ニュース

三菱自動車の海外工場として最大の「ミツビシ・モーターズ・タイランド」を見学

三菱自動車最大の海外工場「ミツビシ・モーターズ・タイランド(MMTh)」を見学

タイ工場の特徴とは?

 三菱自動車工業にとってアジアは重要な市場。中でもタイは三菱自動車最大の海外工場を持っている。ここで生産されるのはトライトン、パジェロスポーツ、アウトランダーPHEV、ミラージュ、アトラージュ(ミラージュのセダン)、エクスパンダーHEVの6機種で、タイだけではなく世界に輸出される。

 ミツビシ・モーターズ・タイランド(MMTh)の歴史は古く、前身である販売会社の設立は1961年。当初現地法人で登記されていたが、2003年に正式に現在のMMThに名称変更し、2021年には60年の節目を迎えた。MMThからの輸出も早く、1988年にカナダ向けのランサーから始まり、今では世界120か国に広がっている。

 工場はバンコクから南西に約2時間のところにあるレムチャバンの工業団地にあり、港に隣接した絶好地だ。4つの工場からなり、第1工場はパジェロスポ―ツとアウトランダーPHEV、第2工場はトライトン。第3工場はミラージュ、アトラージュ、エクスパンダーHEVを生産する。この横に塗装工場とバッテリを含むエンジン工場があり、生産能力はMAXで年間42万台。単一工場としては三菱自動車の中で最大だ。今回見学させてもらったのは2012年に竣工した乗用車ラインの第3工場で、ミラージュ、アトラージュ、エクパンダーHEVを生産している。

2月にクロスオーバーMPV「エクスパンダー」「エクスパンダー クロス」にハイブリッドEV(HEV)モデルを新設定し、タイでの販売を開始

 特徴は暑い国らしく天井が高く、風抜けが良いこと。暑い空気を滞留させないため巨大な扇風機が要所につけられており、省エネ効果もある工場になる。環境面ではソーラーパネルの設置も進んでおり第3工場で5MW、さらに第3工場と同時に2021年に竣工した塗装工場でも2MW発電のソーラーパネルが設けられ、CO2削減量は前者で4891t、後者で1750tと試算されている。工場内は広々としており、作業者も緊張感の中にもゆとりがあるように見えた。

工場内の天井は高く、風抜けが良い

 また搬入口は後述する理由で両面に扉があり、必要に応じて部品を降ろせるようになっている。サプライヤーはほとんどが半径100km圏内にある。

 タイでクルマを輸出できる港はレムチャバン港だけで、それに隣接したMMThの工場は自走して港に行ける唯一の工場だ。生産は東日本大震災の年には約40万台を生産し、タイ国内、輸出とも増産したが、ひと段落した2022年は27万台となっている。

 傾向としてはタイ国内販売は横バイ。2023年は中国勢の勢いが大きくタイ市場では三菱自動車は5位となったが、トライトンのモデルチェンジ、エクスパンダーHEVの投入、高付加価値商品であるパジェロスポーツの新エンジン搭載で2024年は追い風が期待される。またタイは輸出基地としての役割がますます大きくなっている。

 タイ国内の不安材料としてはローンの審査が厳しくなり、特に働くクルマとして人気が高いピックアップトラックに陰りが生じていること。欲しくても審査が通らないという状況だ。余談だが、近くにはBMWやスズキがあり、新参入の中国メーカーもBYD、長城汽車、MGもあって、これまで日本車の牙城だったタイに中国車が浸透し始めているのがうかがえる。

圧巻は港にあるモータープール

 第3工場のラインにはミラージュ、アトラージュが流れ、同じラインにエクスパンダーHEVも時おり交じって組み立てられている。HEV用の小型バッテリパックは日本で生産されるが、輸送は安全性の面から温度管理ができる船で行ない、エンジン工場内で電池の形になる。

 バッテリ搭載の特徴としては、アウトランダーPHEVは床下に搭載するため防塵、防水対策も厳重に行なっているが、エクスパンダーHEV用は小型で室内に搭載するため作業工程は少ない。ただ高電圧作業なので感電防止用のゴムを敷き詰め、またボルトの締め付け角度、トルク、順番も厳重にチェックしてそれぞれ履歴が残るようになっている。日本のマザー工場と同じ仕様だ。

 バッテリに限らず、各部署に待機する作業員はタブレット端末で仕様書を見てタッチすることで作業が終了したことを確認している。簡単にできないように指紋認証システムを取り入れているのも新しい取り組みで、二重にミス防ぐ意味がある。

HEV用の小型バッテリパックは日本で生産され、安全性の面から温度管理ができる船で輸送。そしてエンジン工場内で電池の形になる
エクスパンダーHEV用のバッテリは小型で室内に搭載される

 ここまで見て感じたのはライン作業では床が動く方式ではなく、吊り下げ式になっていること。この方式は生産工程の自由度が大きくラインが比較的すぐに変更できる利点があり、最新の工場はこの方式が多い。さらに受注に応じて生産していくのでロッド生産はしていない。

 特徴的なのは組み立てが工場の中央から行なわれることにある。軽い部品を工場のセンターに運び、最初に取り付けていく。搬入口が両側に設けられているのは重量物を壁側で取り付けることで搬入時の移動を減らせるメリットがある。

 塗装工場から出てきた車体は工場中央からスタートし、ぐるりと壁側をまわってエンジンやトランスミッションなどの重量物が取り付けられていく。第3工場の生産台数は現在2直で1000台/月。まだ余力があり、需要に応じて調整している。

組み立ては工場の中央から行なわれる

 圧巻は港にあるモータープール。三菱自動車では行政区の許可を得て工場から港までの公道をナンバーなしで走れる。わずかな距離だが自走で行けるのと積載車に乗せるのではコストに大きな差が出る。港周辺には各社の大規模モータープールが多数存在し、港から輸出されるのを待っている。4階建ての建物から見た周囲の景色は壮観だった。何しろ一区画で2万5000台である。整然と隙間なく車両が置かれるモータープールが視界の届く限りに広がっているのだ。キラキラ光る絨毯は工芸品のようにも見えた。

 3万点の部品で構成されると言われる自動車の生産工場は、一部を切り取ってみても自動車の姿は見えてこない。今回のMMThの見学はまるで俯瞰して自動車ができる姿を見るようだった。

港にある圧巻のモータープール。整然と隙間なく車両が置かれる