期待している」と期待を述べた。
また、さらに東京国際消防防災展 2023のアンバサダーとして、タレントの関根麻里さんを任命。吉田消防総監から任命書が手渡されたあと、テープカットで東京国際消防防災展 2023を開会した。
モリタは最新の消防車から、消防DXまで幅広く展示
東京国際消防防災展 2023において、大きなブースで消防車などを展示したのはモリタホールディングス。すでに受注している消防車から海外展開している消防車、コンセプトカーまで多数展示した。
まず、コンセプトカーとして展示したのはEV消防ポンプ自動車「MoEVius concept (メビウス コンセプト)」。三菱ふそうの「eキャンター」をベースにした消防車で、独自開発のePTO(ポンプ駆動システム)とe-Fire Pump(EV専用ポンプ)により高いエネルギー効率を実現する。
気になるバッテリ駆動の容量だが、一般的な戸建て住宅の火災なら、出動して消火活動を終えるまで十分にまかなえるという。A-2級ポンプを搭載、スペック的には実用化できるほどになっているが、EVの消防車として基準を確認中のため、今すぐに実用化は難しいという。なお、EVになることで消防車の騒音がかなり軽減され、現場での隊員間の会話のやりとりが確実になるなど、低騒音ゆえの救助活動への効果も期待できるという。
また、EVの利点を活かして室内空間を拡大している。なお、ベースのeキャンターは従来型モデルのため、実用化の際は新型eキャンターを使用するため、新型に合わせて細部を修正していくという。
EU内の統一規格であるEN規格対応の先端屈折式はしご付消防自動車「Loikka Aerial Ladder」はモリタのグループになったフィンランドのBronto Skylift社と共同開発した車両で、グローバル展開を加速していく。
国内規格に合致したモリタのラインナップでも海外展開はできなくはないが、EUの規格に合致していることで導入しやすい国もあるという。なお、まだ国内基準への対応がないため、国内展開はこれからとなる。
消火薬剤タンク付き大型化学高所放水車「インテグレートワン」は石油コンビナートなどの災害用に使われる消防車。これまで、大型化学消防車、大型高所放水車、泡原液搬送車の3台分の機能を1台にまとめたもの。
法令の改正などもあってこれまで3台セットで活動していた現場では1台に集約できる。動かすクルマが減れば必要な隊員数も減らすこともできるが、同じ数の隊員ならば、よりさまざま消火活動を行なうことができ、災害への対応力を高めることができるという。
21mブーム付多目的消防ポンプ車「MVF21」はBronto Skylift社のブームを架装した車両で、スカニア製のシャシーも選択可能。国内メーカーのシャシーも選択可能だが、スカニア製を選ぶことで作業範囲が拡大するというメリットがある。ブームの先のバケットには車いすごと避難者を収容できる。
「Intelligent Attacker」は軽量化で資機材の搭載量を増やすなど機能を高めた消防車。高さあるの後席は重装備のままでも乗降可能。さらに後席ドアには4枚の窓ガラスで目視による安全確認や現場状況の確認の強化ができるという。また、ドアステップとの段差をなくし、すき間も少なくしたフルフラットステップなど使いやすさも十分に考慮したものになっている。展示車両は沖縄県うるま市に導入予定の車両となる。
また、消耗団などの用途を想定した多機能消防自動車「REDSEAGULL Light」は車両総重量3.5t未満に抑えて現在の普通免許で運転可能とした車両。消火だけでなく救助や避難といった消防団に求められる活動をサポートするという。
低床化してしきざいの積み下ろしをしやすくしたほか、ポンプは可搬式を搭載可能で、積載したままポンプ運転を可能にした。ポンプ積載装置は電動ウインチで駆動するため、無理なく積み下ろしができるという。
モリタでは、このほかにも電動遠隔放水銃を装備した多目的戦術ロボット「Wolf R1」や、EN規格に準拠し、EVトラックに対応できる搭載型電動水ポンプユニット「MoEVius cocept」を展示した。
また、災害現場でのDXから指令本部のDX、さらには消防団のDXまで、さまざま消防DXに対応する展示を行なった。IoT端末を使い、消防車の位置だけでなく放水量や水や原液の残量、はしご車の起伏角度、さらには各車の燃料残量まで、さまざまな情報を駆使して円滑な活動の支援を行なう。
また、消防団のDXでは消防団活動支援システム「FireChief」を展示、各隊員のスマートフォンに専用アプリを入れ、招集とそれに対する応召状況を自動化、応召後は各隊員をGPSで追跡、活動状況や安全管理、さらには報告書の自動作成、報酬の管理まで自動化するという。もちろん消防団活動に欠かせない水利情報もアプリで確認できるようになっている。
Teisen(帝国繊維)は輸入電動消防車など展示
Teisen(帝国繊維)では、オーストリアのローゼンバウアーの電動消防車「RT」を展示した。すでに世界の各地で導入実績がある車両で、バッテリは66kWhを2つ搭載しているが、ディーゼルエンジンのレンジエクステンダーを備えるため電力網から充電ができない場合でも走行を継続できる。EVのため低重心でコンパクトなことや、低床で乗り降りしやすいことなどをアピールしている。
また、ポンプ付き救助工作車の「HB」は、ロッツラー社製油圧ウインチやローゼンバウアー製の照明装置やA-2級ポンプ「N35」と1600リットル水槽などを装備している。
ブースではこのほかにTeisenの扱う各種機材も展示、なかでも電気自動車隔離システムは車両をまるごと包み、注水口から内部を冠水させ、再発火防止と冷却をさせ、さらにそのまま吊り上げて移動できるというもの。消火と冷却だけでなく事故現場の通行止め時間を最低限に抑えられるとしている。ドイツなどでは導入実績があるが、国内ではこれからだという。
ヤマハ発動機は海外向けのATVを参考出品
ヤマハ発動機とヤマハモーターエンジニアリングのブースでは、全地形対応車の「Wolverine RMAX4 1000」を展示した。現時点では国内導入の予定はないというが、災害時や救難現場での活用の可能性を視野に、展示して関係者の反応を探る狙いもあるという。
ボディサイズは999ccの4ストローク水冷DOHCエンジンを搭載、ボディサイズは3255×2111×1677mm(全長×全高×全幅)で、重さは934kg。
ブースでは洪水・水難救助艇「RS-13」や、市販予定の次世代型電動アシストホースカー 「X-QUICKER(クロスクイッカー)」を展示した。今回はホースカーをはじめ資機材運搬のための電動台車はヤマハに限らず多く出展されており、ヤマハでは坂道を模した体験場所を作り、実際に操作できるようにしていた。
東京消防庁の展示も充実
主催となる東京消防庁も多くの展示スペースを設けている。本格的な国産消防ポンプ自動車の第1号と言われる「ニッサン180型消防ポンプ自動車」のレストアを行なっていたが、最後の仕上げとして会場でホーン取付式を実施して「完成」させて公開した。
これは、日産自動車の社内活動「日産名車再生クラブ」に所属する4名のエンジニアが担当。エンジンをはじめ各部を動くようにしたもので、実際にエンジンを始動させ、ホーンを鳴らし、飛び出る形式の方向指示器まで実演してみせた。
ニッサン180型は今後、東京消防庁の広報車両としてイベントなどで活躍する予定だという。
また、東京消防庁のECOなクルマとしてEV救急車や水素自動車、プラグインハイブリッド車で実際に使用しているクルマを展示した。
米軍基地から消防車が多数展示
毎回、東京国際消防防災展には在日米軍が参加している。米軍からも多数の消防車が駆け付けた。ふだんの日本の街中では見られないアメリカ製の消防車や、国内シャシーを使って架装しながらもアメリカ風に仕上げたものまで、多く展示されていた。