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三菱自動車、2023年度第3四半期決算 営業利益4.2%増の1601億100万円も、当期純利益は21.4%減の1027億5500万円で増収減益

2024年2月1日 開催

三菱自動車工業株式会社 代表執行役副社長(CFO)松岡健太郎氏

 三菱自動車工業は2月1日、2023年度第3四半期(2023年4月1日~12月31日)の決算を発表した。

 2023年度第3四半期の売上高は前年同期(1兆8053億2000万円)から14.3%増となる2兆638億5500万円、営業利益は前年同期(1536億9900万円)から4.2%増の1601億100万円、営業利益率は7.8%、当期純利益は前年同期(1307億5400万円)から21.4%減の1027億5500万円。また、グローバル販売台数は前年同期(63万台)から4万5000台増減の58万5000台となった。

2023年度第3四半期の業績サマリー

 オンライン開催された決算説明会では、2023年度第3四半期の決算内容について三菱自動車工業 代表執行役副社長(CFO)松岡健太郎氏が説明。

 第3四半期については半導体や船腹不足といった理由による車両の供給不足が解消に向かっているものの、一部地域で総需要が期待より下まわる結果で推移したとのこと。しかし、販売の質向上、手取り改善活動を推進して堅調な業績を達成することができている。前年同期から21.4%減の1027億5500万円となった当期純利益は、第2四半期に中国事業構造改革費用を計上したことの影響を受けたものとなっている。

2023年度第3四半期の販売台数業績

 販売台数では上半期から引き続いて日本、北米以外の市場で販売減となっている。これは一部地域での輸送能力不足による納車遅れ、総需要の低下といった影響を受けたものとしている。

 地域別では、アセアン市場ではインフレ、金利高、販売金融審査の厳格化などを受けて総需要が想定を下まわるものとなり、価格競争も激化しているとのこと。フィリピンでは海外労働者からの送金増加と国内における失業率の低下、販売金融の拡大といった背景を受けて販売を伸ばすことができたが、これ以外の各国で販売減となっている。

アセアン市場における販売状況
日本市場における販売状況

 日本市場では、全体需要はコロナ禍以前の水準までは届いていないが回復基調を続けており、半導体不足による車両の供給制約も解消に向けた進展が見られている。三菱自動車でも受注残の解消に努めて販売を伸長。好調に販売をスタートさせた「デリカミニ」が本格的な市場投入後も強力な販売モメンタムを維持していることに加え、“三菱自動車らしさ”の象徴車種と位置付けている「トライトン」も2月から商品ラインアップに加わり、価値販売へのシフトに向けた体質改善、基盤形成を効果的に推進していくという。

 北米市場も全体需要が好調に推移しており、三菱自動車でも在庫レベルの改善と合わせ、コアモデルである「アウトランダー」シリーズの販売モメンタムを維持して前年同期を上まわる販売を実現。なかでも2022年11月から本格投入した「アウトランダーPHEV」は前年実績を大幅に上まわったとしている。

 北米では販売状況が正常化したことで競争が激化し、各社でインセンティブの積み増しなどが顕在化してきており、他社の動向を注視しつつ、販売の質、顧客満足度の向上を重視。インセンティブに頼らない販売へのシフトを確立して持続的な成果を挙げていくと語った。

北米市場における販売状況
第3四半期累計の営業利益変動要因
第3四半期3か月の営業利益変動要因
2023年度の業績見通しは前回公表値から据え置き

2023年度第3四半期のビジネスハイライト

2024年から「アセアン戦略車」の展開を開始

 2023年度第3四半期のビジネスハイライトでは、まず中期経営計画「Challenge 2025」で展開を予定する新型車の進捗について説明。計画では電動モデル7台を含む新型車12車種の展開を目標に掲げており、2023年から2024年にかけては「トライトン」「エクスフォース」「エクスパンダーHEV」をアセアン地域、グローバルに展開する計画になっている。

日本カー・オブ・ザ・イヤー2023-2024で「デリカミニ」がデザイン・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞

 日本での話題としては、2023年12月に軽自動車のBEV(バッテリ電気自動車)であるデリカミニが日本カー・オブ・ザ・イヤー2023-2024で「デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞したことを紹介。これは三菱自動車にとって初のデザイン・カー・オブ・ザ・イヤー受賞になるという。これまでアグレッシブなフロントマスクをブランドランゲージとしてきたが、愛らしい表情を採用したことが評価された結果としている。販売でもかわいらしいキャラクターが市場で愛され、「eKクロス」「eKクロス スペース」の3倍強を受注していると説明した。

 このほか、2023年12月に軽商用BEV「ミニキャブEV」(現地名:L100 EV)を、インドネシアの生産合弁会社ミツビシ・モーターズ・クラマ・ユダ・インドネシア(MMKI)で生産開始したことと説明。三菱自動車初のBEV海外生産開始により、アセアンにおけるBEVニーズの高まりに応え、インドネシアの環境に対する取り組みにも貢献していきたいとの考えを示した。

インドネシアで「ミニキャブEV」を生産開始

 説明の最後に松岡氏は、「2023年は中期経営計画『Challenge 2025』の初年度で、現時点のところ業績は順調に推移しております。新商品の連続投入により、成長フェーズへの準備が整いつつあります。今後はこれらの販売を本格化させ、他地域への展開を拡大していきます。新型車の成功は当社の持続的成長に向けた重要な一歩と位置付けています。一方で各国の景気後退懸念や地政学的リスクなど、外部環境は不透明感を増しています。厳しい環境化にかかわらず、これらの新型車を生かして販売を伸ばし、収益を確保することが当社にとって大きなチャレンジになっています。過去の経験から当社は、さまざまな課題や難局を全社一丸となって克服してきた実績があり、厳しい環境だからこその底力を発揮できると考えております。1つひとつの課題を着実に解決し、Challenge 2025の2年目に向けて成果を積み上げてまいります」と語って締め括りとした。

質疑応答

三菱自動車工業株式会社 代表執行役副社長(営業担当)中村達夫氏

 質疑応答では、販売が前年割れとなったアセアン市場での取り組みや中国企業進出の影響などについて、三菱自動車工業 代表執行役副社長(営業担当)中村達夫氏が回答。

 中村氏は「アセアンでの業績はご指摘のとおりで、タイ、インドネシア、ベトナムといったコアマーケットで全需が落ち込んでいる状況で、とくにタイとインドネシアは月を追うごとにわるくなっている状況で苦労しております。そのなかで、タイと中国がFTAを結んだことで、中国から安いBEVを無関税で輸入できるようになっています。さらに、2023年までは『EV3.0』という政策により、10万バーツ、約60万円の購入補助が行なわれるなど、かなり市場が荒れた状態になっています」。

「一方でわれわれの対応としては、市場環境は確かに苦しいもので、8月に発表した新型エクスフォースを11月末から本格的に販売できるようになったものの、市場が対前年比で18%減ということで厳しくなっています。トライトンを導入したタイでも、2月~3月には最上級モデルの『アスリート』を導入できることになってさあこれからというところなのですが、販売金融の厳格化で市場全体が4割減という状況です」。

「いいニュースとしては、フィリピンでは全需も好調で、1月に行なったトライトンの発表会にパリダカでも活躍したラリードライバーの増岡を現地に派遣して、かなり好評を受けて受注が積み上がっており、3月までに供給できる台数の倍近く受注をいただいております」。

「短期的にはそんなところですが、とくに中国メーカーの進出や電動化で考えているわれわれのスタンスでは大きく3つがあります。1つは中国製のBEVがアセアンに入ってきますが、そこにはピックアップトラックやPPVと呼ばれる「パジェロ スポーツ」のようなセグメントには中国メーカーは入ってきていないので、これらが現地ディーラーなどを含めた収益で柱になっており、これをしっかりと守っていくこと。2つめは、タイやインドネシアで50年以上の歴史を持っており、全国に販売網、サービスショップ、部品供給網を展開しておりますので、BEVでも修理などの不安を覚えることなく『安心の三菱』でお客さまとのつながりを維持していくことです」。

「3つめは、BEVではなくHEV(ハイブリッドカー)で三菱自動車初となるモデルをまさに本日、タイでこれから発表会も行なうのですが、HEVについてもしっかりと進めていきたいと思っております。タイではBEVが全体需要の11%まで成長していますが、現在はアーリーアダプタにも一巡して、少しずつ伸び率も下がっています。販売金融会社でも、これまではBEVに融資をどんどん出していましたが、次第に不払いも増えてきて慎重な姿勢になってきています。一方でHEVは他社さんも多数用意していますし、BEVと同程度の全需となっており、HEVにしっかり車両を投入していきたい。とくにわれわれのHEVは『EVモード』『ウェットモード』などアセアン地域を勘案した7つほどのドライブモードを用意しています。地域の皆さんにも使いやすい、EV感覚も味わえるクルマになっていて、さらに『ランエボ』譲りのアクティブヨーコントロールも備えています。まずはHEVから、次はPHEV、BEVと、三菱自動車らしく電動化に取り組んでいきたいと思っております」と回答している。

三菱自動車工業株式会社 代表執行役副社長(開発・商品戦略・TCS・デザイン担当)長岡宏氏

 また、国内市場メーカーで認証関連で不正が発覚していることについては、対策などを講じているかといった質問については三菱自動車工業 代表執行役副社長(開発・商品戦略・TCS・デザイン担当)長岡宏氏が回答。

 長岡氏は「弊社ではご存じのとおり、2016年に燃費不正という問題が発覚したことがあり、そこから2度とこのような問題が起きないよう取り組んでおります。昨今起きている他社さんの例を見ても、根本的なところはわれわれが2016年にやってしまったことと同じような根っこがあるのではないかと思っておりまして、具体的には、リソースが十分ではないのにそれを上まわるような仕事をすることになって、それによる遅れ、できないと言うことが許されない風土によって不正が起きてしまうと考えます」。

「そこでわれわれが行なっているのは、そのように遅れが出そうなときには『遅らせることをマネージメントする』ということを、いいことではありませんが許容することで、日程などを考えながらやってきています。一方で、そういった試験を担当するスタッフ以外の人が中身をチェックするということも、2016年以降やってきています」。

「先般の日野自動車さんのときに、国土交通省さんから全自動車メーカーに対して『認証についてもう1度確認しなさい』とお話しをいただいて、われわれもすべて再点検をしていますが、問題ありませんでしたと国交相さんに説明してご納得いただいております。また、それからスズキさんの例も含めてさらなる確認をするようお話しをいただいて、これについては内容を確認しているところです。そういった経緯もありますので、定期的にしっかりと確認しながら先に進めていきたいと思っております」と述べた。