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【東京国際消防防災展 2018】モリタ、総重量3.5tの消防車「ミラクルLight」をはじめ消防自動車10台と消防システムを展示
2018年6月1日 13:41
- 2018年5月31日~6月3日 開催
- 入場料:無料(登録制)
5月31日から6月3日まで東京ビッグサイトで開催中の「東京国際消防防災展 2018」では、モリタホールディングスがひときわ大きなブースを構え、子会社のモリタが開発した消防車10台と消防システムを展示した。
それぞれの災害を想定した提案をブースで行なう
ブース内で行なわれた発表会ではモリタホールディングス 代表取締役会長兼CEOの中島正博氏が登壇「昨今の火災や自然災害は、これまでにないような災害が続発している。消防機器を製造しているメーカーとして、少しでもお役に立てるものを開発をしていこうじゃないかと、日々取り組んできた」と開発姿勢を紹介。
モリタ 代表取締役社長の尾形和美氏は消防団の重要性を強調、「消防力のなかにおいて消防団が大切な存在。かつては100万人いた消防団が85万人まで減り、消防団の方がいないと、本当に大きな災害のときに、災害復旧活動、災害対応活動ができない」と指摘し、展示した消防団向けの総重量3.5tの消防車「ミラクルLight」は3.5tにこだわった車両の提案とした。
尾形氏はさらに「消防車両メーカーだが、情報とかネットワークとかIoTには遅れをとっている。消防車両も情報発信システムができないかということで、消防車両メーカーでは取り組めなかったことも手がけて発表している」とし、無線通信機能付き携帯警報システム Signal Xの開発の狙いも説明した。
また、買収したフィンランドのBRONTO SKYLIFT OY AB社との技術の融合にも触れ、両社で協力した「21mブーム付多目的消防ポンプ車 MVF21」や、日本の技術を海外に出していこうとする「13mブーム付多目的消防ポンプ車 MVF13(海外仕様)」の展示の狙いも説明した。
モリタ 取締役営業本部長の城賀本守氏は、今回の展示を、火災に応じたゾーンごとの展示で、「どういった火災で提案できるのかを考えながら、製作して展示した」と各車両の提案内容を説明した。
消防団向けの総重量3.5tの消防車「ミラクルLight」
発表会のなかでも特に協調していたのが車両総重量3.5t未満としたCD-I型消防ポンプ車「ミラクルLite」となる。
これは、職業としての消防士ではなく、一般市民で構成された「消防団」向けの消防車。2017年3月12日から運転免許制度が変わり、以降に取得した「普通免許」では車両総重量が3.5トン未満のクルマしか運転ができない。
これまでの消防車は車両総重量が3.5トンを超えるものが多く、3.5t超の消防団の消防車は全国で1万9200台あるという。普通免許を取得したばかりの消防団員は運転できず、準中型免許を取得しなければ、消防車で現場に駆けつけたくてもできないことになる。
新たに開発された「ミラクルLite」は、動力取り出し装置等が装備された消防車用シャシーに架装していた消防車とは異なり、サイズの小さい小型トラックをベースにしたもの。小型トラックにポンプ用の動力取り出し装置を新たに装備したほか、装備のあちこちで軽量化を行なっている。従来であればスチール製のシャッターが側面に装備されていたがFRP製の扉としたほか、アルミ化や樹脂化を進め、あちこちで軽量素材を採用して車両重量を抑えている。
その結果、総重量が3.5t未満となり、新制度の普通免許所持者でも運転ができるようになった。ポンプはA-2級のポンプ性能を持ち、操法大会にも使用が可能となっている。
21mブーム付多目的消防ポンプ車 MVF21
買収したフィンランドのBRONTO SKYLIFT OY AB社と互いの技術を活用した開発した車両。21mのブームと最大400kg対応のバスケットが特徴。車いすに乗ったままの人を救助できる。
そのほかの装備としては、少量の水で消化できるCAFS(圧縮空気泡消火装置)も装備、900L水槽も搭載している。
先端屈折式はしご付消防ポンプ車(車いす対応)SUPER GYRO LADDER
従来のMLLシリーズのバスケット許容積載重量を4000Nから5400Nへパワーアップしたほか、バスケットにスロープを装備したことで、車椅いすに乗ったまま救助が可能になった。さらに新設計のジャイロターンテーブルを搭載し、最大11度までの傾斜地での活動が可能になった。
ブースでは斜めに設置して、ブームも地面におろして車いすが乗り降りできることを示し、救助範囲が広がることをアピールしていた。
破壊放水塔付自走式化学消防ポンプ自動車 Red Sky Lance
窓のない大型倉庫火災などで、放水銃の先端に破壊器具を備えて放水に必要な開口部をあけることができる車両。穴をあけて先端から水を放出させることで内部の消化活動をサポートするという。
海水利用型消防水利システム アクアコネクト
大規模火災の際には消防用水の不足が懸念される。海に近い場所に限定されるものの、無限に水が利用できる海の水を活用する車両。これまではホース延長車と送水車の2台一式で運用されていたが、A-1級ポンプ、過半ポンプ2基、90A×30mホース68本を集約できるとしている。
小型オフロード消防車 Red Ladybug
川崎重工の多用途四輪車「MULE PRO-FX(EPS)」がベース。オフロード性能が高く地震災害や土砂災害において、通常の消防車が走行困難な場所でも入っていけることが最大の特徴。オフロード車でありながら、大型特殊自動車としてナンバープレートを付けて公道走行が可能で最高時速は72km/h。本物のナンバープレートを付けた状態で展示された。
通常の消防車としても利用できるほか、後部ボディユニットも容易に入れ替えができ、消火装置、救助資機材、情報通信機材などを簡単に変更することができる。
専用キャブ付MT2 Intelligent Attacker
活動性を徹底的に追求したという消防車。通常、消防車の後部座席はベースとなるトラックのダブルキャブをベースとしているが、この車両はモリタが専用のキャブを開発した。
現場への移動中に装備の着用や資機材の準備が求められることもある消防車では、広い作業スペースが有効。1800×800mmの広い間口により消防服やヘルメットを装着した消防士の乗降性も高めた。また、可動式モニターや折りたたみ机も設置でき、戦略ステーションとしての活用も可能となっている。
高めたのはキャブの活用だけでなく、出典車両では後方架装に2500Lの水槽と最大吐出量5400L/minのCAFS装置(圧縮空気泡消火装置)を搭載、ルーフを作業台としても活用できる。
小型水槽付消防ポンプ自動車 CD-IDシリーズ
シャシー3t車級の小型車をベースに1300LのタンクとCAFS装置を搭載したポンプ車。新型のFRP製ハイルーフ「レッドアーマーα」を搭載可能で、後部座席だけでなく前部座席の上部の空間も拡大させ、ヘルメットを装着した状態でも活動もスムーズだという。
側面の収納扉を巻取り式のシャッターからスイング式扉に変更することで収納スペースの拡大を図り、スイング式扉の上部にはLED作業灯を備えたため、扉を開いた場合は照明の照射範囲が広がる。
窒素富化空気(NEA)システム搭載車 Miracle N7
水が不足する災害現場において、空気から窒素濃度を高めた期待(窒素富化空気)を作り、消火薬剤として連続的に放出できる消化設備を備えた消防車。水がないところだけでなく、水を使っては困る場所での消火作業にも適しているという。
すでに2014年に1号車を使用済み核燃料を再処理する日本原燃に納入済み。活用範囲が限られる車両ではあるが、水をかけては困るデータセンターや美術館といった場所の消火作業にも応用が可能だという。
13mブーム付多目的消防ポンプ車 MVF13(海外仕様)
海外によくある低層住宅の密集地域に強い消防車として、日本で販売中の13mブーム付き多目的ポンプ自動車MVF13Sをベースに更にコンパクトな海外仕様を作成した。
1台で消化、救助、資機材収納を果たし、1200Lの水槽とCAFS装置を装備する。。シャシーはMANのトラックがベースで、国内の技術を海外に出していこうという狙いの製品となる。
無線通信機能付き携帯警報システム Signal X
通信システムの提案も行われている。「無線通信機能付き携帯警報システム Signal X(シグナルクロス)」は消防隊員の異常や危険を無線で通知するシステム。
従来は隊員が装着する端末は親機との無線通信だったが、920MHzメッシュアドホックネットワークを採用、隊員が装着する端末が中継機能のノードの機能もあわせ持っており、建物の奥まで行った場合でも自動的に途中の隊員の端末を中継して通信を確保する。
隊員の置かれている温度や活動状況はベースPCで常に確認でき、横向きになったり動いていない隊員の時間経過も確認できる。一斉退避命令もメッシュアドホックネットワークにより伝達の確実性を高めている。