ブリヂストン、次世代放射光施設「ナノテラス」をタイヤ材料の研究開発へ活用開始

3GeV高輝度放射光施設「ナノテラス」

　ブリヂストンは5月16日、国立大学法人東北大学青葉山新キャンパス内に設けられた3GeV高輝度放射光施設「NanoTerasu（ナノテラス）」を活用したタイヤ材料の研究開発の開始を発表した。

　ナノテラスでは、高分子材料の観察に有効な軟X線を活用し、タイヤ製品に広く使用されている高分子材料を分子スケールで観察し、高分子材料の特性を分子スケールで理解することで、商品設計基盤技術「ENLITEN（エンライトン）」のさらなる進化を実現する革新的な材料や、資源循環率を極限まで高めたゴムの開発を進めるという。

ナノテラスを用いた研究開発の様子

　ゴムは硫黄を用いて分子と分子の間を結びつける“架橋”と呼ばれる化学反応によって、その形状を保ち、伸び縮みする性質（弾性）を発揮する物質で、架橋はゴムのさまざまな性質を発揮するためには欠かせない要素。一方で、架橋は複雑な化学構造であるため適切に切断することが難しく、それがゴムをリサイクルして原材料に戻す際に大きな妨げになっているという。

　タイヤ性能とサステナビリティを高いレベルで両立するには、架橋の化学構造を正確に把握する必要があり、今回ブリヂストンは、東北大学国際放射光イノベーション・スマート研究センター 西堀麻衣子教授とともにナノテラスを活用し、架橋の化学構造を分子レベルで観察することで、そのメカニズムの解明に取り組むとしている。これにより、高分子複合体設計による新材料や、効率的なゴムのリサイクル技術開発が期待されるという。

　ブリヂストンは、「ゴムを極める」「接地を極める」「モノづくりを極める」の3つの「極める」を軸に、技術イノベーションを加速させていて、「ゴムを極める」においては、同社の強みであるゴムを“見る”“解く”“操る”の技術を進化させることで、より強くしなやかな革新材料だけでなく、地球環境にも配慮したサステナブル素材の開発にもつなげ、商品設計基盤技術「エンライトン」を支えるとしている。