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トヨタ、剛性2倍で走りに貢献する次世代バッテリEV用「ギガキャスト」出展 「クルマ屋のBEV」を実現する次世代鋳造技術

トヨタが開発中の新鋳造技術「ギガキャスト」。剛性2倍という走りのよさをジャパンモビリティショーでは打ち出すようだ

ついに一般公開されるギガキャスト

 トヨタ自動車は、「ジャパンモビリティショー2023」(一般公開日:10月28日~11月5日、場所:東京ビッグサイト)に、2026年発売を予定している次世代バッテリEVに採用予定の技術「ギガキャスト」を出展する。

 ギガキャストは、トヨタが開発を進めている鋳造技術で、これまで板材のプレス部品とスポット溶接などで構成していたボディ構造の一部を、鋳造(キャスト)部品で置き換えようというもの。現在、試作として公開されているのは、バッテリEV「bZ4X」のリアまわりの86部品を1つの部品に置き換えたもので、工程は86部品のプレス+溶接工程からわずか1工程へ、重さも鉄からアルミとなるため軽量化も期待されている。

クルマの前方向からギガキャスト部品を見る

 このアルミキャスティング部品は4000tの鋳造設備を用いてテスト製造が続けられており、どのようにアルミを流したらよいのか、どうすれば効率よく流れていくのかといった試作と解析が続けられ、日々改善されている。

 とくにこれまでは、工場の面積半分、工程激減など主に生産設備面の情報のみを先行させていたギガキャストだが、JMS2023への展示にあたっては剛性が2倍になることを打ち出した。つまり、ギガキャストになることで生産面でのメリットはもちろんあるが、剛性が2倍になって走りにも貢献するということになる。

 このギガキャストが使われるのはクルマの前半部と後半部になり、いずれもサスペンションが取り付けられている箇所になる。ここの剛性が上がれば、サスペンションが正確に動作するようになり、走りの性能が向上する。さらによいのは、サスペンションがゆがみなく動作することで、走りのすっきり感の向上も期待できる。とくにマクファーソンストラットが使われることの多いフロントまわりでは、取り付け点がしっかりすることで、ステアリングインフォメーションが劇的によくなることは、ストラットタワーバーなどを使ったことがある人は体感していることだろう。

 剛性が2倍になるということは、同様の効果が期待できることを示しており、会場に展示されたギガキャストをじっくり眺めて、力の入る方向を考えながらギガキャスト部品を楽しんでいただきたい。

眺めて楽しいギガキャスト

ホイールハウス部分を内側から。リブの開け方を見て分かるように、上下の型で構成されている。裏を見ると横からあいている部分もあったが、そこはスライドで抜いているとのこと

 見るポイントとしては、アルミ(湯)の流れる方向を想像しながら見るといろいろな気づきがある。今回の部品では、クルマの後方方向から湯を流し、前方方向で収束していくことになる。中途にあるブリッジでは湯がぶつかり、前方方向は湯がたまらないように、減圧引きで湯を引っ張っている。

湯と湯がぶつかる中央部。色が変わっていることから分かるように、ここでどのように湯をぶつけるかがポイント。小さな突起は、基準点作りのためとのこと
ホイールハウス脇の平滑部に唐突に開いている穴。この穴によって、湯の流れに抵抗を作り、湯が短絡方向だけでなく、各所に広がっていく。CFDなどでの解析を行ないながら、ギガキャストを作り出している

 また、湯は短い経路を通ろうとするので、あまりに短絡経路とならないように障害物を作り、湯がきちんと回るような工夫を見ることもできる。

 トヨタがこれまでエンジン作り、とくに特殊なモータースポーツエンジン作りで培ってきた鋳造技術が注ぎ込まれており、クルマ屋が作る(しかも、WRCやWECを制覇し続けている今のトヨタが作る)鋳造部品を堪能できる。

 ちなみに実際の生産では、湯は下から入り、上へ減圧で引いていく。上から流す(重力鋳造)という方法もあるが、現在ギガキャストは減圧鋳造で試作されていることを参考情報として記しておく。

プレス部品で構成されたストラット取り付け部に比べ、剛性が2倍あるというギガキャスト