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スーパー耐久もてぎ戦に投入されるGRヤリスは、新開発AT搭載車だった その狙いをモリゾウ選手に聞く
2023年8月27日 06:00
スーパー耐久もてぎに投入されるGRヤリス DATコンセプトは、新開発の8速ATを装備で間違いなかった
スーパー耐久第5戦もてぎが9月2日~3日の2日間にわたってモビリティリゾートもてぎにおいて開催される。開催に先立ち公表されたエントリーリストで注目を集めていたのが、ルーキーレーシングがST-Qクラスにエントリーした32号車 ORC ROOKIE GR Yaris DAT concept(MORIZO/佐々木雅弘/石浦宏明/小倉康宏)。DATコンセプトと名前がつけられているからには、TOYOTA GAZOO ラリーチャレンジ(以下、ラリチャレ)で開発が続けられている新型8速スポーツAT搭載のGRヤリスに間違いないと思われるため、98%くらいの確信を持って記事にしてお届けしたが、やはり100%の確信でお伝えはしたいところ。
SUPER GT第5戦鈴鹿に4年ぶりにレクサスくま吉が出没するという話を聞き、ステージ近くでTOYOTA GAZOO Racing関係者を張ったものの、それらしい人を捕まえることはできず、かといってレクサスくま吉に聞いても「ブランド違いですね」と言われてしまいそう(くま吉の設定はしゃべらないのだそうだ)で、途方に暮れつつ鈴鹿のパドックを歩いていた。
すると、やや紆余曲折はあったものの、なぜかモリゾウ選手でもあるルーキーレーシングオーナーの豊田章男氏が自分の目の前に。正直、8月22日にトヨタ・モーター・フィリピン設立35周年記念式典に登壇したトヨタ自動車会長が、その翌日にフィリピンのTOYOTA GAZOO Racing Festivalでデモランを行なったモリゾウ選手が、鈴鹿に現われたことには驚いた。
少なくとも自分が把握しているだけでも、22日の昼にフィリピンのマルコス大統領をトヨタの工場に案内し、夕方からは政府関係者やトヨタ・モーター・フィリピン関係者を招いての記念式典でプレゼンテーション。そして、翌日は朝からTOYOTA GAZOO Racingメンバーとデモランと1人2役以上の仕事を行なっている。
週末は日本に戻ってゆっくり過ごされているのかと思っていたが、なぜか鈴鹿で記者の目の前にいるモリゾウ選手は、SUPER GTの予選を力を込めて見ていたのだった。
これはもう疑問を解決する千載一遇のチャンス。記者は「お疲れ様です」など言いながら、予選の隙間を縫ってGRヤリスに搭載するミッションの種類と、その狙いについて聞いてみることにした。
「多くの人にGRヤリスの魅力を」とモリゾウ選手
トランスミッションの種類についてモリゾウ選手は、「それはあの開発中のATです」と惜しげもなく教えてくれた。現在、パワフルでコンパクトな4WDスポーツカーとして多くのレースシーンで活躍するGRヤリスだが、モリゾウ選手としては「GRヤリスのパワフルな魅力をもっと多くの人に味わってほしい」「今の若い人はAT免許の人も多く、ATを用意できれば多くの若い人に乗ってもらえる」という。
現在のGRヤリスは、G16E-GTSというパワフルなエンジンを乗せている上位グレードにおいて、そのエンジンのパワフルさ故、ATモデルが設定されていない。モリゾウ選手はその部分を気にしており、クルマの楽しさをもっと多くの人に知ってほしいという。
このもっと多くの人にというのは、モリゾウ選手の心からの願いで、クルマの楽しさを多くの人に知ってほしいが故に、世界をまたにかけてデモランをしているようにも見える部分である。
もちろん本人もクルマ好き(当たり前ではあるが)ではあるものの、それだけでフィンランドにおいてWRCチームの代表を担当し、フィリピンで式典や大統領の対応、そしてデモランをこなしつつ、土曜日には鈴鹿に来てSUPER GTの予選を観戦することはなかなかできない。その観戦もさすがプロ級で、61号車 SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝)における山内選手のポールポジション記録に拍手しつつ、「明日だな」と画面にプレッシャーをかける(直後に、山内選手はインタビューで「明日」と語っていた)ほど。
クルマへの愛と、そんなクルマをもっと多くの人に知ってほしい、楽しんでほしいという気持ちが、端々に熱い思いとしてあふれていた。
ただ、モリゾウ選手によるとGRヤリス DATコンセプト投入の狙いはそれだけではないという。
モリゾウ選手は負け嫌い、プロ選手との差がATであれば……
モリゾウ選手は、GRヤリスや水素カローラでプロ選手と組んで耐久レースを戦っており、プロ選手に匹敵するタイムを出すほどのドライバーであることが知られている。ただ、本人の分析では「モリゾウ選手は、プロドライバーに比べて直線が遅いのです。どうも、マニュアルのシフト操作で0.2秒程度負けている。それがATになると……」と、新型AT車投入の狙いがプロ選手との差を縮めることにあると語る。
モリゾウ選手は、コーナーでのタイム差よりも、直線におけるシフト操作のラグが意外と大きな差になっていると自己分析している。
そのため、「もてぎでは、プロドライバーとのタイム差に注目してください」(モリゾウ選手)と語り、GRヤリス DATコンセプトの耐久性の検証のほか、ATを搭載することによる自身のタイムアップも確認していくという。
ルーキーレーシングのオーナーとしてこの週末を過ごした後は、豊田章男会長としての仕事があり、そして次の週末はもてぎでモリゾウ選手として5時間レースに挑んでいく。もてぎにモリゾウ選手が現われた際には、新開発となるAT仕様GRヤリスのポテンシャルとともに、モリゾウ選手とプロドライバーの走行タイム差に注目していただきたい。